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夏休みの宿題:連立方程式の作問

職場の先輩が、「中学生の息子が夏休みの宿題で、『この連立方程式を立式して解く文章題を作れ』っていう問題が出ているらしい」と言っていた。面白そうだ。やってみよう。

「一つ勝負をしないか」

彼はニヤリと笑った。面識はない。ただ、その挑発的な態度に、俺は受けて立とうと決心した。

「いいだろう」
「フッ。そうだ、それでいい。いい度胸じゃないか、ハハ」

俺たちは今、コンビニの缶ビール売り場の前にいる。俺がビールに手を伸ばそうとしたときに、彼が話しかけてきたというわけだ。彼は話を続けた。

「ルールは簡単だ。俺とお前とで、毎日缶ビールを買う。本数に制限はないが、毎日同じ本数ずつ買い、買った分は当日中に飲み干すこと。そして、一日何本買うかは互いに秘密だ。もちろん、二日酔い中は休むこと」
「そんなもの、俺の勝ちに決まっている」
「勝負は3日後だ。3日後の深夜、この店で待ち合わせよう。そうだ、俺は井上だ」
「俺は九条」

俺はビールが好きだ。ビールさえあれば何もいらない。こんな俺に、こんな勝負を仕掛けてきた時点で、彼の運の尽きだ。俺はすぐに承諾し、彼に見られないようにビールを買い、店を出た。

勝ちたくて、少し多めに買ってきた。いつもの倍くらいだろうか。その日は順調に飲み進め、床に就いた。

翌朝、俺はあまりの不快さに目が覚めた。二日酔いだ。その日は悔しいが1回休み、翌日また初日と同数のビールを買って、飲み干した。

そして勝負の日がやってきた。またも二日酔いだった俺は、ふらふらとコンビニへ赴いた。既に着いていた彼もまた、グロッキーだった。

レフェリーはコンビニ店員だ。彼女は告げた。

「お二人が購入されたビールの本数の合計は、103本です。井上様は3日連続で購入されましたが、九条様は2日でした。井上様の勝ちです」

――この俺が負けた、だと。涙が出てきた。しかし、これで引き下がれる俺じゃない。

「たった3日で何が分かる。1か月勝負だ」
「フフフ、そんなもの、差が開くだけだぞ。いいのか」

そして勝負の1か月が始まった。二日酔いとの戦いだった。俺はそれでも、1か月のうちに9日は飲むことができた。

そして結果発表。

「井上様は、たった2日だけでした。二日酔いがよほどひどかったのですね。一方の九条様は全部で9日で、勝利。2回戦でお二人の飲んだ本数の差は、14本でした」

勝ったぞ。嬉しい。

あれ、ところで、彼と俺は結局一日当たり何本ずつ飲んだんだ?

(文字数:1000字。暇を持て余しているようでしたら、解いてみてくださいね。ちなみに、8月29日は私の誕生日です。)

(もっと暇を持て余している方へ。行列で解いた場合の解答例です。よほどの暇がなければ、こんなことしません。)


……決して無駄にはしません……! だから、だから……!