男装の麗人 (四家文子)。
四家文子の歌う「男装の麗人」。平野零児作詞、神戸道夫作曲で、此の歌は「婦人公論」に連載されていた村松梢風原作による同名小説の主題歌です。その題名は宝塚の男役を思わせますが、ここでの男装の麗人とは“東洋のマタハリ”と云う異名を持つスパイ、川島芳子を指します。明治39年に清朝王族の家に生まれた彼女は、8歳の時に川島浪速の養女となって日本人として育てられました。長じて松本高女に通っておりましたが、運命は彼女を放っておきませんでした。中退して大陸に渡り、短期間の政略結婚を経て、在華日本軍の士官と交際する様になると密使としての才覚を発揮する様になります。前後して彼女は断髪男装の上、諜報員に転じて満州事変前後に暗躍し、上海から愛新覚羅溥儀と夫妻を極秘に連れ出すなどの実績を挙げて、一躍その名前を轟かせ人気者となるのでした✨。
昭和7年、作家の松村梢風が川島宅にステイして取材を行い、これに基づいて婦人公論に連載されたのが「男装の麗人」であり、その主題歌として曲が書かれました。歌うのはアルト歌手でビクターの名花とも云うべき四家文子、作詞は作家で幾つか軍事小説を書いた平野零児、作曲の神戸道夫は吉田信の変名です。陰旋法のスロー・タンゴで書かれており、伴奏は当時のビクター流行歌に多かったサロン・スタイルの大人しめなサウンド。バイオリン、タンバリン、カスタネット。サックスなどがシックな音色を奏で、四家は上品かつ明瞭な歌声でマイクに向かいました。歌詞は女スパイ川島の颯爽とした姿を描いており、時代のヒロインだった事が窺えます。著作権は切れているので歌詞を載せましょう。
🎵横ちょ被りの、ハンティング 🎵女心を、戦いの
今日もズボンが、よく似合う 十九路軍の、陣営に
洒落た姿も、伊達じゃない 忍ぶ姿も、伊達じゃない
見せてやろうか、胸の傷 十字砲火を、駆け抜けて
乳房の下の 弾丸のあと 帰りゃダンスの、ジャズの中
如何に川島芳子が時のバトルヒロインだったかが分かる歌詞、それでいてるお淑やかなメロディと云うのも面白い組み合わせです😀。
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