山本太郎れいわ新選組代表の参議院議員選挙の選挙区出馬を強く支持する~出馬する選挙区の考察~

 4月15日、れいわ新選組の代表である山本太郎衆議院議員が議員辞職を行った。この議員辞職に対しては世間一般には批判の声もあるが、私は「全く問題ない」と考える。何故ならば、先の衆議院議員選挙では「山本太郎」と書かれた票は1票も入っていない、得票にカウントされないからだ。あくまでも得票に入っているのは東京都内における「れいわ新選組」と書かれた票だけである。
 また山本太郎代表が議員辞職しても、その議席は同じれいわ新選組内の候補者であった櫛渕万里候補に譲られるだけであるから、れいわ新選組の1議席を無駄にしているわけでもない。選挙区で得票率10%を超えて、比例復活の議席の権利を得ていた櫛渕万里元衆議院議員の10年ぶりの国会議員復帰を祝福したい。
 よって、「れいわ新選組」と書かれた票を一切無駄にはしていないのだから、有権者をバカにしているという批判は当たらない。というか、自民党だろうと、比例議席の返上から選挙区への出馬などは日常的に行われている行為だ。
 例えば、近々行われる参議院石川選挙区の補欠選挙も、比例区で議席を得ていた議員が選挙区に鞍替えをするケースだが、こちらは「有権者をバカにしている!」などとは、誰も批判はしていない。外形的にはこれと全く同じケースなのだから、山本太郎代表の辞任だけを批判するのは、全く持ってお門違いなのである。単なる批判のための批判、アンチの戯言にしか過ぎないのだ。

 また、山本太郎代表は、今回は比例区ではなく、選挙区で出馬して1議席を得ると表明したことも高く評価したい。前回の参議院議員選挙では、まだ出来たばかりの「れいわ新選組」という政党名は浸透していなかったから、「山本太郎」という名前で票数を稼ぐ必要性はあった。しかし、3年経って、山本太郎=れいわ新選組という構図が浸透した今では、比例区から出馬する必要性は全くない。れいわ新選組には投票しないが山本太郎個人名には投票するといった人は、今やほとんどいないだろう。
 だから、全国比例区で出たところで、れいわ新選組としての比例票も、れいわ新選組+山本太郎としての比例票数もほとんど変わらないのである。全国比例区からは出馬せず、選挙区で+1議席を獲得するとした判断も極めて適切であると高く評価したい。

 さて、それでは山本太郎代表はどこの選挙区から出馬するのが適切なのであろうか。本人は既に候補者が決まっている、東京・愛知・大阪・福岡の選挙区からは出馬しないと明言しているが、念のため、東京と大阪選挙区も検討するとしておこう。

神奈川選挙区(定数4+1)・予定候補者

・三原じゅん子(自民)
・あさお慶一郎(自民)
・三浦のぶひろ(公明)
・松沢しげふみ(維新)
・寺崎雄介(立憲)
・水野素子(立憲)
・あさか由香(共産)
・深作ヘスス(国民)

 現段階で最も可能性が高く、かつ最も当選の可能性が高い選挙区は神奈川選挙区であろう。定数4議席の選挙区ではあるが、2019年に当選した松沢しげふみ前参議院議員が昨年の横浜市長選挙に出馬したため、今回は定数5議席で、5議席目は2025年までの3年間の任期となる特殊な選挙区だ。
 なお、その際、辞任したはずの松沢しげふみ前参議院議員は、横浜市長選挙に落選して、再度維新から出馬することになっている。山本太郎代表を批判するならば、こちらも「有権者をバカにしている」と批判されて然るべき対応だと思うのだが・・・

 この選挙区の予測としては、やはり元タレントしての知名度も高い自民党現職の三原じゅん子議員が抜けて強い選挙区と言えるだろう。山本太郎代表が出馬するならば、元タレント同士で、セクシーナイトvsメロリンキューセクシー対決となる。ただ、自民党としては、三原じゅん子議員が抜けて強いことが仇となって、2人目の候補者である元みんなの党代表のあさお慶一郎候補まで、票が回るかが大事なポイントとなる。如何に票を偏らせず、あさお候補にまで票を回せるかが重要だ。
 次いで、確定的なのが創価学会の組織票がある公明党現職の三浦のぶひろ候補であろう。全国的な退潮傾向にはあるとは言え、定数4+1議席の神奈川選挙区では、まず落とさないと思われる。

 以下はもう大混戦なので、山本太郎代表まで参戦して来たら、本当に誰が当選するか分からない激戦区になると言えよう。個人的な見解としては、立憲民主党は1人に絞って、6年任期の4位以内に、着実に入れた方が良かったと考える。山本太郎代表出馬によって、その辺りの戦略を柔軟に切り替えられるかが、立憲民主党のポイントだと言える。
 あとは山本太郎代表以上に、選挙ロンダリングを繰り返している松沢しげふみ元神奈川県知事の票がどこまで溶けているのかといったところであろう。自民党のあさお慶一郎候補とは、元みんなの党対決にもなるので、その辺りで票がバッティングしている側面もあろう。共産党のあさか由香候補も、山本太郎代表が出馬しなければ、ワンチャンある選挙区だと思うが、出馬ならば若干厳しくはなるかもしれない。

 以上のように、山本太郎代表が勝つ上では、神奈川選挙区が最適だとは思うが、一方で野党全体として見ると、「自自公維れ」となって、立憲共倒れ、共産党敗北で、議席が増えない選挙区となってしまうかもしれない。その点が神奈川の立憲民主党とは友好的な議員も多い山本太郎代表としては出馬を躊躇する要因にもなるかもしれない。

埼玉選挙区(定数4)・予定候補者

・関口昌一(自民)
・西田まこと(公明)
・上田きよし(国民推薦)
・高木まり(立憲)
・梅村さえこ(共産)
・加來たけよし(維新)

 激戦の神奈川選挙区とは異なって、無風区と思われているのが定数4議席の埼玉選挙区である。ここは現職3名と立憲民主党の新人候補で決まりであろう。自民党が2人目の擁立も検討したが公明党に配慮して見送ったことも大きい。国民民主党推薦の現職の上田きよし候補は前埼玉県知事である。
 前回の参議院議員選挙では悲願の議席を獲得した共産党も、前知事相手では厳しい戦いと予想される。上田前知事と票田が被る維新の候補者も同様である。上田きよし前埼玉県知事に隙があるとすれば74歳という高齢な面であろうが、ここは山本太郎代表が出馬しても、土地柄的にも厳しい選挙区かとは思う。

兵庫選挙区(定数3)・予定候補者

・末松信介(自民)
・伊藤たかえ(公明)
・片山大介(維新)
・相崎佐和子(立憲)
・こむら潤(共産)

 宝塚市出身の山本太郎代表にとっては出身県となるのが兵庫選挙区だ。定数は3議席となっているが、前回は自公維立の4党が大激戦の末に、立憲民主党が敗れた。ここは維新も強く、自民党ですら油断ならない選挙区となっており、公明党に至っては全国で最重点区に指定されている選挙区である。対する、立憲民主党も女性県議を配して、前回の敗戦からのリベンジを本気で狙っている、引き続き4党大激戦の選挙区である。
 この大激戦区に山本太郎代表が挑むのは、より一層、選挙区を面白くする構図ではあるが、出馬した場合は恐らく最も票数を削られるのが前回次点の立憲民主党になるので、前回同様に自公維でより堅くなる可能性もある。ここで自公維の一角を崩せるようであれば、山本太郎代表は大したものであるとは言える。大変厳しい選挙区ではあるが、生まれ故郷という名目で出馬する価値はある選挙区だとは思う。

 次に、れいわ新選組の候補者が既に擁立されてはいるが、東京選挙区と大阪選挙区も一応検討してみよう。

東京選挙区(定数6)・予定候補者

・朝日健太郎(自民)
・生稲晃子(自民)
・竹谷とし子(公明)
・蓮舫(立憲)
・松尾あきひろ(立憲)
・山添拓(共産)
・海老澤由紀(維新)
・荒木ちはる(都ファ)
・よだかれん(れいわ)
・安藤裕(くにもり)

 2013年の定数5議席時代に山本太郎代表が4位になったのが参議院東京選挙区だ。そこから1議席増えて今は6議席となっているが、新顔としては都民ファーストの会の代表の荒木ちはる東京都議が、国民民主党の推薦も受けての参戦となった。まず、公明党の竹谷とし子議員は限りなく100%近い確定、知名度のある蓮舫議員も確実ではあろう。

 残り4議席の予想に関しては、なかなか意見も割れるところではあると思う。この中で、一番確実視されるのは共産党現職の山添拓候補にはなるであろうか。自民党の2人に関しては、どちらかは受かるのであろうが、どちらが受かるかに関しては意見が割れるところであろうと思う。個人的にはタレントとしての知名度で生稲晃子候補の方が、最終的には上に行くのではないかと見ている。
 不確定要素としては、やはり都民ファーストの荒木ちはる代表が非常に読みにくい。小池百合子都知事がどの程度、応援に入るかにもよるだろう。維新に関しても、この都民ファーストの参戦で最も苦労しそうなところで、衆議院選挙の比例票ベースでは当選圏内確実も、かなり都民ファに喰われる可能性は否めない。

 れいわ新選組はよだかれん候補を擁立したが、衆議院選挙の比例票ベースでも36万票と当選圏内の50万票には手が届かないところではある。ここで山本太郎代表が出馬することで、残りの10数万票を埋めに行き、1議席を狙いに行くのは、最も妥当な考え方ではあると思う。
 ただ東京都民にとっては、東京都知事選挙も含めて、毎年の度重なる山本太郎代表出馬によって、山本太郎代表に腐食気味な感覚は正直ある。衆議院の比例東京ブロックを辞めて、そのまま参議院の東京選挙区出馬は、都民からだと反感を買うかもしれない。
 また、反緊縮票としても、自民党の「日本の未来を考える勉強会」の会長だった安藤裕前衆議院議員も出馬するので、反緊縮右派票は取り難い側面もある。個人的な感覚としては、東京選挙区以外からの山本太郎代表も見てみたいところではある。

大阪選挙区(定数4)・予定候補者

・松川るい(自民)
・石川ひろたか(公明)
・浅田均(維新)
・高木かおり(維新)
・たつみコータロー(共産)
・おおたにゆりこ(国民)
・やはた愛(れいわ)

 全国で最も予定調和な選挙区は定数4の大阪選挙区であると言えよう。ここは維新の牙城であるが、さすがに定数4に対して3人目の候補者は擁立しない様子ではある。そうすると、維維自公で最鉄板の選挙区である。
 捲土重来の共産党のたつみコータロー元参議院議員が一角を崩すのもかなり厳しい選挙区であろう。立憲民主党に至っては辻元清美前衆議院議員ですら、大阪選挙区では勝負せず、全国比例区に回って出馬することになり、候補者すらまだ決まっていない。立憲民主党が不戦敗するかもしれないほど、強固な維新によって立憲が弱体化している選挙区である。
 れいわ新選組は既にやはた愛候補を擁立している。彼女は、健闘はすると思うし、立憲民主党の候補者が居なければ、更に票が上積みされる可能性はあるが、客観的な見方としては維維自公の壁は高くそびえ立っている。

 この維維自公で8時ゼロ打ちの予定調和な選挙区で勝負してこそ、山本太郎代表は男の中の男であると私は思う。この選挙区で出馬すれば、最も盛り上がり、全国規模にまで波及して、れいわ新選組の比例票を最も上積みさせる選挙区だと私は考える。山本太郎代表は自民党票を取るのは厳しい政治家ではあるが、まだ維新の票の方が取れる可能性がある政治家だと見ている。何故ならば、維新の支持層は30代、40代であり、この支持層がれいわ新選組の支持層の年齢とも被るからである。

 なお、もし山本太郎代表が出馬した際に倒せるとしたら、私は維新よりも、むしろ公明党の方だと思っている。かつては常勝関西と呼ばれた大阪公明党ではあるが、維新の影響力もあってか、年々弱体化している傾向は見て取れる。また、山本太郎代表が出馬すれば、大阪府内の投票率も上昇すると考えられるので、投票率が上昇すると公明党には、なおダメージとなる。さらにはお隣の兵庫県を最重点区としているので、大阪も激戦区となると、兵力の分散にも繋がり、双方の選挙区が厳しくはなって来る。
 維新を倒すという名目で、実は公明党倒しを狙う点においても、大阪選挙区から出馬が実は最善手となるのではないだろうか。以上のように、維維自公の予定調和を崩し、比例票の上積みを狙う点からも、私自身としては大阪選挙区からの出馬を一番推したい。

 最後に今回の山本太郎衆議院議員辞職、参議院議員選挙出馬に関しては、兼ねてから私自身が主張していたことであり、10年間苦労していた仲間に衆議院議員の議席を譲るという献身的な点においても、実際に行動に移したことは熱烈に評価したい。世間一般からは批判されようとも、今回の行動は議員の身分に安住しない、捨て身の政治家として高く支持する。
 まさしく、これこそが本物の「身を切る改革」ではないだろうか。

 給料を削減するだけの“なんちゃって”身を切る改革ではなく、自らの議席を投げ打ってでも、この国会の空気や流れを変えたいとした山本太郎代表の行動こそが、本物の「身を切る改革者」として、もっと高く評価されて然るべきだと私は思う次第である。

 最後に、私は政治経済評論家の仕事として、及川健二さんが野党の政治家にインタビューをして、各党の経済政策をまとめた著書『本当に野党ではダメなのか?——野党が掲げる成長のための経済政策』の巻末に文章を寄稿している。3ヶ月後の参議院議員選挙に向けて、この著作を読まれることを改めておススメしたい。

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