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ストロベリームーン

放課後
ランドセルを放って
甘い苺を摘みにいこう

広大な満月の下
結えた髪をほどけば

風にまかせて
どこまでも自由だ

豊かの海から
静かの海へ
流れ流されて
晴れの海へ

目の前にはアペニン山脈

ふもとにはウチの苺畑

プリーツスカートには
モンシロチョウ

お揃い色の帽子に
ひとつふたつ赤色を摘んでいく

こころに刺さった
小さな疼きは
この苺の味によく似ているの

それを知ったのはいつだった?

夏至には
ほど遠い半夏

擦りむいた膝小僧なんて気にしない

人生は歩き通しの遠足だ

無重力にほどけた
スニーカーのひもを結びなおして
あの日のわたしごと立ち上がる

みじか夜
苺摘みの頃
たどりつきたかったユートピアはどこ?

そんなことを忘れるくらいには

わたしは
あまりにも知り過ぎてしまった

差し出した手のひらに
いつの間にか
苺がひとつ


「桃源郷があるのなら苺源郷があってもいいと思わない?」


そう言って

線路の向こう側で
あの日のわたしが笑っていた

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