見出し画像

大会レポート⑤ 交流戦 帝京OB対高岡第一OB

 甲子園シートノック、記念セレモニー、そして特別試合と盛りだくさんだった阪神甲子園球場での感動の一日を終え、翌日の11月30日からは兵庫県内の5会場にて参加チームによる交流戦が始まりました。
 この日交流戦が行われる4会場で、最も早く試合が始まったのは高砂市野球場での一戦。帝京高校OB(東東京)と高岡第一高校OB(富山)の試合が9:00にプレイボールとなりました。

 高砂市野球場は兵庫県中南部の高砂市に位置する球場。広さが両翼91.2m、センター120mとなっています。
 高砂市野球場の最大の特徴として、全国的にも珍しい手動式スコアボードであることが挙げられます。制限時間が設けられているため出場選手が目まぐるしく代わる本大会ですが、運営メンバーの奮闘もありスコアボードには手書きの選手名が掲出されていました。

高砂市野球場の手動式スコアボード

 先攻は三塁側の帝京、横浜DeNAベイスターズの山崎康晃選手など数多くのプロ野球選手を輩出している名門校ですが、甲子園への出場は平成23年(2011年)の夏を最後に遠ざかっていました。前日には2020年当時の監督である前田三夫前監督が甲子園に駆け付け、選手たちへ鋭いノックを打っていました。
 後攻は一塁側の高岡第一、直近の甲子園出場は平成12年(2000年)の春の選抜、夏の甲子園は昭和56年(1981年)まで遡ります。ALL IS WELL(きっとうまくいく)というスローガンのもと、39年ぶりの夏の富山大会優勝を成し遂げました。

 両チームのスターティングラインナップは以下の通りです。
 帝京は優勝した東東京大会と同様、新垣選手、加田選手、小松選手の3人がクリーンナップに並びました。対する高岡第一は当時チームで意識していた「繋ぐ打線」がこの試合でも発揮されるかに注目です。

 1回表、まずマウンドに上がったのは高岡第一の田中誠央投手。独自大会では5試合で計32イニングを投げ、イニング数を上回る34奪三振を記録しました。
 決勝の石動戦では9回を完封し、11奪三振。胴上げ投手となりました。

 試合開始のサイレンが鳴り響く中、帝京の先頭打者、朝倉仁哉選手が左バッターボックスに入ります。
 朝倉選手は際どいボール球を見極める選球眼を見せるなどして迎えたカウント2-2からの5球目。サードへのゴロで朝倉選手は土まみれになりながら一塁へ駆け込む熱いプレーを見せますが、惜しくもアウトとなってしまいます。

↓朝倉選手のインタビューはこちらから!

 続く2番の御代川健人選手、さらに当時のキャプテンで4番の加田拓哉選手がともに内野安打で出塁し、二死一三塁と先制のチャンスを作ります。
 ここで打席には5番の小松涼馬選手。カウント1-0からの2球目を振り抜き打球はライトへ。これにライトの舟木陸人選手がダイビングキャッチを試みますが、惜しくもわずかに届かず。この間にランナー2人が生還し、打った小松選手も三塁へ。タイムリースリーベースで帝京が2点を先制します。

 その裏、帝京のマウンドには武者倫太郎投手が上がりました。独自大会決勝の関東一高戦では1点ビハインドの9回から登板して3イニングを無失点に抑え、チームのサヨナラ勝利を呼び込む力投を見せました。

帝京の先発の武者倫太郎投手

 追いつきたい高岡第一は1番の大場祐貴選手が打席へ。叩きつけるバッティングでセカンドへの内野安打となり、先頭が出塁します。

高岡第一の1番 大場祐貴選手

 大場選手に続きたい高岡第一打線でしたが、最速148km/h右腕の武者投手が立ちはだかります。力強いストレートと鋭く曲がる変化球の前に打ち取られツーアウトとなります。
 武者投手のピッチングに帝京野手陣も応えます。一塁ランナーの大場選手がスタートをきりますが、キャッチャーの新垣熙博選手が二塁へのストライク送球でアウトに。この回の得点は許しませんでした。

 2回表、マウンドの田中投手は先頭の出塁を許したものの、そこから三者連続三振でこの回を無失点に抑えます。独自大会奪三振率9.56を誇る高岡第一のドクターKは健在のようです。

高岡第一の先発の田中誠央投手

 そんな田中投手を援護したい高岡第一打線はその裏、先頭の清水琉世選手がセンター前へのヒットで出塁します。
 こちらの清水選手、前日の甲子園でのシートノック中の場内アナウンスにて、10月に第一子が誕生したことが明かされました。大変おめでたい話題に、甲子園球場は拍手に包まれていました。

高岡第一の4番 清水琉世選手

 続く長井隆輔選手もヒットで出塁し、得点圏にランナーを進め、同点のランナーも出塁します。
 一死一三塁となってから、7番飯田浩大選手の打球はライト前に落ちるタイムリーヒットに。1点差へと詰め寄ると、さらにバッテリーエラーの間にランナーが1人還り同点に追いつきます。
 8番の光岡拓真選手が四球を選んで再び一死一三塁とすると、9番の舟木陸人選手が一二塁間を破るタイムリーヒットで逆転に成功します。

 しかし帝京も堅い守りを見せます。ライトの御代川選手が三塁への好返球で、一気に三塁を狙った一塁ランナーをアウトに仕留めます。
 さらに次の打席で飛び出していた一塁ランナーを冷静にアウトにしてチェンジ。これ以上の得点は与えません。

2回裏 三塁を狙ったランナーを帝京のライト御代川健人選手の好返球でアウトに仕留める

 追いかける展開となった帝京は3回、一死から3番の新垣選手が打席に入ります。こちらの新垣選手は沖縄出身。新垣選手らが入学したタイミングで私営の寮が完成し、全国各地の選手が帝京高校に入学してくるようになりました。
 その新垣選手の打球はレフト後方への大きなフライに。レフトも懸命に背走し追いかけますが、惜しくも届かず。ツーベースヒットとなりました。

帝京の3番 新垣熙博選手

 二死となってから打席に立つのは、先程の打席で先制となる2点タイムリースリーベースを放った小松選手。
 ファーストストライクを振り抜くと、打球は第一打席と同じくライト方向へ。打球はライトの頭を越え、打った小松選手は快足を飛ばして三塁へ。小松選手の2打席連続となるタイムリースリーベースヒットで帝京がすぐさま同点に追いつきました。

同点となるタイムリーを放ちベンチへ拳を掲げる小松涼馬選手

 なおも帝京の勝ち越しのチャンスでしたが、6番の武者投手が三振に倒れてしまい、勝ち越しとはなりませんでした。
 この回で降板した田中投手は3回を投げて5奪三振。イニングを上回る奪三振を記録しました。

 3回裏、帝京はこの回からバッテリーが代わりました。マウンドにはサウスポーの後藤光希投手、キャッチャーには橋本太喜選手が入りました。
 1番から始まる好打順の高岡第一は後藤投手の代わり端を攻め、ヒットと2つの四球で無死満塁のチャンスを作ります。
 ここで4番の清水選手、5番の長井選手、6番の石野敬真選手の三者連続となるタイムリーで一気に4点を獲得して勝ち越します。

高岡第一の6番 石野敬真選手

↓石野選手のインタビューはこちらから!

 再び追いかける展開となった帝京は4回、先頭の小山勝己選手の打席。内角低めのボールをすくい上げた打球は、ぐんぐんと伸びてゆきレフトスタンドへ。大会第1号となるソロホームランが生まれました。

大会第1号となるホームランを放った小山勝己選手

 その後は両チームともに走者を出すも得点には至らず。5回裏の高岡第一の攻撃の途中で制限時間の1時間30分に達したため試合終了。4-7で高岡第一の勝利となりました。

 両チームともに9安打を放ち乱打戦となったこの試合、独自大会でも平均得点7点台だったという両チームの打線の強力さが見られる試合となりました。
 またホームランを打った小山選手が高岡第一の選手とハイタッチを交わすなど、真剣勝負の中にもあの夏を戦い抜いた仲間との交流が見られる試合でした。

試合後 ユニフォームを交換して記念写真を撮る選手たち

 両チームの選手成績は以下の通りです。

文:二瓶祐綺
写真:あの夏を取り戻せ実行委員会


プロジェクト公式サイト:https://www.re2020.website/ 
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/remember__2020
公式Instagram:https://www.instagram.com/remember__2020/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@2020koshien 
公式YouTube:https://www.youtube.com/@anonatsu2020

いいなと思ったら応援しよう!