
【開催レポート】たつの姫路みらい会議(2024年11月30日)
2つの都市をつなぎ、さらなるエリア価値向上を目指す新たな取り組み「Connect City」が、兵庫県たつの市と姫路市を舞台にスタートします。そのキックオフの場として11月30日に、たつの市のゐの劇場にて「たつの×姫路みらい会議」を開催しました。この記事ではconnect cityの狙いである「いかに民間企業同士が連携し地域に投資することで持続的なまちづくりに繋げられるか」についてや、会議当日のプレゼンやトークセッションの様子についてご紹介します。
みらい会議とは?
たつのと姫路でのConnect Cityでは3つの企業が連携して様々なプロジェクトを推進することで2都市の価値向上を目指します。交通事業者として地域との共創を進めている「神姫バス」。たつの市の重伝建エリアを中心としたローカルディベロッパーの「緑葉社」。そして全国のエリアリノベーション推進を支援している「リノベリング」がそれぞれの強みを掛け合わせたプロジェクトを新たに立ち上げます。みらい会議では各社からのプレゼンの後、姫路市のリノベーションスクールでスクールマスターを務めていただいた西村浩さんを交えて、会場からの声を交えたトークセッションを行いました。
当日は、建築、不動産、金融、飲食、観光、教育、行政など多種多様な属性の方が、兵庫県内を中心に全国から100人以上の方にご参加いただきました。
Connect Cityとは?

Connect Cityとは、都市と都市、都市と企業、企業と企業…これまでつながりの薄かったものを繋ぎ新たな価値を創造する取り組みです。
従来の行政主導のまちづくりではなく、民間企業が主体となり地域価値向上につながる事業を実施することで、補助金や行政の予算がなくとも持続的なまちづくりにつながることを目指します。
なぜたつの市と姫路市?
姫路市では駅西エリアをはじめとしたエリアリノベーションの取り組みが活発であり数多くのプレイヤーと新たな事業が立ち上がっています。リノベーションスクール等の効果により、駅西のスモールエリア内に2年間で13件の新規事業が立ち上がるムーブメントが起きています。一方、姫路市全体で考えると姫路城を中心に数多くの観光客が訪れているものの、平均滞在時間が極端に短い課題があります。

また、たつの市では龍野地区の中で重要伝統的建造物群保存地区に指定されているエリアがあるなど、古き良き建物と文化が残るまち。その中で空き家を再生し新たな価値を生む取り組みが進んでいるものの、姫路市と比較するとまだまだ知名度が低い現状にあり、相対的に空き家の供給に対してプレイヤーが不足している課題があります。

たつの市を訪れるにはほとんどの場合、姫路市を経由して移動することとなります。「たつの市でのエリア価値をさらに高め、姫路市とたつの市をセットで楽しむ滞在のあり方があるのではないか?」という仮説のもと、2都市それぞれのエリア価値を高めながら、つなぐことで更なる相乗効果を狙っていく。そこに着目してConnect Cityプロジェクトが立ち上がりました。
また、今回は3つの企業がそれぞれのエリアでの活動実績や強みを掛け合わせられることができたため、まずはたつのと姫路からスタートしていますが、この動きを播磨全域に波及させて播磨全体としての価値向上も目指していきます。ひいては、Connect Cityの取り組みを全国各地、都市をつなぐことによる価値向上が見込める地域に波及していくことが目標です。

具体的に何をするのか?
全体の構想を描いたとして、具体的に何をするのか?3つの企業が主体となり各プロジェクトは推進していきますが、そこに協力していただくプレイヤーや企業の方々に共感を得ながら関われる余地がないとこのプロジェクトは成功しません。そのためにまず、具体的なプロジェクトの紹介の前にたつのと姫路の暮らし・旅を楽しむ3つのペルソナを元にストーリーを提案。それを実現するためのプロジェクト案をプレゼンしました。

今回プレゼンしたプロジェクトは以下の通り。
各社ごとに推進プロジェクトもあれば、企業同士が連携したプロジェクトも。プレゼン後は会場からの感想や意見をいただきながら、どうやったらより良いものにできるか、トークセッションを行いました。
■つなぐアクション
・神姫バスのメディア「Local Prime」を活用した情報発信
・姫路駅前のスペースを活用した「たつのと姫路テーマのマルシェ」の開催
・地域事業者と連携した2都市でのバスツアーの実施
・思わず立ち寄りたくなる、たつの側のバス停留所のリノベーション
・バス移動自体を楽しく。音声ARコンテンツの提供

■空き家を動かすアクション
・たつのと姫路の2都市で物件と人材をマッチングさせる空き家ツアーの実施
・民間主催でたつの市でのリノベーションスクールを開催
・神姫バスが姫路城周辺につくる城下町ホテル
・複数の空き家を題材とした建築家コンペの開催

トークセッションで見えてきたこと
トークセッションではまだまだアイデアベースのプロジェクトをさらにより良いものにしていくために様々な意見交換をしました。

暮らし観光とまちの価値の継承
建築物を保存しながら暮らすまちづくりが重要だが、そのためには建物を使う人を増やす必要がある。
「暮らし観光」というテーマを掲げているが、観光客を大量に集めることが目的ではない。
たつのは気づかれていない資源を持っており、なりわいをつくりながら暮らし観光的なまちづくりを目指すべき。姫路のような観光スタイルとは違うアプローチが必要。
たつのの家賃は安く今は出店しやすいが、人気が出ると家賃が上がる可能性がある。民間の不動産運用と公的なサポートの協働で、まちに合ったマネジメントが重要。
公共交通と官民連携まちづくりの可能性
民間主導でまちづくりを進めることが重要。行政は全体のビジョンを取りまとめる役割を担う。
民間企業が物件を取得・整備・活用することで、公共施設との連携の可能性が広がっている。
たつのの駐車場不足の問題に対しては、民間だけでなく行政との連携が必要。川沿いに駐車場を整備し、中心部への車の流入を抑制する計画が求められる。
音声ARを活用した観光地の魅力発信と地域価値の向上
姫路城と城下町の連携により、観光客を呼び込むことが重要だが、オーバーツーリズムにならないよう注意が必要。
観光客が地域活動に参加し、まちを良くして帰っていくような流れを作ることが理想的。
音声ARを活用し、観光スポットの魅力を伝えることで、観光客の興味を引き付けることができる。観光だけでなく、防災や見守りなどの日常的な情報発信にも活用できる可能性がある。

両市におけるリノベーションまちづくりの可能性
リノベーションまちづくりでは、まちの既存の資源を活かし、価値づけすることが重要。空き家を活用し、エリアに価値を見出すまちづくりを進めている。
地域の方々と一緒に理想の暮らしを妄想し、必要な人材を呼び込むことが重要。
小さい規模から始め、お店同士がまち全体を考えながら発展していくことが求められる。
今後について
たつのと姫路でのConnect Cityの取り組みはまだ始まったばかりです。今後は今回プレゼンした3つの企業が主軸になりつつも、様々な企業や個人が連携し、協力していくことが重要です。定期的な情報発信や報告の場を設ける予定ですので、興味を持たれた方はぜひ一緒にこの取り組みを盛り上げていただけると幸いです。
シンポジウム開催のお知らせ
Connect Cityの取り組みと連動し、民間企業がなぜ地域に投資し、持続可能なまちづくりを目指すべきか。全国各地の実践者をゲストとして招き、参加者の皆さんとこれからの公共のあり方を考えるシンポジウムを2025年2月8日(土)に開催します。興味のある方はぜひご参加くださいませ。イベントの詳細は下記のリンクよりご参照ください。