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吃音者のスライド発表の心得

お久しぶりです。三浦です。

今日は吃音者のスライド発表というテーマで書きたいと思います。面接や自己紹介のように人生を通じて回数が頻繁にある分、毎回ストレスを感じる方も多いと思います。かく言う自分も研究発表や講義資料作成など何かとスライド発表をする機会は多いのですが、幸いにもその後に率直なフィードバックをいただくことが増えてきたので「吃音者のスライド発表」と言う観点から非吃音者には見落としがちなポイントに絞って紹介します。

スライド発表の鉄則

吃音者・非吃音者問わず重要ですが、特に話すのが苦手な人に意識してもらいたいのは「発表をする目的を外さないこと」です。とても必死に頑張って練習するのはもちろん尊いことですが、あくまである目的を達成するためにスライド発表はあります。進捗の報告・技術の紹介・上司へのピッチ・商品の宣伝などなど、まずは自分がなぜスライド発表をするのかを常に念頭に置き続けることが不可欠です。特に自分はこの点を意識しないと「こんなに頑張ったのにうまく話せなかったからダメだった」とか「とても流暢に話せたから良かった」と言った話せる・話せないの軸でスライド発表を評価しがちになってしまい、何回も発表を重ねているのにあまり良い発表になっていかないということがよく起こります。スライド発表は発話の流暢さだけではなく、話すスピード・抑揚・コンテンツの分かりやすさ・分量・身振りなど、発話以外にも評価できる項目はたくさんあります。

逆に言えばめちゃめちゃ吃っても目標の達成さえできれば、発話に多少のハンディキャップがあっても他のスキルで十分に補えていると考えて良いと思います。自分もなかなかこの価値観を切り替えるのが難しく、未だに発表中に吃った時に少し早口にして時間内に収めたり、取り繕って上手ぶったプレゼンをしてしまうことがあるのですが、聞いている人からしたら流暢ではない上に話している内容も分かりにくくなって余計良くないことが増えます。

周りの人みたいに格好よくプレゼン発表はしたいのに吃音者のスライド発表ってすごく緊張するし、練習の1.5~2倍くらいは本番で吃ると考えると時間配分も難しいです。なので、技術的な話として吃音者がスライド発表をする時のTipsを紹介します。授業や研究発表と言った、発表の後に簡単な質疑応答があるタイプの発表を想定しています。

1. 吃っても飛ばさない

吃音者あるあるとして、何も発話できなくなってしまった時に「…と言った感じです」や「…のようになっています」といった、「あとはスライド読んでね」と言わんばかりにスライドの後半の内容の説明をすっ飛ばすことがありますが、たとえ発表が時間内に収まったとしても印象はあまり良くないと言われます。吃ってる最中はかなり苦しいのですぐにでも次に行ってしまいたい気持ちになるのですが、聞いている方は発表者がどう話すかより何を話すのかに注意を向けているので、落ち着いてスライドをちゃんと隅まで説明しましょう。時間がどうしても足りない場合は、スライドの最初から「お時間の都合上少し飛ばします」と言ってスライドごと一気に飛ばしてしまった方が心象は良いです。少しでも画面に映れば後の質問の時間で聞いてくれたりもするので、まずは発話内容を丁寧にすることを心がけましょう。

2. スライドには図を貼って説明する

聞き手の方が「発表が急に止まって困惑したが、その時間にスライドに見るべきコンテンツがあったのでそこまで気にならなかった」と言ってくださるケースがあります。吃音者はどうしても時間あたりの発言量は減ってしまうので、スライドの情報量を増やすことで聞き手に飽きさせない工夫があるとより興味を持ってもらいやすいと思います。

その際に文字情報を載せるか、図などの視覚的情報を入れるかという点がありますが、私は図の方が相性が良いと思っています。吃音の改善上あまり良くはありませんが、私はスライド発表の時に吃ったら言い換えを良く用います。「本日のまとめになりますが〜」を「最後に今日の総括ですが〜」にしてしまうような言い換えは良く行います。その際に、スライドに文字情報が入っていると、スライドに書かれている文字と自分が発話している文字が異なるのに同じ内容を指し示すことが増えて、聞き手が発表についていくのが難しくなる可能性があります。「まとめ」って書いてあるのに「総括」って言ったぞ?のような感じですね。なので、どうせ吃って言い換えるならば(もちろん話す内容は事前に考えますが)最初から図と補助的な文章を入れておいて、本番吃りそうなポイントは文字では示さずに図で示すようにすると、逃げの1手が不自然でなくなって分かりやすくなると思います。

3. 事前準備まで含めて吃音者の発表

私は吃音者の人は他の人の2~3倍はスライド発表の準備をする必要があると思っています。同時にそれは仕方ないことだとも思っています。発話という分かりやすい所にdisadvantageを抱えているわけですから、何も防御せずに発表に突っ込んだら非吃音者のように上手く発表できる可能性は低くなってしまうと思います。

事前に話す内容を書き出して自分の苦手な音節を外したり、発表時間のチェックポイントを多めにセットして想定以上に時間が超過しないかを確認したり、本番頭が白くなっても本筋は説明できるようにスライド内容を頭に叩き込んだり、非吃音者以上に神経質になってスライド発表に取り組まなければいけないのは事実です。たとえ非吃音者であってもさらに良いプレゼンをするために練習する方もいらっしゃる中で、吃音者がとってもプレゼンが上手い非吃音者のように発表をするのは難しいと思います。

ただ、準備をしない自分の発表と準備をした自分の発表を比べれば、確実に準備をした方がスライド発表のクオリティは上がります。練習量に比べて周りとの距離がなかなか縮まらないので焦ることも多いですが、冒頭でも話したように目的を外さないプレゼンを続けていれば必ずスライド発表の質は上がっていきます。事前準備まで含めて、スライド発表のスキルなんだと割り切って、頑張って準備しましょう。


以上簡単に自分がよくフィードバックいただく部分に関して吃音者のスライド発表の心得を紹介させていただきました。まだ自分でもできてない部分も多いですが、一生付き合っていくものですからせっかくならスライド発表を好きになれたらいいですよね!

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