「高所恐怖症」の間奏で
高い場所が苦手な身内がいます。万里の長城で足がすくんで動けなくなり、同行者たちで両脇を抱えるようにして坂を上りました。
そのとき、不届きに思い出した映画のシーン。
映画の邦題は「新サイコ」。原題「High anxiety」「高所不安」くらいなのかもしれません。いま検索すると症状名の「高所恐怖症」は「Acrophobia =アクロフォビア」らしい。
メル・ブルックスの作品はあまりのくだらなさに好悪がわかれる、といわれます。
わたしは、大いに笑い転げました。言語や文化を超えて日本の中学生を笑わせました。テレビ放映から45年たち、ネット検索しながら、まだ笑わせてくれます。「くだらない」ものをいくら掘り下げても「くだらない」のは変わらないのですが。
多くの人びとが気軽に笑える作品でありながら、シンシナティ・レッズが強かった時代、新婚さんジョークが周知だった時代のアメリカの人びとには「くだらない」けど我われの笑いだと思わせます。映画に詳しくなればなるほど、メル・ブルックスのパロディ精神の俊敏さに驚かされ、もう一つ別のユーモアを発見できます。
もしこれを、上から下まで区別なく笑わせる作品だ、と仮定するなら、大変な価値の高い作品ということになります。でも、おそらくメル・ブルックスのすごいところは、こんな風に綴る輩を笑って鞭打ってきそうところでしょう。
主演のメル・ブルックスが謎の美女マデリン・カーンを口説くシーン。
[Verse 1]
High anxiety
Whenever you're near
High anxiety
It's you that I fear
My heart's afraid to fly
It's crashed before
But then you take my hand
My heart starts to soar once more
[Verse 2]
High anxiety
It's always the same
Ooh-xiety
It's you that I blame
It's very clear to me
I've got to give in
High anxiety
You win
間奏中にお客様にリップサービス。適当に豪傑訳すると。
「どこからきたの?」「シンシナティだよ」「レッズ最強だ、かわいい太っ腹ちゃん」
「恋人?米粒がついてる。新婚さん?」「そう今朝結婚したんだ」「今朝だって、まわりは離婚してる時期に」
[Verse 3]
But then you take my hand
My heart starts to soar once more
Key change!
[Verse 4]
High anxiety
It's always the same
Hey-xiety
It's you that I blame
It's very clear to me
I've got to give in
マイクのワイヤを手繰り寄せて「I've got to give in」の歌詞にあわせて、床を鞭打ちます。画面ではマデリン・カーン鞭打たれて恍惚とした表情に。
High anxiety
And remember folks, be good to your parents
They've been good to you
You win