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シャッター街のおもちゃ屋さんが潰れないわけ

私が住んでいる街は、栃木県でも東北地方と勘違いされるほど地方の街。
例にもれず駅前でもシャッター街と見て取れる中、私が子供のころから続くおもちゃ屋さんは今も健在です。

事務代行のお仕事をする中で、その理由がなんとなく分かりました。

ある日。
開店して1年も経たない店舗へ、キャッシュレス化を勧めた時の話しです。
お店は今風の内装で、若者向けのおしゃれできれいな印象でした。
店主も若く、おしゃれでいらしたので、開店したばかりで手がまわっていないのだろう、と思い、キャッシュレス化の資料をお持ちしました。
「端末設置が国の補助で無料ですので、早めに申請したほうがいいですよ。」と、概要の説明をしたところ、思いもよらない返答が返ってきました。

「うちはいいよ。ここは田舎だし、周りもやってないし。」
その時点で私は返答に困ってしまったのですが、
今後はキャッシュレス化が進むこと、ポイント還元事業があるので、消費者はそちらへ流れることが予想される事。
一つ一つ丁寧に説明しました。

「よく分からないし、今まで現金で大丈夫だったからいいや。周りがはじめたら考えるよ。」
疑問1. 今まで大丈夫だから今後も大丈夫と思う根拠は?
疑問2. 周りが導入した後では遅いのでは?
ふと浮かんだ疑問はとりあえず飲み込み、私は店主の続く言葉を待ちました。

「そういえば、駅前のおもちゃ屋さんは始めたみたいだね。子供連れていったけど、なにしてるのか分からなかったよ。現金のままでも大丈夫だよね?」

その後もしきりに続けます。
「今やらなくても大丈夫だよね?」
「やらなくちゃだめ?」
「でも田舎だし…」
「そのうちで大丈夫だよね?」
店主は私に、『キャッシュレス化しなくて大丈夫ですよ。現金のままでもお客さんは増えます。この辺りは田舎だから関係ありません。』と言わせたいのです。

正直、少し面倒になり、
『キャッシュレスを導入しようと思った時に、すぐに行動できるよう情報を集めておけばいいんじゃないですか?』
という結論で締めました。
その後も『キャッシュレス化しなくていい』の言葉を欲しがる店主に引き留められましたが、生産性のない話に時間のムダを感じてしまった私は早々に引き上げたのです。

店主の言葉の中で、「駅前のおもちゃ屋さんは入れた」というワードだけが私の心に残りました。
そのおもちゃ屋さんは、私が生まれる前からあるのでは、というくらい古くて汚い店舗です。
周りは潰れた元個人店舗跡が連なり、ひっそりと営業を続けていました。

『あのおもちゃ屋さんはもうキャッシュレスにしたんだ…。さすがだな…。』

見た目にこだわらず、時代に合わせ変化していく。
消費者のニーズや先の予測を敏感に感じ、柔軟に対応する。
「できない」「わからない」「田舎だから」
言い訳を並べるのではなく、キャッシュレス化が必要だから導入する。

今はレジ打ちとキャッシュレス端末の二重で処理しているようですが、それも今後時代に合わせ変化するでしょう。

個人事業主のほとんどは、赤字経営で事業を断念します。
シャッター街にあって潰れないおもちゃ屋さんには、潰れない理由があるのだな。と感じました。


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