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映画を選ぶ新基準

先日夕方少し出先で時間があったので、映画『mid90s』を観てきた。

『mid90s』は2018年にアメリカで公開された映画で、アメリカで話題となり日本でも9月より公開されている。
本作は『マネーゲーム』や『ウルフオブウォールストリート』に出演したジョナ・ヒルの初監督作品である。
舞台となる年代はタイトルにある通り90年代半ば。
その年代のLAを舞台にスケーター少年たちの青春ストーリーが展開される。

9月4日に日本で公開され、3週目には興行収入5,500万円を突破、上映館も22から38へと拡大した。
このヒット作を生み出したのは、A24というNYの映画制作会社だ。
実はこのA24、新進気鋭の制作会社として世界中のファンや映画関係者達から熱視線を注がれている。

最近では『ミッドサマー』や『ムーンライト』といった世界的ヒット作も多く輩出し、日に日に認知度も上がってきている。
A24の作品はユニークで「とがって」いるものが多い。
流行には乗らず、独自の世界観でメッセージ性の高い作品を発し続けている。

たとえば、アカデミー賞の作品賞をとった『ムーンライト』では黒人男性の同性愛というセンシティブな内容を扱った。
また、ハリーポッターシリーズで有名なダニエル・ラドクリフが主演した『スイス・アーミー・マン』では「様々な機能を持った死体」という奇妙な設定が物語の軸をなしていた。

このようにA24は一般ウケしなそうなとがった作品ばかりを扱っている。
にも関わらず世界中でファンを獲得し、いまや世界一注目されている制作会社といっても過言ではない。

このA24の成功の裏には彼らのブランディング戦略があると考える。

まず彼らの配給する作品はほとんどが奇抜なものだ
先にも書いたようにとがった作品が多く、大手の会社では取り扱わないようなものばかりである。

そのため、他では観られない作品を求める一定数の層から熱狂的な支持を得ている。
そのような奇抜で珍しい作品を求める層にとって、A24は「A24の作品なら面白いに違いない」という安心保証なのだ。

また彼らの製作する作品群にはある一貫性がある。
どの作品でもアート・音楽・ファッションに力を入れ、様々な分野のファンを虜にしている。
この三分野に関しては造詣が深く、どの作品もコアで感度の高いファンに刺さるものとなっている。
彼らが力を入れているのは映画作品だけではない。
物販やアートといった独自ブランドも展開している。

持ち前のアートやファッションに対する理解の深さを生かし、ハイクオリティなブランドの製品を提供している。
このようなブランディングを通して、A24はユニークで感度の高い層に支持される世界観を作り上げている。

このコアで熱狂的なA24ファン達が口コミで宣伝し、世界的なヒットにつながっている。
制作会社自体にファンがつくということは珍しく、これは映画業界の新しいムーブメントといってもいい。

これからの時代は出演俳優や監督ではなく、制作会社で観る映画を選ぶ時代が来るかもしれない。
以前にも書いたが、多様化している社会では少数のコアで熱狂的なファンの獲得が大切である。

そのためにはA24のような世界観を作り込む戦略は非常に参考になるだろう。


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