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推しのいる日々ーその17 初めての空港ファッション

 この一週間の私は概ね幸せであった。推しがどこで何をしているのかが、逐一手に取るように分かったからだ。カムバックの時期でもないのにそんなことになったのは、今月彼が公のお仕事で海外に出張したからだった。

 私の推しであるK君☆(仮名)は人気K-POPボーイズグループの一員なのだが、グループは先日お国から「未来世代と文化に向けた大統領特別使節」に任命され、メンバー全員が外交官旅券を手にしてNYへと向かったのだった。

 NYでのK君☆の活躍(なんて素晴らしい響き!)については別途感想を書きたいと思っているが、今回は「空港ファッション」の話をしよう。

 「空港ファッション」というのはどうやらK-POP独特の用語らしいのだけれど、要するに出国の際の芸能人のプライベートな服装・持ち物等々を指している。ファンとしては彼らのファッションセンスや好み・関心、お気に入りのブランドを知る絶好の機会である。

 彼らはパンデミックになって以来、ずっと国内に留まっていた。出国は一年半ぶりのことだという。私が彼らのグループを知ったのは約一年前だから、私にとって今回が初めて見る空港ファッションというわけだ。

 K君☆らのグループは「お忍びで」出発予定だと伝えられていたが、そこは韓国マスコミの皆様も抜かりがない。私もそのおこぼれで彼らの空港ファッションを見ることができた。まったくもってインターネット様様である。

 仁川空港に姿を見せたK君☆は白いTシャツ(彼のお気に入りのブランドの一つでロゴがハートマークの上に描かれていた)に薄い色目のジップアップのデニムパーカーにショートパンツ、頭にはキャップをかぶり、お気に入りの例のハイブランドの小型のバックを肩からかけた姿だった。

 口元には白いマスクの上からさらに黒いマスク(Off-Whiteというブランドのもので、白いイラストがついている)をしていて、見えているのは前髪と目元だけ。それにしてはなんてつぶらで優しい瞳だこと、と私は一人でニンマリする。右手を上げてファンの歓声に応えているらしい姿は、やはりワールドスターだ。

 素敵なピンクの髪がキャップに隠れてほとんど見えないのは残念だが、プライベートファッションの彼はほぼ100%帽子をかぶっているのでこれは仕方あるまい。(そうでないと困るくらい最近の彼の髪色はよく目立つ、あれでは彼の好きなタイプのファッションに合わせるのが難しいだろう)

 そして、Twitterお衣装探索班の方々は私がいくら探しても見つけられなかった彼の全身写真をどこからか引っ張り出してきていた。足元は白に二本線が入ったソックス(ショートパンツの裾も二本線が入っているのでここをお揃いにしてるのがこのファッションのポイントだろうか)、靴はバッグと同じハイブランド製の黒のスニーカーであったらしい。

 実はデニムのパーカーもハイブランドのもので、これはメンバーのN君のパンツとセットアップになっていたようだ。N君は「お金はK君☆が払った」とコメントしていたがこれはさすがに冗談だろう。

 さらに、SNSを通じてK君☆の熱心なファンの皆様が教えてくださったのは、彼が今回履いていたショートパンツは以前、彼がソロ曲のMVを撮影するために一人でLAに旅立った時に履いていたのと同じものだということだった。「分かる人には分かる」そういう服を選んでくるあたりが彼の出国への前向きな気持ちの表現であり、同時にファンサービスなんだろうな。本当にいい子だ。

 K君☆のファションは想像していほど奇抜なものではなかった(以前の空港ファッションはもっと派手派手なのが結構あったことはリサーチ済み) これは公のお仕事での出張旅行だからなのかな、などと思う。

 しかもこの日は他のメンバーも皆同じ例のハイブランドを着ていたから、これが本当に「空港ファッション」と呼んで良いものなのかについては若干の疑問が残るところではあった。(もしかしたら某ハイブランドさんによるご提供アイテムだったのかもしれない)

 K君☆が「自分の好み」を明らかに発揮していたと言えるのは、出国時より帰国の時のお洋服の方だった。

 NYから仁川空港に到着した彼はKAWSのイラスト(彼のお気に入りだ)の入ったTシャツ、明るいグレーのコットンブレザーとハーフパンツのセットアップ(後で知ったがこのブレザーの裏地もKAWSのイラストがプリントされていたらしい)、頭には黒のニット帽という姿だった。足元はやっぱりハイブランドのスニーカーである。

 手には手持ちの小さなバッグと例のブランドの紙袋を下げていた。あらら、まさか免税店で何かお買い上げになられたのかしら。

 お疲れなのか表情が固くて目つきがちょっと鋭くて緊張している感じ。でも、こういう時の方がK君☆という青年をよりリアルな存在として感じられる。背が高くてお顔のすっきりした年齢相応の若者、私はそういう彼の姿も好きだったりする。

 そして、やはり熱心なファンの皆様は凄い。すでに翌日には彼が着ていたのと同じTシャツを購入したと報告している人(日本の方です)をTwitterでお見かけした。ブランドはコム・デ・ギャルソンで実はこのTシャツリバーシブルであるという。日本のブランドだからね。某ハイブランドよりは手に入れやすかろう。

 でもコム・デ・ギャルソンからKAWSのお洋服が出てるなんて知らなかったよ。K君☆はいったいそれをどうやって知り、このパンデミックの最中、どのようにそのおしゃれなお洋服を購入しているのだろう。彼らにも宝塚のおばさまみたいなお金持ちの支援者がついていて、好きな洋服をなんでも買ってくれたりするんだろうか?

 いや、事務所の方針からするとそれはなさそうな気がする。それにK君☆自身が大抵のファンよりずっと大金持ちだったよ、忘れてた。ああ、でも新米ファンである私にはまだ知らないことが沢山あるのに違いない。私はもっともっと知りたい。彼が何を思い、どう暮らしているのかを。

 愛する推しK君☆が無事帰国して安堵した私は、彼の健康と幸せを祈りつつ今日もSNSとYoutubeを探索するのだ。彼をより深く知るために。(つづく)
 

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