移動距離と関係性

*ぼくは車で移動するのがけっこう好きなんです。もちろん体力とか予定とかにはよるけれど、電車の方が少々近いとか早いくらいなら、車で向かうことを選ぶことのが多いです。ひとりだとそこまでないんだけど、誰かと二人とか、複数人ならほとんど車を選んじゃいます。お酒を飲めないとか、体力がいるとか制限は出てきちゃうけれど、それでも車移動が好きなのは、車の中の時間が好きだからなんだろうな。

助手席に誰かを乗せながら、目的地までの道のりをだらだらと話したり話さなかったりして過ごすのが好きなのだ。この時間が好きな理由は、ほんとうにたくさんあるのだけど、中でもいちばん納得がいっているのは「目を合わせなくていい」ところだと思うんですよね。

運転手は前を見ていないといけないから、助手席をたまに見ることはあっても、基本的には前を向いているわけです。助手席にいる人も、わざわざ運転席をじーっと見ながら話すなんてことはよっぽどないことでしょう。つまり、お互いが前を向きながら、おなじ方向を見ながら話したり話さなかったり、横で寝ている空気を感じながら運転したり、黙ったまま車が進んでいくことが、これ以上ないくらい心地いい。ドライブが好きというよりも、ぼくはこの空気感があるからドライブが好きだ。

もちろん、密閉空間だからこそ「話さなくちゃいけない」みたいな空気を感じる人もいるのかもしれないけどね。でもそうしない、させないよう努めるのは運転手の役目でもある。話題はちらほら変わってもいいし、道中の景色に目を向けたっていい。流している音楽を聴いたっていい。黙って、黙ったまま手を繋いでいたっていい。「そういう時間」が流れている車の中って、けっこうおもしろいんじゃないかな。移動距離に比例して、そのふたりの関係性も、進んでいくもんなんじゃないかなぁ。


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