【冒頭】

 

 焼け痕から立ち上がった。ぬらり。

 黒焦げの木綿に張り付いた皮膚がずるりと滑って剥けた。
 鞘から白刃を抜くように。剥き出しの肉。骨。そして、

 焔。

 握りしめる。おれはまだ燃えていた。身体をひとつなぎにしていた全ての生々しい部分が熱に舐められぼそぼそと炭になっていく間も、おれは燃えていた。鼻から入った火で喉が焼けていく間も、耳が溶けて叫び声が詰まっていく間も、おれは燃えていた。お前が刀を戻し、一度櫓を見上げて、このおれを見上げて、やがて蟻群のように押し込んでくる兵の波に逆らって歩き去っていったときも、おれは燃えていた。

 そして、薪火のように終わった今、まだ燃えていた。
 断末魔ほどの痛みもない。ただ熱いだけ。砕けたのちに焼け付いた右の指骨は無銘の柄とひとつになった。もはや手放すことはない。

 お前を殺す。
 殺し、殺して、死に、死んで、悔いる間もなく。
 必ず。

 おれはよろめいた。そして歩き出した。


【続く】

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しがないへのへのもへじ

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