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【閑話休題】暗闇でも走る 安田祐輔

論文じゃないのだけど。特定非営利活動法人キズキを設立した安田祐輔さん「暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由」についてメモ_φ(・_・ 著者本人にはお会いしたことはないが、共通の知り合いが結構いて、「安田さんには会ったことある?」と聞かれたことが何度もあった。活動拠点の国内外を問わず、自分のストーリーを持って活動をしている人たちには随分と勇気づけられる。

家庭環境や発達障害の苦難を乗りこえて大学に進学し就職したものの、半年で鬱とひきもりに。その後一念発起し家庭教師を経て、困難を抱えた人のための塾を起業。途中途中で筆者のキャラクターが分かるようなユーモアに富んだ表現があり、読みながらハハハと声を出して笑うこともあった。

さて気になった箇所はこちら。

そう、僕も彼らも社会の弱者だったのだ。弱者同士でケンカして苦しめ合っている現状をバカバカしいと思うようになった。(399ページ)

そうなんだと思う。でも他人がそう思うならともかく、当事者がこう思えるのはすごいなと思った。私も長年苦しんでいることがあるけど、「もしやあの人もこうだったんじゃないか…」と思えたのはつい最近。彼の気付きが、「誰も憎まない」という彼のモットーと繋がるんだけど、これも難しいよねえ。私は「一生恨んでやる」って思うタイプで、そのために沢山の友人をなくしてきた。アンマンで信頼する同僚に「相手を許すことを学びなさい」って言われたけど、まだまだ怒りのパワーが勝ってしまう。それで疲れてしまう。自分の中で「ぜ〜ん(禅)」って唱えて落ちこうとするんだけど、まだまだ修行が足りない。

学習習慣がない子が多い以上、勉強に対するモチベーションが低いのがしょうがない。でも、そこまで想像力を働かせるのはなかなか難しい。(1700ページ)

はい。私は大学生の頃に外国籍児童の勉強をサポートするボランティアをしたことがあるのだが、勉強しに来たはずなのに全然勉強しない子が多くて、私はすぐに拗ねてしまった。「わざわざ教えに来てるのに!」と怒ってしまったかもしれない。昔の自分を思い出したので、この「清く正しい行動は難しい」の箇所は本当に耳が痛かった。いわゆる「清貧バイアス」みたいなのは援助の仕事をするにつれて、だんだんなくなったとは思う。けど、いつも意識しなきゃいけない点だと思う。

私の好きな小説にサマセット・モーム『人間の絆』があるんだけど、このなかで「人生は絨毯みたいなもので、様々な糸が織り込まれてて、どんな模様になるかは最後までわからない」という文章がある。安田さんは「挫折はいつか物語に変わる」と書くが、本当に今の状況を将来にどう捉えられるか分からないよね。願わくば、社会が多様性のある物語を受け入れるようになっていただきたい。多様性は社会の強みなんです。昔は「そんなん言って嘘っぱち〜」とか思ってたけど、新型コロナウィルスの政府対応を見ると、意思決定における多様性が担保されてないとアカンな〜ってのを最近よく感じます。コロナは特に、誰かを取り残すことはその他すべてのコミュニティへの脅威になりますから。

なお、私もオフィスでは裸足で歩くタイプです。大体椅子の上であぐらかいてる。(私は水虫ではありません)


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