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トイレで用をたしていたら隣に来て用をたし始めたのが温水さんだったような「当たり」感を誰も共有してくれない

昨日の晩飯はニュートラルベイってところにある寿司スタジオに連れて行ってもらった。おごってもらうのでなければ自力では絶対に来れない店だ。

注文を取りに来たアルバイトの若い女の子は恐らく新人。
日本人ではあったが、メニューの説明もまだ覚えたてらしく、口調もたどたどしい。

ただ、敬語もはずさずに使えていたし、笑顔も可愛くて感じがとても良かった。いちいち「よし、よく言えた。よし、大丈夫」とおじさんは心の中で拍手をしてあげたくなる。

が、一般社会はそんなにあまくはない(俺の世界はいつも大概あまいんだがドアの外ではそうはいかない)。彼女のたどたどしさに我慢ができない人類も存在するのだ。

キラーンと何かが光る音がしたような気が背後でしたかと思うか思わないかのうちに、白くて高い影がシュっとでてきて、女の子の本日の料理の説明をさえぎった。

「さつまあげのほうはこちらのぼうどのほうにもかかれてはいないんですけれどもほんじつのうらめにゅうのようなものでございましてはいそうですそちらのめにゅうにものってございませんはいもしよろしかったらどうぞおためしください~。」 

ノーーーブレス!
ノーーーーーーブレス、オーマアアアイ、ガッ。

一字一句間違わず、淀むことなく一気にしゃべりきるその男は世にいうバイトリーダーだろう。実物はやっぱりすごい。感動して握手を求めたかったほどである。いや、求めちゃえばよかった。今思うと残念だ。

知らない人はいないと思うが、数年前に流行ったウーマンラッシュアワーという漫才グループのネタになった人物像だ。

ブッシュウォーキングしていてウォンバットに出会ったような、
いや、夕暮れ時に東の空でオレンジ色の光が不規則に飛んでいるのを見たような、いや、渋谷の東急ハンズのトイレで用をたしていたら隣に来て用をたし始めたのが温水さんだったような、そんな「当たり」感が周囲に漂った。…かと思ったけど、どうやらそれはオレだけだったらしかった。

周囲のオージーはウーマンラッシュアワーのことは知らない。

ああ、残念。


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