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「『彼女』だから補い合えた」ーSui&Kienインタビュー

少年と少女のようなSuiとKien。しかし、二人の佇まいに子供のような危うさはなく、彼女たちは自分の足で立ち、自らの意思で過ごす時間を共有しています。

二人の関わりを表すならば、「相手を好きになるほど、自分をもっと好きになる関係性」。素敵な響きだけれど、具体的にイメージするのは結構難しい。20分足らずのインタビューには、そんな関係性を知るためのヒントにあふれていました。

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スイ / Sui(写真右)
1991年・中国出身。愛のために日本に来た。武蔵野美術大学卒業後、現在はZUCCA MODEL MANAGEMENT(モデル事務所)でマネージャーとして働いている。面白半分で生きています。
Instagram:@suesuisu

キエン / Kien(写真左)
1994年・中国出身。自分探しのため日本への留学を機に、2013年に来日。現在は心理学を勉強している。独学で英語とフランス語も勉強中。フリーランスでモデルと日中通訳をやっています。
Instagram:@kienryuu


ー 二人の出会いや、どのくらい一緒にいるのか教えてもらえますか?

Sui : 私たちは同じ日本語学校で知り合いました。4年間くらい友達で、一昨年の夏頃に付き合い始めました。付き合ってからは1年半くらい経ってます。

Kien : 知り合って5、6年ですが、当時はお互いに彼女がいたので、あんまり話していなかった。

Sui : キエンはすっごいおしゃべりな人なんですけど、あの時はたぶん元カノが嫌がるから結構無口だったんです。ずっと元カノの隣に座って、緑の服を着ている人って印象でした。

Kien : そうだね。ほんとはいっぱい喋りたいんですけど、他の女の子と楽しそうに喋ったら「あんたその子に興味あるのか!」って言われちゃう。それがめんどくさいから外にいる時は黙ってる感じでした。
スイと付き合ってからは、とりあえず思うことをぱーって「私こう思うんだけど、どう思う?」って聞いたりしてる。すごい、なんでも話せる。口が止まらない。

日本と中国を比べてみて

ー アジアの国々では多様なジェンダーのあり方への理解が遅れているような印象があるのですが、日本と中国を比べてみてどう思いますか?

Sui : 同じアジアだから、日本と中国の違いはそんなにないと思います。親には隠したり、故郷の友達には隠したりってことが多くて、そこはやっぱり日本と同じ。ただ、私が昔上海にいた時は周りがゲイとかレズとか友達にカミングアウトしてて、「私はこういうセクシャリティですよ」って堂々としてた。

Kien : 私は日本に住んで、レズとか同性愛とか相手のアイデンティティに対して「嫌い」とか「嫌だ」とかネガティブなことは言わないんだと思いました。「ああ~」とか「了解した」とかで、みんな本音はそんなに言わないんですね。中国は「いいんじゃない」って言う時もあるけど、「気持ち悪い」とか直接言ってくる人もいて、結構はっきりしてる。

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ー 付き合う前と後で、お互いに何か新しい発見はありましたか?

Kien : 最近スイに、「キエンは私のことを愛してると思うんだけど、やっぱり自分のことを一番愛してるんじゃないかな」と言われたんですよ。愛より自由が一番大事みたいには見られてる。実際は両方大事って思ってるんです。でも、バランスは難しい。
私は幼稚園の頃から自分は女の子が好きってわかってたし、自分のアイデンティティに違和感を持ったこともそんなにない。あんまり恥ずかしがり屋ではなくて、自分の気持ちだけを重視していて、思うままに行動している。

Sui : 私はずっと男性と付き合ってて、彼女は3人しかいない。男だから、女だからではなくて、私の個性を受け入れてくれる人と一緒にいるのが一番好きになれますね。そうしたら、私も楽で何でも相手に話せるようになれます。キエンが一番そう感じられた人です。
キエンと付き合って、すごく自信を持つようになりました。もともとコンプレックスに思うことが多くて。子供の頃にいじめられたこともあったし、自分が病気で太ったことでちょっと自信がなくなったこともある。
今は自分の体をよく知ろうって思いながら、自分の体について発見している段階。好きなところがあったり、あんまり好きではないところもあるんですけど、キエンはいつも「可愛いよ、綺麗よベイビー!」みたいな感じで。適当だなって思うけど、すごく楽しくて。自分も「いいんじゃない?」って思いながら行動するようになったら、周りも「いいね!」って言ってくれて、自信を持つようになりました

Kien : あ、そういうことかあ。私、いいこと言ったね。

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理性と感情でちょうど補い合う関係性

ー 二人で付き合っていて難しいこととか、乗り越えたこととかありましたか?

Sui, Kien : あるよね。

Sui : ついこの間もディスカッションしてたんですけど、キエンが未来を考えずに今を楽しむってライフスタイルだから、行きたいところとかやりたいこととかはあるけど、未来についてのプランを立てない。私は本当にやりたいと思ったらプランを考えて実現できるように行動する。

Kien : スイは心配性だから。私はプランに沿っていけない人だからちょいちょい変わっちゃう。なので悔いのないように今を楽しむようにはしてる。
そんな私にスイは「実際に行動しない」っていつも言ってる。言われて初めて自分が今まで気づいてない自分に気づいたし、もう少し行動してみないといつまでもやりたいリストに入ったままになっちゃうって思いました。付き合ってからは色んなことを、自分が言ったことを実行してみることを意識しています。

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いいバランスですね。

Sui : どうやって二人を組み合わせるのかを今は考えてる(笑)。

Kien : でもスイちゃんは私と付き合ってからオープンになってる。前はカップルの写真はSNSに載せたりしなかったんですけど、今はバンバン載せてるんですよ。

Sui : なんか、相手が気にする場合もあるし、載せなくても自分が幸せだったらそれでいいと思ってた。でもなぜかキエンと付き合うといろいろ変わっちゃったんです(笑)。もしかしたらそれが本当の自分かもしれない

Kien : 理性(=スイ)と感情(=キエン)がちょうど補い合う感じだね。
今までは自分と同じような人間じゃないと話ができないと思ってたんですけど、今は意外と違う意見が聞けるようになったし、違う角度から見てる人と話ができて、楽しい。

「みんな考えすぎてる、迷いすぎてる」

なんだか二人はお互いのアイデンティティを理解して、受け入れて、すごくいい自信の出し方や生き方ができていると思います。周りにそういうことができてない人とか、まだちょっと難しい人とかいますか?

Sui, Kien : 結構います。

Sui : 前の職場の同期に言われたんですよ。「スイちゃんのこと羨ましい」って。「なんで?私は普通に生活してるだけだよ」って言ったら、自由に生活してる感じがすごく羨ましいって言われて、私のライフスタイルはみんなにとってそんなに珍しいことなんだって初めて気づいた。

Kien : その自由っていうのは、例えば上司に言われたことに対して違うと思ったら堂々と「違う」と言えるし、そういうところがたぶん羨ましいって言われたんだと思う。

Sui : 私の友達はみんな、たぶん考えすぎるところがあって。例えば私はジムに行きたいと思ったら翌日からジムに行くし、結構行動力があると思う。でもなんかみんな考えすぎてる、迷いすぎてると思いますね。行ったらどうなるのかな、行くとしたら服変えなきゃいけないかな、とかね。

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ー なるほど。じゃあ最後に自分のアイデンティティとか、リレーションシップについて悩んでる人にはどういうアドバイスをしたいですか?

Sui : 堂々としていいんですよ。堂々としすぎても大丈夫ですよって。

Kien : って私も言いたいですけど、そうは言ってもじゃあどうすれば?って疑問を持っちゃうから…アドバイスは難しいですね…
自分の軸でしか言えないですけど、自分の気持ちに素直に、短所も長所も受け入れて、自分という個性を受け入れること。私はそう思ってるから、他の人も同じように思ってくれたらいいな、と思います。

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コンプレックス意識を抱き、自らの理解を深めながらその意識を一つずつ克服してきたSuiさん。幼い頃から人との違いを受け入れ、今を悔いなく生きることで自らを愛し続けてきたKienさん。自分にはない視点や考え方を持つもの同士で過ごす時間が、新たな自分の一面を知るきっかけとなっているようです。

いつだって私たちは自分自身と向き合いながら「愛」「自由」「幸せ」ついて、答えの出ない問いを繰り返しています。コンプレックスが強い人も、自らを愛する気持ちが強い人も、自分の姿を強く意識している点では同じ。他人との違いを意識するからこそ、誰かの胸に無防備に飛び込む難しさに直面するのではないでしょうか。
互いの気持ちを想像しながら自分の思いを伝え合うSuiさんとKienさんの姿は、その難しさを乗り越えるための道を少しだけ開いてくれたような気がします。

たくさんの問いで溢れる日々を過ごす私たちは、もう少し語り合ってもいいのではないでしょうか。

「あなたはどう思いますか?」



Interview : Asako Tomotani
Writing : Maki Kinoshita
Editer:Yuri Abo

REINGは「自分との関係性を、大切に築く人」が集まる場をつくっています。好きなものを、自信を持って“好き“と表現できる場所。インタビューでは、自分自身と向き合いながら関係性を紡ぐ人たちの生き方を通じて、自分らしい“好き“を見つけるヒントをお届けしています。

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