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その声がした方に振り向くと 、若い女の顔が 俺の顔からほぼ10センチ位のところに存在したのだ。

アーターモン駅の駅前のラーメン屋。

俺がサラリーマン金太郎を読みながら肉野菜定食をがっついていると
右肩の後ろから誰かが声をかけてきた。

その声がした方に振り向くと 、東南アジア系の若い女の顔が
俺の顔からほぼ10センチ位のところに存在するではないか。

KISS?

突然のことで頭が回らない。とにかく近い。

その女はにっこり笑った。そして言った。
「あなたが食べてるもの、ちょっともらっていい?」

KISSじゃないのかいっ!

歳はまだ20歳にはなってない、と思う。
着ている服も普通、粗末なものじゃない。
鼻が詰まっててニオイは分からなかったけど、
そんなに汚らしいわけでもない。

俺が怪訝な顔をして首を振ると
「ちょっとくらいいいじゃない。あなたはまた食べれるでしょ。」

いやいや、そんな見ず知らずの素性の分からない人間から
急にそんなこと言われても「はい、どーぞ」とは言えないだろう。

え、言うべきなのか?

女は本当は女神様で、
一口食べさせると、俺の願いを何でもかなえてくれるっていう
そういう御伽噺の現代版なのか?

いやいやいやいや、そんなバナナ。(バナナ、高くなって買えない)
いやいや、そんなバカな。

首を振る俺を見て諦めたのか、
女は隣の日本人の家族連れのテーブルにアプローチ開始。

で、見事4,5歳の女の子のチャーハンを一口食うことに成功。

さらに、入口近くの20代後半の綺麗な女性のラーメンも分けてもらうことに成功。そして店を出て行った。

ええっと、謎すぎる…。


彼女が一体どんな素性なのか。どうしてこんなことをやっているのか。
いや、そもそも本当に人なのか? チャーハンをあげた女の子とラーメンのお姉さんの願いは叶ったのか。

俺に才能があったら直木賞の一つもとれる作品を書いて見せるんだけどな。

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