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21,Oct,2020 バンコク反体制プロテスト

バンコクでは連日反体制プロテストが続いています。彼らの要望はプラユット政権の退陣、民主的な新憲法の制定、王室改革、不法逮捕されたデモ参加者の開放です。

2014年のクーデターから軍政となっているタイでは、去年に選挙があったものの公正なものだったとは言えず、若者に人気のあった野党も無理やり解党されたりと混乱が続いています。タイ国内は長年の不況に加えてコロナによる経済的なダメージが大きく、経済的弱者な立ち位置にある若者を中心に現政権に不満を持っている人が多いようです。

同時に以前では考えられなかった王室改革を求める声が大きくなってきています。国民の精神的支柱として絶大な支持があった前国王が亡くなられ、エキセントリックな行動で有名な現国王が即位されましたが、国民の支持は高くありません。彼は即位後に今まで王室財産管理局が運用してきた王室資産を国王の個人名義に書き換え、4兆円規模の資産を持つ世界一裕福な国王になりました。タイは経済格差が世界一と言われており、一部特権階級と王室擁護派の人以外から支持を得られるかというと難しいように思えます。

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デモの行われる場所は毎日変わっており、開始2時間くらい前に発表になって各自集合場所に駆けつけます。この日は戦勝記念塔でした。

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3本指は映画「ハンガー・ゲーム」の中で使われていた、全体主義と絶対的権力に反対するという意味を持つジェスチャーで、今回のデモでは広く使われています。

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ある程度集まった段階で目的地を内閣府と発表があり、4kmほどの道のりを歩き始めました。もちろん日本みたいにデモするのに事前許可みたいなナンセンスな事はありません。赤や青の屋根はご飯の屋台で、デモ隊と一緒に動きます。そんなところがとてもタイっぽいです。

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沿道から支持を表す人も多く見受けました。

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参加者の7〜8割は中高生を含む若者です。制服を着たまま参加している子も多く、反面中高年や老人はほとんど見かけませんでした。

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屋台も隊列になって移動。

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先頭集団は警官隊との衝突も想定しヘルメットを被っていて緊迫感と悲壮感があります。

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歩道橋の上から前後を見ると大通りが人で埋め尽くされています。この人数でも大きな混乱はなく、救急車が来ると皆がさーっと道を開け、具合が悪くなった人向けに救護の道具を持って歩く人、ゴミ袋を持って清掃しながら歩く人、道行く人に弁当を配る人なども多く見かけ、それが自主的な行動なのが印象的でした。

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デモ隊に向かって国王の肖像を掲げる人。

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もちろんそんな中にも屋台が。

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警察が数カ所でバリケードを作って立ちふさがっていましたが、人数に押されてか比較的すぐに撤退していました。これ数日前のデモに対して行った強権的な対応を世論に批判され、弱気だったのではと言われています。

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再びデモの先頭へ。数日前の別のデモでは警察はデモ隊に向かって放水車と催涙弾を使用しており、それを想定してか傘を持っています。このあたりも香港デモの経験が参照されてます。

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前国王の肖像。この状況を見て何を思われているのでしょうか。

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この先が内閣府です。最終的にはデモ隊は建物前までたどり着き、3日間を回答期限とする首相宛の辞表を警察代表に渡して解散となりました。この翌日、デモを抑圧するために施行されていた5人以上の集会を禁止する緊急事態宣言が解除されました。デモはある程度の成功を収めたと言えそうです。

全体の印象としてはとにかく平和に終わってよかった、2010年の暗黒の土曜日と言われているデモ弾圧なような事態にならなくて良かった、というのが率直な感想です。デモ自体は香港の事例を参照に色々と工夫がされていて、大きな中心が無くとも(学生の中心人物達はとっくに逮捕済み)個々が有機的に動いた結果、大きな混乱もなく大変秩序立ったものだったと思います。同時にバンコクの若者の意識とポテンシャルの高さを感じて驚嘆したり感銘を受けたりの連続でした。この先この運動が香港と同じような結末を辿らないで欲しいと心から願っています。

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