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人件費でひも解くヘアサロン

【Chapter1/利益を見よ】

店舗ビジネスの場合、不安定な時代は売上「規模」より「利益」重視すべきだと思われます。先進国の中でも日本が特異とされているのは実は税金だけではなく、銀行の採点評価法です。

市場への影響度を評価に入れる意味では「売上重視」というのは実はすごく市場には意味あることで利点でした。
しかし、数百億規模の企業で営業利益1%など不安定要素があまりに大きく、
税金対策での赤字企業だろうと本当の赤字だろうと売上規模があれば評価するという図式は、もはや世界の金融業界では遺物になりつつあります。不安定な時代こそ「利益」、つまり投資に見合う回収ができる道筋をつくることが大切です。


【Chapter2-A/固定費率低下がフリーランスサロンの狙い】

その中で生まれたヘアサロンのビジネスモデルこそが安価なフリーランスサロンでした。集客を回せば人を集められて利益が出るうえ、赤字リスクを軽減できるビジネスモデルだったからです。
安価サロンなのに赤字を軽減?
そんな馬鹿な、とお思いの方もおられるかもしれません。

ヘアサロンで最も負担の大きい販管費はなんでしょうか?
皆さんもお分かりの通り、人件費です。
さらに社会保険などの負担も馬鹿になりません。

さらに、昇給などもあります。
教育にかける負担も馬鹿になりません。教えられる側よりも教える側の負担が大きく、アシスタントのモチベーション次第では中堅社員が辞める要因にもなります。
実のところ採用も困難で費用負担が大きい中で、こういったリスクを背負いながら、「自社で育成する形式の正社員サロン」は運営されています。

【Chapter2-B/新人という経営負担】

経営側からの景色と、従業員側からの景色が違うことは往々にしてありますが、ヘアサロンほど「数字意識」が両者で乖離している業界もないと私は感じています。

実は経営者は「人を育てる」という経営リスクで綱渡りしています。
ここでは「パワハラやモラハラ、労働時間の正当性」などの問題は置いておきます。話がややこしくなりますからのでご了承ください。

さて何がリスクなんだという話ですが店舗効率は、坪売上、一人当たり売上などで測られることが多いですが、従業員側は、坪売上的な発想=店舗売上で勝手な想像をしてしまいます。
「全然、給料上げてくれないな」「社長は従業員のこと考えていない」などです。

アシスタントの力で坪売上は向上しても、一人当たり売上においては確実に下がるのが新人という存在です。
一般企業でも新卒営業は2年目からやっと回収できるといわれていたことはご存知でしょうか。つまり属人ビジネスにおいて利益を追求したとき、給与による利益の分配を行う時点で一人当たりの売上の方が重要なのです。
※アパレルやテナントなどは坪売上的発想。

なのに、売上が下がっても「給料は払い続けねばならない」固定費なわけです。これは経営上の大きな負担です。


【Chapter2-C/他サロンで育成された人員を招くメリット】

他社で育った人員を招き入れる形式のサロンは、条件良く提示するだけでこの「新人による一人当たりの売上減」が軽減されます。

すでに育成の終わった人材の採用は、売上生産効率が良いため条件を上げても「新人割合が低い」ため一人当たり売上は高い試算になります。
そのため分配はより容易になってきます。
これまで育成に費やしてきた旧形体のサロンオーナーほど貢献度の高い社員へ基本給還元しているため予算の構造上、負担を軽減せずに追いつけこうとすれば赤字へまっしぐらです。

またフリーランスは新人分の負担軽減に加えて「売上がなければ、外注費(人件費)負担もない」変動費のため、赤字になっても地代家賃と広告費などの負担分だけとなります。
資金的余裕があれば、仮に赤字だったとしても持ちこたえることができます。固定費である人件費を、変動費である外注費に変えるメリットは、「売上で人件費に相当する外注費も上下すること」で売上が下がろうと人件費だけ払うような事態にはならずに済むメリットがあります。


【Chapter3/業界における懸念点】

しかし、育てるサロンが業界全体の負担を担って
倒産していくと「誰が育てるの?」という問題に必ず直面します。

・美容学校が卒業後デビューできるくらい意味のある教育に切り替えていく
・請負業者が出てくる
・自社で学校をやる
・メーカーが育成して取扱いサロンだけに紹介事業をやる
など選択肢はありますが、業界全体を見渡す視点がなく自社メリットばかりを追求するサロンばかりであれば市場自体には大した発展性はないかもしれません。
その場合は、これまで他サロンで育てた人材を受け入れる側だったサロンが育てる負担を担うことになります。
そうなると固定費負担は増していきます。実際には同じことを繰り返すだけです。

実をいうと私の好みの問題ですが、美容業界は数字の付け替えでの展開が目立っており、ビジネスモデルとしてあまり面白いとは感じていません。

むしろシェアサロンの方がビジネスとしての割り切り方が一線を画しており、面白い考え方だと思っています。
シェアサロンは働いていたサロンからお客様ごと持っていく前提でのみ成り立ちます。
まさしく他サロンの産んだ指名の多い美容師が、それを抱えてくるのを待っているおんぶに抱っこ事業です。
ここまで突き抜けていると清々しさすら感じます。
つまるところ他サロンからの人材流出を期待する業界全体の行きつく先は、新たな既得権益の発生やそういう奪い合いの展開です。
それが好ましいか否か、誰が合ってる間違っているなどよりもサロン経営者には業界全体を考えてほしいなと思うのが個人的な意見です。


【Chapter4-A/コロナ禍で明らかになった安価サロンの弱点】

安価=集客数の確保→フリーで稼ぎたいスタイリストの囲い込み
というのがフリーランスサロンにはよく見られる図式だと思われます。
立地、広告重視傾向、求人情報、異常な店舗展開速度など見ただけの理解ですが、私はそのように勝手に解釈しています。
間違ってたらご指摘お願いします。

この図式を真実とした場合は、大量に新規集客できてこそ成り立ちます。
人件費を変動費にしても、固定費には地代家賃があります。
集客をベースにしている以上は立地は駅前が必須のため家賃と広告負担は大きいだろうと思われます。
某集客媒体なら店舗当たり70万~/月とか?

つまり安価なのに集客できない状態になれば、高単価サロンより圧倒的に不利なのです。人件費は変動してくれても、それ以外の費用負担が重く乗ってきます。


【Chapter4-B/フリーランスサロンの価格】

ところが、これが倍の客単価だとどうでしょう。
もともと仮に5,000円と設定します。
最盛期が月間300名の新規とします。単純化のためリピーターを無視して150万円売上とします。
客数が落ち月間150名になれば半分の売上75万円になります。

しかし客単価が10,000円の場合、150万円です。
つまり客数が半分でも成り立つ設計であれば問題なく、
これが高単価サロン/リピーター重視が再評価されている理由です。

要するに、フリーランスサロンでも高価格帯になる仕組みがあれば、
客数は減ってもこれまで以上に収益化しやすくなるというわけです。
そのため今、集客力という一面だけではなく1メニュー専門などが注目を浴びているのではないか、という考察です。


【Chapter5/最後に】

ここからは本当どうでもいい私信です。興味なければスルーしてたもれ。

私は非難で人を集める方法を好みません。
正しいことであっても、伝え方ひとつで価値は地に落ちます。
また足を引っ張るような誹謗中傷も好みません。
なんでも否定的材料とみなさず相手の立場を理解し、尊重するところは尊重し、その中で事実関係だけを討論し、高めあっていける美容業界であってほしいなと願います。

実体験をたまーに書きますので、あまりアラートされず負担にならないはずです。サポートして頂けたら髪の毛が一本生えるエコ活動に繋がります。