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記録に登場するサタン閣下~悪魔サタンの実像に迫る~

 エデンの園でエバを欺き、策略でもって地の支配者アダムを自らの支配下に置き、地上の支配権を手に入れたサタン閣下。

 彼について、あなたはどんなイメージを描いているだろうか?

 地獄に住まう異形の魔物?
 サイコエンジェル?
 それとも……?

 今日はそんな、知られているようで知られていない彼の実像に迫ってみたいと思う。

 なお、閣下と敬称をつけているのは、すべての生き物に対してそれなりの敬意を払うべきであるという筆者のポリシーからである。
 決して悪魔崇拝者ではないが、まがりなりにも年長者であるので、呼び捨てもどうかと思った次第である。
 というか、そもそも「サタン」は反逆者を意味する呼び名であって、彼の本名ではない。

 本名は知られていない。


 彼がどのような性格でどのような雰囲気であるかは、実際に会った人でなければわからない。しかし、マスーディーの『The Meadows of Gold』に記録された逸話「悪魔の歌」に登場するシャイターン(=サタン)がなんともそれっぽく感じられるので、全文翻訳してみようと思う。

 マスーディーはストーリーテラーではなく記述者である。創作ではなく、見たこと聞いたことを書き留めた人物である。この逸話も、イシャーク・イブン・イブラヒム・アルマウシリという人物の語ったところを書き留めたという体をとっている。

 さほど長くはないので、ぜひ読んで雰囲気を味わっていただきたい。
 
 そのあとで、他の「これは閣下かな」と思われる逸話と、サタン閣下と会って話したことがあるという人の証言から、ひと(霊だけどね)としての閣下の実像に迫っていく。


 マスーディーの翻訳は、千年前という雰囲気を壊さないよう、直訳ではなく、格調高い文体と読みやすさの両立を心がけて翻訳を試みている。


 というわけで、この先は酒代をいただいております。




 それでは、さっそくはじめよう。

 時はアッバース朝のカリフ、ハ―ルーン・アル・ラシードの治世のこと……。


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