図1

論文紹介:Brain-Circulation Network:The Global Mobility of the Life Scientists①

三浦です。

今日は論文を一つ紹介したいと思います。

2018年10月に発行されたTechReport、"Brain-Circulation Network:The Global Mobility of the Life Scientists"です。著者はLuca Verginer,Massimo Riccaboni。IMT School for Advanced Studies Luccaの研究者です。

URLはこちら。
https://ideas.repec.org/p/ial/wpaper/4-2018.html
図は全て論文から持ってきています。

全部で30ページ弱あるので細かく分けて説明していこうと思います。
今日はAbstract,Introduction,目次まで。

Abstract

・組織移動が活発になっている今、そのパターンをglobalに解明することは重要
・移動データは取得するのが難しいが、今回は書誌情報からそれを取得するmethodを開発し、370万人9745都市のデータを集めた
・international innovationは国境と言語コミュニティの境界でざっくりと分けられることがわかった
・国際都市は若い優秀な研究者を集めることがわかった

Intro

研究者の流動性が高まって来ていて、優秀な研究者は良い組織へとどんどん引き抜かれていく時代になりました。そうした意味で研究者は「1人の人」という意味以上に「可動な知」と捉えられ、各国はその知を巡って「Brain Drain(知の搾取)」を行なっていると言われています。近年の研究では「Drain」ではなく「Circulation」ではないかと言われており、若いうちに大国で力をつけた研究者が母国に戻り研究を行うという流れも見られています。こうした研究者移動の研究は最近盛んですが、どの規模で行うかは議論がまだ活発で組織単位か、都市単位か、国単位かなど様々な研究が行われています。
こうした動きはpersonalなものなのでデータの取得が難しいのが問題でした。例えばSocial Mediaやjob searchなどの切り口がありますが、研究者の純粋な成果物である論文に焦点を当てるのが最も妥当だと考えます。今回の研究では、MEDLINEの論文書誌情報から研究者がどの組織に属しているかを抽出し、MAPAFFILを使って組織情報を都市情報に紐付け各研究者がいつどの都市にいたかのデータベースを作ります。そのデータから都市間移動を検出して大規模研究者移動ネットワークを作成しました。さらに、各論文のIF値から算出した研究者のproductivityとの相関を見ることで、研究者の都市間移動によってproductivityがどのように変化するかを観測します。

論文の流れ

1-1 書誌情報や各種DBから研究者の都市間移動ネットワークを作成
1-2 投稿ジャーナルのIF値から各年の研究者のproductivityを定義

2 移動ネットワークの中心性、community detectionを使って研究者移動の特徴的なファクターを検出する

3 移動前後のproductivity変化を統計的に分析し、都市ごとに移動によるどのような変化が起こるかを分析する

4 「ネットワーク中心の組織は、ただ多く人を集めるだけでなく、優秀な人を集めている」という仮説をもとに、productivityや各種ネットワーク特徴量を説明変数として組織の中心性を推定するモデルを作成し、productivityが効いてくるかを調べる



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