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”宇宙元旦”にあたって ~自己の確立

皆さん、こんにちは! 在米25年目、ニューヨークはハーレム在住の指揮者、伊藤玲阿奈(れおな)です。

クラシック史上最大の天才作曲家のひとり、モーツァルト(1756~91)。

彼の音楽は、ちょっと古い言い回しなら「天衣無縫(てんいむほう)」、つまり音楽のつくり方が自然極まりないにもかかわらず完全な美しさをもっています。人間の余計な情念でこねくり回さずに、神から与えられたインスピレーションをそのまま書き取ったような音楽なのです。

実際のところ、モーツァルトはまさにそのままの性格でした。良くいえば天真爛漫、悪くいえば子供っぽさが、成長して大人になってからも彼の内面にあったのです。

褒めてくれたら非常に嬉しがって、その人にもっと尽くしてあげようとし(結局は利用されて終わることも多々ありました)、逆に評価してくれなかったり、自分の望む理想でなかったりしたら、たとえ上司や権威者、友人であろうが否定的な言動として出てしまう――このようなところが彼にはありました。

したがって、社会的な生活という点では、その子供っぽさが不利にはたらくことが多かったようです。就職活動・職場関係・恋愛・同業者の嫉妬といった人生でよくある場面において、モーツァルトは中々 ”うまくやれなかった” のです。

借金返済のため過労死に近いかたちで35年の短い人生を閉じたあげく、貧民墓地に葬られ、遺骸のゆくえは現在に至るまで不明――ヨーロッパにその天才を轟かせた作曲家としては、あまりに悲しい最期でした。

しかし、彼の人生がそこまで追いやられた要因のひとつが自身の子供っぽさにあったこと、それは音楽史学からみても間違いないと思われます。

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モーツァルト
(未亡人によって一番よく似ているとされた肖像画。何といっても、この目! 彼の宇宙的繊細さを描くことのできた名画だと個人的に思う)

さて、最近になって、私は幸いなことに自分自身について見つめ直す機会に恵まれました。あるきっかけで、かなりの時間をかけて自分の内面に向き合うことになったのです。

その結果、恥ずかしながら、私自身もモーツァルトに似た子供っぽさが多分にあることに、いやおうなしに気付かされました。

それはどういうことか。

ひと言で表現するなら、私は自己を確立していませんでした。つまり自分軸をしっかり持っていなかったということです

そもそも自己を確立していれば、人の評価はあまり気にならないでしょう褒められても評価されても、有頂天にならないはずです。傲慢にもなりにくいはずです

しかし、未熟な私は違いました。

心からの評価に有頂天になり、お世辞でも同じように気をよくして調子にのりました。逆に、自分の思い通りにいかないことに対しては不満をたれ、そのくせ他人の批判を気にして嫌うという有り様だったのです。

「子供っぽさ(幼稚性)」と言うくらいですから、それが本当に子供だったら別にいいのです。褒められることで嬉しくなって成長する方が健全なのは、これまでの人類の歴史が証明していますし、その点は私もレッスンや指導でいちばん気を付けているところです。

ただし、「褒められなくては嫌だ」「批判されるのは嫌だ」というのは成長するにつれて無くしていくのが、自己を確立するプロセスというものなのでしょう。言いかえれば、それが ”真の大人になる" 大事な一要素だということ。

褒められたり批判されたりといった、他人の評価によって自分の気持ちが移ろうようでは、まだ幼稚さが抜け切れていないわけです。

私の場合、音楽ではある程度の確立されたものが自分にあると信じていましたが、それを支える肝心の心そのものに確立された軸がありませんでした。それによって結果的に自分が望まない事態さえ呼び込むことがあったと、これまでの人生を回顧すると思い当たる節がたくさん出てきます。

さあ、こんなことを書こうと思い立った今日は2022年3月21日、ちょうど春分の日。NYはそれはもう素晴らしいお天気です!

春分の日は、占星術の伝統において一年のスタートと見なされるそうです。最近では「宇宙元旦」という言葉も使われるようになりました。

なので最後にゲン担ぎをさせて下さい。

43歳になった私ですが、これからの後半生において、たとえペースはゆっくりでも自己を確立し、最後には真の大人になれるように努力し、人生の迷いをなくしていきたいと決意して、2022年宇宙元旦のこの日に記します。

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2022年春分の日、”宇宙元旦” のNYの空。ハーレムにて、教会の十字架のうえで燦燦と輝く太陽、そして美しい青空。

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執筆者プロフィール:伊藤玲阿奈 Reona Ito
指揮者・文筆家。ジョージ・ワシントン大学国際関係学部を卒業後、指揮者になることを決意。ジュリアード音楽院・マネス音楽院の夜間課程にて学び、アーロン・コープランド音楽院(オーケストラ指揮科)修士課程卒業。ニューヨークを拠点に、カーネギーホールや国連協会後援による国際平和コンサートなど各地で活動。2014年「アメリカ賞」(プロオーケストラ指揮部門)受賞。武蔵野学院大学大学院客員准教授。2020年11月、光文社新書より初の著作『「宇宙の音楽」を聴く』を上梓。
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伊藤レオナ・NY在住指揮者

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