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自由について考える~長男の自主社会科見学:桜丘中学校公開

8/31のワールドカフェにも参加してくださった、西郷校長の桜丘中学校の学校公開があると言うので、先日長男と一緒に見学に行ってきました。
自由について悩み考える小4の長男は、自ら「これは社会科見学だ」と言い、自主的に学校を休み桜丘中に行くことに決めました。
そんな長男の記録です。

シェアランの訪問記はこちらをご覧ください。

自由を求める長男

とにかくゲームが大好きな長男は、小学校の低学年の頃にゲームの時間に制限をかけられていた経験から、「自由」について強く意識し、これまでも何度も考えてきていました。

なぜ父ちゃんは自由にゲームができるのに、自分はできないのか。
なぜ自由を制限するルールが存在するのか。
あー自由になりたい!!!

今では、やるべきことを自律的に動けるというのもあり、ほとんどルールはないのだけれど、それでも学校には行かないといけないし、宿題はやらないといけないし、どうしても自由ではないような感じがするのか、「自由」という言葉にはすごく反応します。

「母ちゃんは自由になれたらどうする?」
ある日、そう聞かれ、私はこう答えました。
「うーん、きっと今と変わらないかなぁ。だって、家だって住みたい家に住めてるし、仕事だって好きな仕事ができてるし、自分が欲しいと思った家族もいてくれるし、全部自分で決めてられてるもん。大人って結構自由なんだよ。」
「えぇぇーー?そうなの?そうなのか・・・?そうなのかも・・・!」

ウワサの学校「桜丘中学校」

その日は、たまたまEテレのウワサの保護者会がテレビで流れてて、気が付いたら長男が食い入るように見ていました。
それは、校則も宿題もなくした、世田谷区立桜丘中学校の特集でした。
見ながら「こんなの信じられない」と唖然とする長男に、この校長先生に会ったことあるよ!と言うと、「俺も会ってみたい!」と言っていました。

そして、たまたま私が学校見学に行くことにしていた前日の夜、翌日の私の予定を聞かれ(普段は聞かれない)、「桜丘中に行くよ!あ!一緒に行く?」と聞いたら、じっくり考えた上で「うん。行こうかな。」と決断しました。

行く電車の中で、何で行きたいと思ったのか、校長に会ったら聞いてみたいことはあるのか、など質問をしてみました。
「本当かどうか信じられない」
「俺だったらずっとゲームばかりやる」
「なんでそんな学校をつくりたいと思ったのか?」
「自由についてよくわかるかも」
とのこと。
ほほう。どうなることやら。。。

実際の桜丘中の様子

まず、校長室の前の廊下で学ぶ子たちに会い、校長にも会い、「まずは見てみて、この子たちとも話してごらん」と言われた長男。一通り授業を見学しました。
廊下にいた子が教えてくれたように、1年生の教室はやや騒がしいけれど、2年3年と上がっていくにつれ、騒がしさが少しずつ減って、落ち着いた雰囲気になっていきます。
みんな本当に普通に勉強していて、特別な学校の見学に来たというより、なんかごく普通の中学生がただ勉強している様子を見ているだけのような、あまりに普通の空気。
その普通さに私はやや面食らうものの、長男はそんなことはお構いなしに各教室をのぞき、みんなの様子を確認していきます。

一通り見学した後、「誰もゲームしてなかった。」と。
ゲームをやっちゃいけないというルールはないのに、普通に真面目に勉強している姿に、信じられないといった様子。
そして、廊下で過ごしている子たち(Aくん、Bさん)に質問して、いろいろと話をすることになりました。

長男「この学校はルールがないと聞いてて、それならゲームだってやっていいのに、やらないのはなんでですか?」
Bさん「えー?ゲーム?別にいつでもやっていいと言われたら、今やらなくていいと思うのかなぁ?ゲームより面白いことがたくさんあるし。あと、これまでの経験から、学校はゲームするところじゃないって思ってるってのもあるかも。」
Aくん「そんなにゲームやりたいの?」
長男「うん。ずっとやってたい」
Aくん「ずっとやってると飽きちゃわない?」
長男「あー、前に夏休みにずっとやってたらちょっと飽きた。」
Bさん「それが1年とか2年とかずっとってなると、まぁやらなくていいかってなるんだよね」
長男「ルールは本当にないの?」
Aくん「え?別にあるよね?前にお菓子食べてたら怒られたから、お菓子は食べちゃダメだし。」
長男「おぉ!ルールがあった!」

そこで、私が少し口をはさみ、「この子は、自由がどういうことかみたいなことに興味があるみたいで…」と言ったら、
Bさん「めっちゃ哲学的~!難しいなぁ。。。」
私「2人は自由ってどういうことだと思う?」
Aくん「俺は、自分が幸せだと思う時が、一番自由な時だと思う」
Bさん「え!難しい~!私は、自由になると全部自分で責任を取ることになる。だから、自由にはその覚悟が必要だと思う。ルールがあった方が自分で考えなくていいから楽なんだけど。」
Aくん「君はどう思う?」
長男「えー、ずっとゲームができることかなぁ。」
Aくん「本当にゲームが好きなんだね!」
Bさん「今何年生?」
長男「4年」
Bさん「4年生なのに、自分から中学校を見に来て、どこに行こうかとか考えるなんてすごいね。」
Aくん「彼はゲームをずっとやりたいと言ってるけど、今4年生でいろんな中学を自分から見てるということで、彼は大丈夫です!」
と、最後には太鼓判を押されました(笑)

人間関係としてのルール・ピシッとしすぎないように

その後、西郷校長と直接いろいろとお話をさせていただきました。
そして長男から、
「ルールがないって聞いてたけど、さっき聞いたらお菓子を食べちゃダメってルールがあった!」と質問。

すると、西郷校長は
「別に学校としてのルールはないんだけどね。そういうのを嫌がる先生もいるんだよ。だからそういう先生の前では食べない。そういうことかな。人と人だからね。相手が嫌がることはしないってだけ。
時々、子どもたちが「校長はいいって言った!」と言ったりするんだけど、うちの先生たちは言うことは聞いてくれなくて、「校長がいいって言ってもダメだ!!」って言う(笑)。でも、そうやって、先生一人一人も個性があった方がおもしろくていいかなって思うんだ」と。

そして、特別支援の話にもなり、
「実は各クラスに数人は発達障害と言われる子たちがいて、各クラスに1人いるかいないかくらいは、知的障害と言われる子も混ざってる。でも、全然気が付かなかったでしょ?みんながピシッとしてないから、目立たないの。掃除もきれいにやりすぎるとピシっとしちゃうから、しすぎないようにしてる。全部ほどほどにするってところは、すごく気を付けてたりする。でも、そうしたほうが、居心地いいでしょ?」と。

それを聞いた長男は、持ってきたラムネを食べ始め、ソファの上で足を組み始め、ダラーンとし始めました。
大人たちの話が盛り上がっててつまらなかったのか、居心地がよかったのか、はたまた大人を試していたのか、そのあたりはわからないけれど、そのハートの強さに、私はやや苦笑いが止まらない感じでしたが、西郷校長は、もちろんそんな様子も全て普通に受け入れてくれ、なんというかもはや「愛」しか感じませんでした。

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校長室でラムネを食べたという思い出

帰宅後、特に長男に変わった様子はなく、元々学校は大好きなので、翌日も普通に学校に行き、普通に宿題をし、普通にゲームばかりの日々を送っています。今のところは中学校も家のすぐ近くにある公立中学校に行くと考えているようです。

でも、この日の帰り道では、自由には責任が伴うという話が一番心に残ったと話してくれ、家では自由にさせてくれてありがとうと感謝されました。
また、その自由も自分の自律によって守られているということが改めて実感できたのか、少し文句を言う率が下がったようにも感じます。そして、自律的に動くことも増えたような。気のせいかもしれないけれど。

この社会科見学が、今後の長男にどう影響を与えていくかはわからないけれど、校則がない桜丘中学という学校は確かに存在し、そこには廊下で勉強したりゲームを開発している子がいて、その子たちと「自由」について話をして、校長室でラムネを食べたという思い出は、きっといつかどこかのタイミングで花開き、彼の人生を豊かにしてくれるんだろうと思います。

次の学校公開は1月にあるようです。
私たちが行った日は、小学生は私たちだけだったけど、他の日は小学生も結構見に来ていたようです。学校選択制があるからってのもあるけれど、そうじゃなくても、興味がある子は行ってみてもいいかもです。

あまりの普通さに驚くかもしれないけれど、その「普通」は、たぶん今の普通ではないので。
そんな当たり前の普通の日が来ることを願って。

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