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全社員UXリサーチャー化計画とは?(西藤 健司さん)【RESEARCH Conference 2022 レポート】

「RESEARCH Conference 2022」はデザインリサーチ、UXリサーチをテーマとした日本発のカンファレンスです。近年、より良いサービスづくりのための手法としてデザインリサーチやUXリサーチへの注目が高まっています。RESEARCH Conferenceは、リサーチの価値や可能性を広く伝えることを目的に「デザインリサーチの教科書」著書の木浦幹雄と「はじめてのUXリサーチ」著書の草野孔希・松薗美帆の3名が共同で立ち上げたものです。

2022年5月28日に初開催となったRESEARCH Conferenceのテーマは「START」。このテーマに沿って、リサーチの多様な価値を共に伝えてくださるスピーカーを公募しました。応募者40組の中から、3組のリサーチに携わるみなさまにご登壇いただきました。

本記事では、株式会社Shippio Product Design Manager 西藤 健司さんの『Shippio全社員UXリサーチャー化計画 - 顧客理解・仮説検証を全社員で行う組織へ』の模様をお届けします。

■登壇者

西藤 健司 / 株式会社Shippio Product Design Manager
ビービットにてUX/CXコンサルタントとして企業の経営課題・事業指標に基づくデザイン・開発のディレクションや人材育成等を行った後、企業の成長産業支援に従事。エクサウィザーズにて複数プロダクトの立ち上げにUI/UXデザイナーとして従事した後、プロダクトマネージャー・UXデザイナーとして活動。2022年3月にShippioに入社。

世の中が愛されるサービスで溢れるためのデザインリサーチ

今回40社以上も応募があった中から選ばれた公募スピーカー。3枠の公募登壇枠の1つに選ばれたのは、貿易領域のスタートアップであるShippioの西藤さんです。

Shippioは日本初のデジタルフォワーダーです。フォワーダーとは自ら輸送手段を持たず、荷主と直接契約をして輸送をする事業者のことです。輸出入や通関業務、輸送の手配まで、幅広い業務をおこないます。

業務の属人化が当たり前、船舶の遅れが生じれば何個分もの貨物の手配を再調整を何度もおこなう……といった環境の領域です。Shippioはそんな貿易業務の効率化へ貢献するサービスを日々開発しています。

そのプロダクトデザインを担っているのが西藤さんです。講演冒頭に西藤さんは、BtoBの業界理解は一般的に困難であり、それゆえにデザインリサーチもハードルが高いことを指摘します。そこで実践するのが「サクセスケースモデリング」。講演中には「サクセスケースモデリング」を通じて、社内でサービス開発を実践する好循環を作り出すためのプロセス、リサーチのコツなどが語られました。

サクセスケースモデリングの目的は「ものづくりの指針」を作ること

西藤さんは、顧客の成功事例理解と成功に至るまでのプロセスのリサーチと、それらのモデル化を「サクセスケースモデリング」と定義しています。

似たような表現で「顧客志向」という言葉が使われています。サクセスケースのリサーチにおいては、顧客と同じ目線を持つことが目的であり、その視点でそれぞれの担当者が各目標につながる状態を創出することが狙いだと西藤さんは解説します。これにより、組織全員が顧客視点を持つことができるとも付け加えます。

<サクセスケースモデリングの狙いについて>

同時にサクセスケースの定義は、プロダクト開発や業界理解のインプットの目線合わせともなるため、社内全体でPDCAサイクルを回す際の共通理解・共通言語となると言います。
リサーチ文化のみならず、新しい文化を定着させるためには、小さな成功体験の積み重ねが必要です。

お客様からのフィードバックや自身の業務の高品質化に繋がったなどのリサーチ文化を通した成功体験の社内共有が、全社員UXリサーチャー化計画の肝であると西藤さんは強調します。

<リサーチ文化を通じたPDCAサイクル>

UXリサーチでの3つの重要な考え方

UXリサーチを進める上で、重要な3つのポイントがあるそうです。

「UXリサーチの目的は行動変容であって、顧客からコメントをもらうことではありません」と西藤さん。UXリサーチの一環としてユーザーインタビューやアンケートを実施することがあると思いますが、単に「XXが使いづらい」といった不満だけを回収するのではなく、理想の使い方と現状のギャップとして、課題を捉えることが重要だとも言います。また、サクセスケースとそうではないケースとの比較対象にして顧客ストーリーを分析することも有効ということでした。

ShippioのUXリサーチプロセス

それを踏まえてShippioでは、次のプロセスでUXリサーチを実施しているそうです。

サクセスケース定義ではユーザーインタビューの他、(N)PSや、Sean Ellis Testなどのテストスコアも参考にされているようです。

参考:「PMFのはかり方、見つけ方: やや実践編」https://note.com/kenichiro_hara/n/nec3b6d791039#JiaIY

その後、N1での分析を進めます。しかしShippioでは、サクセスケースのユーザーを分析すると言っても、今の100点に近い状態のみを対象にするのではありません。満足度やロイヤリティなどが現在の状態になるまでの下降/上昇の流れまで追って分析しているとのこと。さまざまなタイミングで下降が上昇に転換する際の「理想の状態に近づくための要諦」を掴むためにそうしていると西藤さんは強調します。よりユーザーの体験を深ぼっていく姿勢が伺えます。

それらを分析し、モデル化するイメージが次の図です。

<サクセスケースモデル化のイメージ>

モデル化のポイントは、ユーザー体験と事業部側の体験をセットで行うことです。冒頭での解説があった通り、顧客視点を顧客も、事業部も共有している状態を具体的にすり合わせているのがこの図になるでしょう。

Shippioでは実際に、このモデルに基づいてユーザーインタビューをおこなっているそうです。デザイナーやセールスと西藤さんとのコミュニケーションが活性化されているといいます。

質の高いインプットを社員全員で集めていく

このようにサクセスケースモデリングを使った全社員UXリサーチャー化計画は、社内のコミュニケーションの活発化、そして質の高いユーザーフィードバックが集まり始めたことなどで、その成果が現れています。

「サクセスケースモデリングはあくまでアプローチの一つ」と西藤さん。社内で使える共通認識・共通言語を構築するのは、リサーチ文化定着の参考になる一つのアプローチと言えるでしょう。Shippioの全員リサーチャー計画は始まったばかり。これからもShippio内での活動改善は継続していきたいと西藤さんは語り、登壇を締めくくりました。

西藤さんのアーカイブ動画、講演資料も公開されています。こちらもあわせてぜひご覧ください。

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それでは、次回のnoteもお楽しみに🔍

[編集]若旅 多喜恵[文章]北川 真央 [写真] peach


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