パク・ジミン“Try(다시)”

シンガーソングライター的な立ち位置で作詞・作曲に参加したソロ作。意外にも内省的な内容で、先行して活躍していたペク・イェリンに近寄りすぎた感もあるものの、ハリがあって艶やかで華やかな声質はやはりあのジミンちゃんそのもの。アルバム全体としても、生音中心のイェリンに対して、意外にもエレクトロニック色が強いのも楽しく、かっこいい。
内省的な雰囲気は昨年一世を風靡したヒョグォの影響なのか、本曲については、Primaryとのコラボでの名曲「Bawling」の和声とサビの基本構造が同じであり、一部同じフレーズも見られる。ただし和声構造の中核を成しているIVm(サブドミナントマイナー)は、現在のJYPのトレードマークとともなっていて、イェリンはもちろん、何気にTWICEも同様の構造である点にも注目したい。

Aメロほか:
|GM7|Em7-5|Bm9|DM9|

サビ:
|GM7|Gm6|F#m7|Bm9|
|GM7|Gm6|F#m7|Bsus4-9, B7-9|
|GM7|Gm6|F#m7|Bm9|

ブリッジ:
|GM7|Gm6, Gm6onC|DM9|DM9|

Aメロとサビはほとんど同じだが、IVmであるGm6について、Aメロはその代理コードに近いEm7-5が使用されている点がとても面白い。機能としてはGm6と近いものの、-5つまり#4の不安定な(トライトーンと呼ばれる)和音を使用することで、若者が自らの心に抱えた不安と向き合う、内省的な歌詞の世界を音で表現している。そして、サビでは、どこかふわふわとしながらも、そこから一歩足を踏み出す明るさへと転化する様が、Gm6への和音の変更によって表現されている。
このあたりの微細な表現は、恐らく共作者であるChloeかNodayによって提案されたものと思われるが、JYPではこうしたベテランとの共作によって実践的に和声を学んでいくのだろう。

なおAメロのギターのバッキングパターンは山下達郎の名曲Sparkleのイントロと同じだが、こちらは別に影響を受けたわけではないと思う。

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