レミィ

物書き

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最近の記事

久しぶり〜レミィくん

 文章を書かないこと、物事を深く考えないことを徹底したらある程度メンタルの波がなくなり生活が安定した。安定しただけで幸せになっただけではないけど。  小説を読むな、音楽を聴くな、文章を書くな、絵を描くな、映画を観るな、海の匂いを嗅ぐな、都会で独りになるな、スマッシング・パンプキンズの『1979』を聴くな、かといって書を捨て街に行くな、道端の花を見るな、競馬を見ろ。  今いる場所でもたまに文章のことについて褒められることがある。僕実は小説を書くのが趣味なんですよ(今は一切書

    • レミィくん

      もう見てる人はきっといない レミィという名前は、もうすぐ捨てる まだ僕は生きている。これからもずっと生き続ける。楽しく、悲しく、生きる じゃあね、レミィくん

      • 君の話

         朝焼けは眠さの象徴だ。コーヒーも紅茶もない僕の部屋には無音と鳥の声と干乾びた煙草の匂いだけが漂っている。最近は水族館のくじらも不思議なフクロウも夏の街も世界の終わりもカノカズサもソングバードもチーズケーキも僕の中からふっと消えてしまった。消失したわけでも壊したわけでもない。煙が高いところへと昇っていき次第に空気と混ざるように、それはごく自然に輪郭を失っていった。  すずめの戸締りを見た。  あまり好きじゃなかった。  新海誠の持っていた水鉄砲は透明で透き通っていて、とこ

        • ヤニカス転落記

           禁煙ブームがすっかり浸透し喫煙者の人権がはく奪されて幾星霜、人権のない人々は狭い喫煙所で肩を寄せ合いながら一服することを余儀なくされていた。そんな人たちを眺めながらレミィ少年は、そこまでして吸うタバコというものは一体どれだけの快楽をもたらしてくれるのだろう、とぼんやり思っていたのだった。  成人をして友人と一緒に居酒屋で初めてアルコールを飲んだとき、その独特な浮遊感に感動したのを覚えている。酔う、という感覚はこれなのかと。どれだけ知識として知っていたとしても、百聞は一見に如

        久しぶり〜レミィくん

          日記

           市の図書館で詩集を読んでいた。適当に2、3冊を手に取り読書スペースへと持っていく。無個性な長机と決して上等とは言えない椅子が置かれたそこには人の姿はなかった。机の真ん中には「私語厳禁。感染症対策のためスペースを空けて」と書かれていた。すごいものだ、と思う。たったの数年で『感染症』というごくごく一般的な言葉が、特定の流行病を指すものへと変化しつつあるからだ。  僕はふわふわとした気分のまま、57577の文章をなぞっていく。僕が生まれる数十年も前に死んだ詩人の句。この詩人は第

          無題

           昔付き合ってた人から1年ぶりくらいに連絡がきた。今度飲まないか、と。はあ……ああー。うん、いいかもね、そうね。もう何年会ってないのかよく覚えてない。成人してから会ってないような気がする。口元を隠して笑う癖があることだけ知ってるのにきっと顔も声も僕の知ってる君と違うんだろうね。とか、なんかキモイな。どうにもねぇ。  最近ジャンキーが一番幸せなんじゃないかって思ってきた。歴史の授業で習ったじゃん、清の時代のアヘン窟の話。アヘン吸っておかしくなって横になるってのさ。あれが最上の

          「きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えんとす」

           タイトルは寺山修司の詩です。特に意味はないです。  近況報告をしよう。前の記事で話した仕事は今のところは順調にいっている。以上。  さて、4月から数えて、家族や親戚などを除いてごく少数の人にだけ会った。少し遠いところに転勤になってしまった友人、山梨に住んでいる友人、山梨にすんで"いた"友人。  彼らが僕のことをどう思っているのかは知らないけれど、僕は少なくとも彼らのことを友人だと思っているし、そう思いたい。感情はつねに一方通行で、相互理解なんてのは理想の話だ。僕が思っ

          「きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えんとす」

          近況報告【仕事を辞めたこと、失踪したこと、雪かきが楽しいこと】

           あまり自分自身のリアリティな質感の話をするのは苦手なので、すぐ消すかもしれない。  なんとなく生きていたらなんとなく大学を卒業してしまって、周りの人たちが就職活動をしているものだから自分もやらなきゃって焦って適当な企業に内定もらってそこ行って、速攻辞めて1週間失踪した。  そもそも、就活をしていた段階からなんで自分が就活をしていたのかよく分かんなかったし、行きたい企業とかやりたい仕事とかひとつもなかった。ノベルゲームのシナリオライターならやりたかったけどそんな仕事なんてど

          近況報告【仕事を辞めたこと、失踪したこと、雪かきが楽しいこと】

          10年死んで、100年泣いて、1000年生きる

           たんぽぽの花が咲いていた。きれいな花だ。僕はそれを摘むと口元に寄せて匂いを嗅ぐ。草花特有の湿った香りが鼻孔をくすぐる。その香りはなにかに似ていた。おそらく、ある意味で大切ではなく、ある意味で大切ななにかに。僕の頭では古ぼけたフィルムが再生される。コマ割りの景色が光にさらされて色褪せた。その景色のなかで僕はまどろみながら立ち尽くしていた。昨日のことを考えて、明日のことで憂鬱になっている。草むらは優しい風に撫でられ、緩やかに時間を慰めていた。 「君はどこにいくの?」  と君

          10年死んで、100年泣いて、1000年生きる

          クリーチャー

           だいたい毎日わけのわからんこと言ってみんなにスルーされてる。それはいいんだけど……いや、よくはないけれど、まあ仕方のないことだ。人は人の言葉を対して重要視はしない。けれどそれは関心の矢印が向いていないときに限る。関心の矢印が向いているときは、人は人の言葉を過剰なまでに神聖視する。読み解き、震え、取り込み、祈る。一つたりとも取りこぼさない。発せられた言葉をすべて解釈し、すべて記憶し、すべてに意味を授ける。バカな話だ……思うけれど、僕だってよくやっている。そして僕がその対象にな

          クリーチャー

          雨で君の声がよく聞こえない

           起きてる?  話せることはいっぱいできたけれど、話す必要はないかなって思ってる。話すべきこと、話さなくてもいいこと、そう考えたときに、僕の持っている「話せること」は「話さなくてもいいこと」だから。  ま、そういうこと……今日のご飯はなにを食べたの? 美味しかった? 意味のない会話が好き。意味を持たない会話はただの声で、ただの揺らぎだから。深夜にはそういった、ただの揺らぎの安らかさが必要なんだと思う。君が甘いものを食べていればそれでいいんだ。甘いものが苦手だったら……プリ

          雨で君の声がよく聞こえない

          大行進は続いていく

           当たり前だけど僕はいつの間にか生まれていた。気がついたら僕は幼稚園の広い体育館(それは広い体育館というよりは、きっと僕が小さかっただけだ)に佇んでいた。一人で、だ。体育館には通っている園児一人一人の醜くいびつな似顔絵が、所狭しと並べられている。肌色で、黒の髪の毛で、子供特有の描画の輪郭で。そのどこかに僕もいる。僕も描かれている。けれど見つけ出すことはできない。やがて時計の針は正午を指す。  僕は取り残されていた、孤独だった。桁の不明な光年の空間にて、たったの一人で生を受け

          大行進は続いていく

          hanakanmuri e.p.

           ……  …………  花かんむりの作り方だって私は知らないんだよ。  それ以上に大切なことなんて、ないのにね。  …………  …… hanakanmuri e.p. 1. search the light  駅のホームに閉じ込められた。  ベンチで眠りこけている私に駅員は気が付かなかったらしく、そのまま改札のシャッターを閉じられたというわけだ。そんなことあるのだろうかと思ったけれど、実際こうやって起こってしまっているのだ。  私は記憶を手繰る。どうして私は駅の

          hanakanmuri e.p.

          孤独な僕らのために

           僕の暮らしている場所の半径100メートルでさえも通ったことのない道があって、その道のことを考えると形容し難い未知の感情に襲われる。僕は遠出をしてその場所を知った気になるけど、住んでいるわずかな半径のことも実のところロクに知らないわけで、なのに遠くのそれはたったの一回、あるいは数回で知った気になってしまう。この半径では人が死んで腐っているのかもしれないし、子どもが毎日サッカーの練習をしているのかもしれない。僕と同じ大学に通っている同学年同学科の人間が僕と同じ講義の課題で頭を悩

          孤独な僕らのために

          終章

          僕は幕間が好きだった 分子が動きを止めるから 椅子に座る 神聖な暗がりが愛おしい 深く眠る ひどく深く眠る ここにもいなかった そしてキミはあおぐもの空に手を伸ばして 雨のできそこないで手のひらを濡らすんだ 褒めてほしいって言うけど僕には言葉がない 二十一の礼砲 僕らは廃墟 愛で街を焼く太陽 光の都 幸せのタネ 陽光が目を刺す ここにもいなかった キミは僕に純粋な安らぎをもたらす そして それがひとひらの瓦礫であることも 街は色づき始めることを待ち望む ただ静寂を頼りに

          複合パルス

           短期的な自己療養その8    正直誰かを嫌うのも傷つけるのもとても気持ちのいいことだし、それを認めて(けれど最大限理性で抑え込んで)いかないと苦しくなるだけだと思う。僕らは消極的な加害者であることを自覚しなくちゃいけない。自覚したうえで、どう行動するかを考えなくちゃいけない。 …………  作品に対する自負を進行形で持たないのはどうかと思う。僕も僕自身の作品を、現在進行形ではつねに最良であると自負するし、自負しない程度の生ぬるい覚悟で挑みたくはない。 …………  

          複合パルス