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親と価値観がズレてくるのは悲しいことじゃない

結婚して実家を出てからもうすぐ10年になる。

わたしは転勤族なので、そのうちのほとんどを実家から離れたところで暮らしてきた。

必然的に会う回数が減るわけだけど、離れて暮らすうちに親と価値観が合わないな、と思うことが増えてきたの。

もちろん親もわたしも成人したひとりの人間なので、価値観が違うのは当たり前なんだけど、一緒に暮らしていた時よりもどんどん離れていってる気がしてね。

実家との距離が遠くなるほど、それが加速するような気さえする。

そうすると、実家に帰っても居心地の悪い思いをすることがあったり、自分の家の方が断然落ち着くなって感じがしてきて。

なんだか悲しく感じると同時に、自分がちょっと情のない人間なんじゃないかって思ったりもしていたんだ。

家族は選ぶものである

そんな思いをとりのぞいてくれたのが、幡野広志さんの『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』という本。

幡野さんは癌を宣告されたカメラマン。
(cakesで「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」という大人気な人生相談の連載をされているので、知っている方も多いと思う。)

彼と同じように癌を宣告された患者さんとその家族の関係を、インタビューしてまとめたのがこの本だ。

「苦しみたくない患者」と「悲しみたくない家族(親兄弟)」で思いが交錯し、親子関係に悩む人々の胸のうちがつづられている。

そんな関係に対して、幡野さんは、

家族とは「親子」の単位ではじまるものではなく、「夫婦」の単位からはじまるものなのだ。

とズバッと言い切る。

自分で選んだパートナーこそが家族の最小単位だと。

わたしは重い病気を患っているわけでもないし、親との関係が悪いわけでもない。

だけど、「自分で選んだ家族」という言葉に、ホッとした。

自分と親との価値観のズレに対して、悲しさとか、非情さは感じなくていいんだって思えたから。

わたしの居場所はいま一緒に暮らしている家族という感覚を肯定してもらえたから。

産み育ててくれた両親に感謝しつながりを大事に思う気持ちを持ちつつ、胸を張って自分で選んだ家族と生きていこう。

次の帰省はいつになるかわからないけれど、また居心地の悪さを感じてもそういうもんだと割り切れる気がするな。


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