底辺と謳われた仕事⑥
デビュー初日
今思えばとても良い経験だったのかも知れないが…
第6話『始末書』
会社からの無線連絡で目的地は近くのクリニック
連絡には"駐車場で出やすい様にして待機"
ん?駐車場で待たなければいけないのか??
道路沿いじゃダメ?
デビューしたての私にはそんな疑問を持つ事もなく、書いてある通りに駐車場に入る
せ、狭すぎる。。。しかも車がいっぱいで切り返しが出来るスペースがない
今の私なら落ち着いて対応するだろう
ただ、デビュー初日でトランス状態の私に冷静な判断など出来るはずもない
逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!
頭の中では急いで玄関にお声掛けをしなければいけないという焦りが押し寄せてくる
全ての悪条件が揃ってしまった
バックモニターの出し方も分からない私は壁と壁のスペースをギリギリに活用して切り返しを図ったのだが、軽自動車でもキツそうな空間でコンフォートを切り返せる訳がない
、、、ガリッ!?
超絶にぶい感触が全身に伝わった
絶望感が押し寄せる
私は急いで車を降りて後ろを見た
本当にギリギリの所で僅かに壁の角に接触
傷なんて触れば辛うじて分かる程度
誤魔化せば良いじゃないか?
ほんの一瞬、私の中の悪魔が囁いた
いや、ソレをやってしまったら私はずっと同じ事をする。それが発覚した時に自分の信用は終わる
当たり前の事だが、とにかくお客様を送ってから一息ついて本社に連絡しよう
その時の接客は覚えていない
とにかく、なんて説明をすれば良いのか?だけが頭の中をグルグルと回る
本社に連絡をして、直ぐに帰還命令
課長に事の説明をして、傷の写真を撮られて始末書を書いた
ん?デビュー初日に車擦って始末書書くのって伝説じゃない?
ほんの1時間前までは焦りで死にそうだったのに切り替えが早い
stand.fmで音声を残し、twitterでも恥と伝説を残した
だって、いつか笑えるでしょ?
デビュー初日は始末書を書いてすぐに帰宅
私自身はすでに笑い話に切り替えていたのだが、会社の人や嫁が心配してくれた
有難い事である
ただ、私って根っからのタフマンなのだ
この経験は全て糧になる
後々、仕事に慣れてから大事故を起こす方が取り返しがつかなくなるだろう
この時の経験と判断が今でも私の大切な思い出となっている
つづく
第1話
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