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自分を知ること。

前回、人とのつながりを作るには、相手にまつわる情報を集めてつなげて、その意味を考えることが大切、ということを書きました。

相手を知ることも大切ですが、自分を知ることはもっと大切だと思います。なので、今回は「自分を知ること」について書きます。

1.「感情がない」と言われたぼく

営業マンとして、それなりに経験を積み、しばらくすると、5、6人のメンバーからなる営業チームのリーダーをやることになりました。

目標達成に燃える日々、2,3ヵ月経ったころでした。あるメンバーが、ぼくに「お話ししたいことがあるので、お時間ください」。あーーー、辞めちゃうのかなあ、確かに目標行きそうにないしなあ、とそれなりに嫌な予感は抱え、そのメンバーとさしで飲みに行きました。

新橋の居酒屋です。

しばらくの当たり障りのない会話ののち、メンバーの口から、だんだんとぼくに対する本音が出てきました。

「平野さんには、感情がない。人の心を持っているんですか?」

その言葉から始まり、社外に対するのと社内での態度の違いなんかも指摘されました。例えば、商談が終わり、エレベーターでお客さんに見送られ、そのエレベーターの扉が閉まるまでにお客さんに向ける笑顔と閉まったあとにメンバーに向ける表情の違い、これがもう、天と地ほども違ったようで。

ちなみに、ぼくはこのメンバーとの関係は悪くないと思ってました。だから、正直、とても驚きました。

2.自分の「くせ」とその影響

この「平野さんには感情がないんですか」の指摘は、結構効き目があり、自分の思考や行動のくせが、誰にどんな影響を与えるのかを考える、いいきっかけになりました。

当時のぼくは、チームのみんながなるべく無駄な努力をしなくていいように、最短距離、最小のエネルギーで仕事ができようにするのが正義、と考えていました。だから、チームのみんなと雑談もしないし、ランチなんかもちろん一緒に行かない。何か仕事を頼んだり、頼まれたりのときも、やってもらうのもやってあげるのも当然、仕事なんだからさ、と思っていました。気遣うという言葉も浮かばないし、必要だと思っていませんでした。

別に無理に感情を押し殺しているわけでなく、そのままのぼくだったんですが、それが周囲には「感情がない」ように映り、メンバーが疎外感を持ったりと、チームの空気や働く環境にずいぶん影響を与えていたんですね。

そうか、ぼくの無意識の振舞いがこんなふうに受け取られるんだ、とびっくりしました。

3.「くせ」を飼い慣らす

自分のことで他にも気付いたことがあります。

ぼくは人とコミュニケーションしているときに、相手の感情に敏感です。そして、ある人のある感情が、ある人にどういう作用を与え、どう行動するかまで考えます。その行動が果たして自分に関係するかどうかを見極め、ぼくに関係ないとなれば、ぼくはもうまったくその感情に反応しません。これまた「ぼくのくせ」です。

そうして、だんだんと自分のくせを理解し始めたぼくは、毎週1人、誰かしらメンバーを誘って飲みにいくことにしました。ベタな解決方法ですが、数字に追われた昼間とは違うマインドでメンバーとしっかりコミュニケーションしたかったのです。

ぼくがどんな考え方でふだんの行動をとっているか。どんな気持ちで仕事に向き合っているか。チームについてどう考えているか。メンバーからの質問にも、ひとつひとつ丁寧に答えました。

ぼくは、自分の仕事に対する姿勢やポリシーを変えるつもりはありませんでした。その代わり、こうした「ぼくのくせ」を自分でちゃんと理解して、飼いならすことにしたのです。

4.「くせ」をもっと役立てる

ぼくは、もともと、ちゃんと会議では結論を出したいし、相手の言いそうなことやそれに対しての答えといった応酬も読めるので、さくさくと議事を進め、会議を終わらせてました。その昔、メンバーからは、ディスカッションにならない、最初から答えありきで話されている気がする、平野さんの思うとおりに誘導されている気がする、と言われたりもしました。

でも、誰彼となく、ぐだぐだと話し続け、なんの結論も出ないような無駄な会議は誰にとっても害悪です。だから、ぼくは、ぼくの「会議をさくさくと進めるくせ」をもっと磨いて武器にしました。

相手の気持ちをもっと読み取れるようにしよう、議論の行方をロジカルに見極められるようにしようと、自分の感性と思考をブラッシュアップし、ぼくは会議を今もさくさくと進めています。

自分のことを理解して、人から指摘されたことをあまねく欠点と捉え、直そうとしなくていいと思います。人から指摘されたことは、あくまで自分の特異性が与える影響です。くせは特異性です。むしろ強みにもなります。もし、軌道修正するとすれば「与える影響」の部分です。自分のくせをうまく手なずけて、よりよい影響、効果を与えられるようにすべきです。

次回は、ぼくの組織運営哲学、みたいなものを書きたいと思います。


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