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【イベントレポート】オープンな"継業"とは?その現在地を語る

「継業、事業承継に興味があるから、具体的に知りたい」
「最近地域のお店の閉店や廃業が目立ってきてなんとかしたい」

地域やまちづくりに関わる中で、このように思っている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回、地域と人を結ぶマガジン「TURNS(ターンズ)」とクラウド継業プラットフォーム「relay(リレイ)」が連携し、継業に関するイベントを開催しました。

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このnoteはイベントのレポートです。参加できなかった方、文字で読みたいところだけ読みたい方はぜひご覧ください!

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【モデレーター】TURNSプロデューサー・堀口 正裕さん
(株)第一プログレス常務取締役。雑誌「LiVES」「カメラ日和」「tocotoco」等の創刊に尽力。2012年6月、日本を地方から元気にしたい、地方暮らしの素晴らしさを多くの若者に知って欲しいとの思いから「TURNS」を企画、 創刊。「TURNSカフェ」や「TURNSツアー」といった、地域と若者をつなぐ新しい形式のイベントを展開。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす為のヒントを発信している。

【relay代表・齋藤隆太より】継業の現状について

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relay代表・齋藤 隆太
株式会社ライトライト代表取締役。法政大学卒業後、株式会社USENにて1年半有線放送やweb商材の提案営業職として従事。その後、同僚に誘われサーチフィールド創業に参画。「地域×クラウドファンディング FAAVO(ファーボ)」立ち上げて、株式会社CAMPFIREに事業譲渡。望まない廃業を減らすために、クラウド継業プラットフォーム「relay」を立ち上げ。

ー そもそも継業とは?

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齋藤:weblioを引いたところ、「親族や従業員以外の繋がりが無い第三者に事業やその経営基盤を引き継ぐこと」とありました。シンクタンク・JC総研では、「農村にあるなりわいやその基盤を引き継ぐこと」という定義をしています。

事業承継と似たような言葉であるものの、「継業」はより規模の小さい事業承継と言ったニュアンスを含んだ言葉なんじゃないかなと。事業に関わらず、加工品やブランドなどの引き継ぎも継業に当たるのではないでしょうか。

ー 継業に関するサービスをはじめた理由

齋藤:まず継業を取り巻く社会情勢について。現在、年間約4万件の事業者が休廃業・解散していると言われています。コロナ禍の影響で、今後5万件を突破するという見方もあります。

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齋藤:でも休廃業・解散している事業者だから、必ずしも事業が上手く行っていないということでもないんです。休廃業・解散した事業者の約6割が黒字で、年齢層は60〜70代が非常に多いと言われています。

このようなデータから、仮に良い事業であったとしても、高齢化や後継者の不在によって休廃業・解散を余儀なくされてる事業者が多いという見方がされています。

ただ、データで見てもイメージがつかないですよね。肌感覚としては、こういう記事を見ることが増えているんじゃないかなと思っています。良く行くお店や地域の名店が潰れたという報道やニュースを目にすることが増えてきたと思いませんか?

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齋藤:自分の周りでもこういうニュースが増えてきて、「もっと早く知りたかった」と思うと同時に、「なんで事前に知ることができなかったんだろう?」という疑問が湧いてきました。調べていくと、継業を取り巻く構造的な課題があるんじゃないかなと思い始めたんです。

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【relay代表・齋藤隆太より】 オープンな継業について

ー 既存の継業支援について感じた課題

齋藤:既存の仲介業者は手数料をもとに動いています。手数料でビジネスを成り立たせるためには、事業の譲渡金額が大きいことが必要であるため、小規模な事業者の相談窓口は限定されているのが現状です。

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齋藤:小規模事業者の受け皿としては、国の事業承継・引き継ぎ支援センターというものがあります。しかし相談件数が多く、成約率が約8%と高止まりしているのが課題です。

民間でも、小規模事業者向けの仲介サービスを行っているところはあります。既存のサービスでは、会社名が分からないような財務情報「ノンネームシート」をもとに進めるマッチングが主流。

既存のやり方では数字以外の魅力や可能性が見えづらくなっています。

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齋藤:右のように、お店の情報がオープンになることで、引き継ぐ後継者も「引き継ぎ後にどんな取り組みができるだろう」と継業後の展開について、イメージしやすい。

クローズドな事業承継が合う事業者が居るものの、数字以外の魅力も大きい地域の小規模事業者にとっては、オープンな継業の方がマッチしているんじゃないかと思っています。

ー relayで取り組む、オープンな継業

齋藤:そこで2020年に立ち上げたrelayでは、記事を通して、どこの・誰が・どういう想いで取り組む事業かを完全にオープンにして、後継者を募集しています。

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齋藤:ただ、財務情報も完全オープンにするのははばかられるという方もいるため、財務情報のみ有料にしています。「引き継ぎを検討する」という本気度の高い人にのみ公開するのが狙いです。

relayを通してマッチングした、面白い事例があって。宮崎市内のバーの後継者募集をしたところ、宮崎県日南市で酒類の卸売を行う企業が後継者に名乗りを上げ、事業承継しました。

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齋藤:後継者としては飲食店を経営する方をイメージしていたんです。だけど卸売を行う会社という、意外な形でのマッチングが生まれて。情報をオープンにすることで継業の可能性がぐっと広がるんじゃないかと思っています。

今後はオープンな継業を通して、たくさんの巡り合いを生み出したい。日本全国で可能性のある事業が、新しい後継者によってリノベーションされる未来を実現したいです。

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【高原町役場・中武利仁さんより】relay ✕ 高原町の連携について

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高原町役場・中武 利仁さん
人口約8000人の、宮崎県・高原町の役場で商工業・観光を担当。relayと自治体が連携し、現地の後継者問題を解決するマッチングサイトの運営を行う「relay the local(リレイ ザ ローカル)」を推進。

ー何がきっかけで、relay the localに取り組んだのですか?

中武さん:FAAVO時代から、もともと齋藤さんと繋がりがあって、Facebookでrelayを立ち上げるという投稿を見かけました。それを見て、ピンと来て、これからのまちづくりはこれだ!と。その後、継業を中心にしたまちづくりができないかと町長に直談判しに行ったのがきっかけでした。

実際に連携を組んでからは3件の後継者を募集し、そのうち3件とも決まっていると。正直こんなに上手くいくと思っていなかったのですが、全国に広く公開することで、上手くマッチングを進めることができました。

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中武さん:今まで移住・定住の支援にも苦戦していたのですが、こんなに反響があって驚いています。

ー マッチングは難しいというイメージがあるのですが、進める中で気をつけていることはありますか?

中武さん:relayの特徴である、記事やストーリーを通して後継者を募集するやり方のおかげか、良い方からの応募が多いです。走りながらなのでこれから課題が見えてくることもあると思いますが、今の所大きな課題や気をつけていることはありませんね。

齋藤:中武さんともよく「神がかっている」という話を良くします(笑)記事で情報をオープンにすることと、財務情報を有料にしているので、すごく成約率を高く進められています。

また、マッチングに関して「決めつけないこと」は大切だなと。自分たちのイメージで後継者が決まりそう/決まらないを決めつけないことは意識しています。relayを通して、引き継ぐ人はどこかにきっといるんだなと感じるようになりました。

ー 掲載している件数は3件なものの、問い合わせは増えてるんですか?

中武さん:実際に成功した事例が出たことで「自分の知っている業者さんが引き継いだなら」と、問い合わせは増えていて、手応えを感じています。

「引き継ぐ」だけではなくて、継業を通した新しい事業の創造にも可能性を感じています。後継者が決まったパン屋さんの事例では、引き継ぐ方がパン屋さんと平行して、新しくカフェを始める計画もしたいというケースもありました。

【株式会社ランバーミル・伊藤陽生さん】 売り手から見る、オープンな継業の体験談 

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株式会社ランバーミル代表・伊藤 陽生さん
高千穂町出身。システム開発を行う傍ら、高千穂で「シェア型カフェ&バー 360」を運営。2021年3月にrelayを通して後継者を募集し、継業が成立。

ー伊藤さんはどんな事業の後継者を募集したんですか?

伊藤さん:今回relayを通して引き継いだのは、「シェア型カフェ&バー 360」です。高千穂町の中心にあって、誰でも1日店長になれるシェア型の店舗という形式を取っています。

はじめは自分で後継者を募集していたのですが、なかなか手が上がらず。最後にrelayで募集してみようと思い、掲載しました。

その後、隣町に実家があって、もともと看護師をされていた方が、relayの記事を知ってもらって、マッチングに至ったという。ご縁が繋がり、ありがたいなと思っています。

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伊藤さん:システム開発をする中での聖書のような本があって、その中のこの言葉がすごく好きで。後継者募集することを決めた背景にも、影響があると思います。

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ー 引き継ぎを決めた方はどんな想いで引き継がれるんですか?

伊藤さん:今の運営方法を引き継ぎながら、新しいスタイルにも挑戦する予定で、開業後に上手くいくかどうか、すごく不安だと思います。それでも、引き継ぎに向けて、店舗の改装なんかを頑張ってくれています。

ー この部分は守りながら引き継いでほしいというのは、募集の時点で伝えているんですか?

伊藤さん:そうですね。あとは、今まで関わってくださった方や地域の方を大切にしながら引き継いでほしい。ということも伝えています。

問い合わせも、記事を読んでくださった方から来るので、大切にしたい部分についてのすり合わせも、スムーズに進めることができました。

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ー すごく良い話ばかりのように聞こえますが、課題のようなものはあったんでしょうか?

伊藤さん:今回の引き継ぎとは別ですが、「継業」に抵抗のある方が年齢層が高い方を中心に、一定層いると思っています。地方には「家を売ることが恥」みたいな考え方を持っている人も居て、このようなイメージを持ってる方がまだまだ多いというのは心配です。

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中武さん:高原町も田舎ですから、まだ若いうちに事業を辞めるとネガティブな見方をされることもあります。ギリギリまで頑張った人には「もう限界だったもんね」という見方をされるのですが(笑)このような考え方が、継業をスムーズに進めていく上で、障壁にはなりそうです。

齋藤:実際にrelayを進めていく中で、「第三者に事業を渡すのが恥」という考え方は、意外に当事者は思っていないんじゃないかと。周りの人の噂話や会話から、そういうイメージが生まれてると感じています。

なので、当事者を中心に、継業のイメージをもっとポジティブなものにしていきたいですね。

ー 後継者の方とは現在どんなコミュニケーションを取っていますか?

伊藤さん:まだ決まったばかりなので、引き継ぎ完了に向けて伴走しているような形です。保健所の申請にどう行ったらいいのかというような部分もサポートしています。

引き継ぎ後は、今までは違う形で運営してくれそうなので、楽しみにしています。

ー 今後地域でいろんなことをやりたいという方にとって、継業というオプションによって、活動の幅がすごく広がりそうですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

relayやTURNSの取り組みに興味を持っていただけた方は、ぜひサイトもご覧ください。

▽TUNRS サイト

▽事業を引継ぎたい方はこちら

▽relayと一緒にオープンな継業を推進したいという方はこちら

▽自治体として継業に取り組みたい方はこちら


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