最近の子供は歩行をするのが早い段階でできるようになっているのをよく見かけることがあります。また子供の運動能力向上のためには歩行が早い方が色々なことを早く始められるからいいと思われている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし子どもにとっては歩行は早いよりも出来るだけ『ハイハイ』や『ずりばい』をたくさんして体の発達段階に合わせて、その時期に必要な運動や動作をしていく事がとても重要なのです。

歩くよりハイハイの方が重要な理由

オプティカルフローによる脳発達の向上

オプティカルフローとは『自分自身が移動し、加速することで発生する周辺視野の移動』の事を言い、周辺視野が動くことで自分の運動を分析し空間認知をしているのです。体操選手が空中であれだけ回転していても地上を見失わないのはこのオプティカルフローが働いているからなのです。またオプティカルフローの発生により遠くのものをとる力、両眼で遠くのものを立体的に見る力、寄り目で近くのものを捉える力が向上し、両眼視機能、空間把握能力、体幹力、脳機能が歩行に比べて向上しやすくなります。

正しい脊柱のアライメントを作れる

大人の正常な背骨の弯曲は、横から見た時に頚椎(首の骨)で前へのカーブ・胸椎で後ろへのカーブ・腰椎で前へのカーブというS字形で、これにより人間の体は重力による体のショックを軽減させながらの直立二足歩行を可能にしています。しかし生まれたばかりの赤ちゃんは、体が丸まった状態で生まれてきます。この状態をCカーブといい、この状態から腹ばい→ずりばい→ハイハイをしていく過程で頚部、腰部の前湾が作られ、脊柱の正しい生理的湾曲が形成されるのです。ハイハイの姿勢を作ると重力に抵抗して正しい脊柱のアライメントを維持しようします。しかしこのハイハイをあまりせずに歩行動作(立位)に移行してしまうと十分な姿勢保持能力が向上しなく運動能力の低下に繋がってしまう可能性があります。

神経系の発達

ハイハイの姿勢は重い体を手・脚を使って支えています。この手と足(膝下)が地面に触れていることで立位に比べると地面に触れている面積が大きく、この状態で動くことで多くの情報入力がされて自己定位(バランス感覚)の獲得をすることが出来ます。神経系があまり発達していない段階で早く立ってしまうと地面から伝わってくる情報が手や足といった広い面積ではなく足の裏だけになってしまいます。地面を感じる面積が小さくなってしまうと言う事は不安定な状態になりやすく、バランスをとるために筋の緊張が起きやすく体が硬くなる、自己定位の低下により自分の位置感覚が衰えやすくなるなどの可能性があります。また手を使う事はもっとも脳を使っていて、小さいうちに手をたくさん使う運動は知能や運動能力を高めるためにはとても重要なのでハイハイでは立位よりも神経発達に優れているのです。

成長のスピードを気にしすぎてはいけない

成長のスピードのは個人差があり、早ければいい、遅いとダメと言う事はありません。大事なことは発達段階に合わせて、その時々にあった動きを強化するような運動をさせることです。そうすることで知能や運動能力は自然と向上し、運動に苦手意識を持たない子が育ちます。子どもの成長の為にも無理に立たそうとしたり、歩く練習をさせないで沢山ハイハイをさせてあげられる環境を作ってみてください。

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