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HOW TO BUILD GUNDAMに強い衝撃を受けた少年たちはアラフィフになってもガンダムのリアルを追いかける。

■ニュータイプを夢見た少年

自分もいつかはニュータイプになれる。小学校六年生の頃にガンダムから受けたカルチャーショックは、アラフィフになった今振り返っても、ガンダムという作品が自分の人間形成に深い影響を与えていると断言できる。

ニュータイプの概念とは、「単なるエスパーではなく、全くの他人が阿吽の呼吸で、言葉を交わさなくても意思疎通が図れる夫婦の様に、互いを理解し合える能力」と解釈しているのであるが、この能力をもった人類の新世代が世の中を変えて行くべく生きていく、、それがガンダムという作品の根底に流れているコンセプトである。これに小学校6年生ながらに激しく共感をしたのを覚えている。

しかし、富野監督はその後の作品でその夢を次々と打ち砕いていく。ニュータイプは軍事に利用されて、そして世の中は全く変えられないという作品が延々と作られていく。時は流れ、小学校6年生でニュータイプになることを誓った少年も、気が付くとアラフィフのオールドタイプとなてしまい、妥協を積み重ねてきたサラリーマン人生にやはり世の中は簡単には変わらないと思いつつも、それでも未来を信じて次の世代に夢を託そうと、試行錯誤の毎日を送っている。

■HOW TO BUILD GUNDAMとは

ガンダムはそれまで勧善懲悪だった子供向けロボットアニメにリアルを吹き込んだという意味で、完全に新しい道を切り開いた作品なのであるが、その後40年も関連商品が売れ続ける日本固有の文化になるに至ったきっかけがあったのをご存じであろうか。

それがHOW TO BUILD GUNDAMという模型雑誌の別冊の誕生にある。ガンダムの作り手サイドが供給したものではない世界観が、ガンダムを単なるアニメ作品から文化にまで昇華させたきっかけになったのである。それは作り手が下敷きとして提供したリアル感の上で、新たな遊びを見出した若きモデラーたちの意欲的な作品群をまとめた雑誌別冊であった。SNSがない時代、このムーブメントは雑誌を通じて全国に広まったのである。

ガンダムはヒーローロボットではなく、モビルスーツという兵器だという作り手が設定した世界観を拡大解釈して、あたかもリアルに存在するifの世界観を紙面上に展開したのである。砂漠やジャングルを進むモビルスーツのジオラマ、モビルスーツをカットして内部のメカを見せるフルハッチオープンフィギュア、登場人物がアニメ劇中の登場前に乗っていたであろう機体をデザインしたフルスクラッチモデル。そんな至宝の作品群が収録された雑誌であった。これに私は完全にノックアウトされたのだが、私だけではなく、日本全国の多くの少年たちの心を奪ったのだと確信する。

この新しい世界観はやがて送り手サイドにも取り込まれモビルスーツバリエーション「MSV」として書籍上でまとめ上げられる。この流れがヒットしたからこそ、ガンダムは続編を作ることが出来たし、一つのビジネスとして40年もの長きにわたって成長しつづけることが出来たのである。

■ガンダム大地に立つ!

さて、当時多くの少年の心を奪ったと確信できる出来事があった。
なんと今年度、横浜の山下公園でガンダムが大地に立ったのである。しかも張りボテではなく、立ち上がり、そして天を指さすのである。

アニメファンの限られたムーブメントであったなら、送り手や作り手が仕掛けたところで現実世界にガンダムが立ち上がったりはしない。ガンダムは空想の兵器であり、宇宙空間ならまだしも、18mの巨体で地球上で歩かせるなんて非現実的である。アニメだからこそガンダムは地球に降り立ち砂漠やアマゾンの密林で縦横無尽に動き回るのである。一つのメーカーが請け負ったところで、ガンダムを立たせられる技術を持っている訳がないし、そもそも持っている必要性もない。常識的に考えて、ガンダムを立たせることは非現実的であり、かつその意味を説明することが難しい。

では何のためにガンダムは横浜に立ったのか?

それは正に、HOW TO BUILD GUNDAMなどを通じて、ガンダムのリアリティーに激しい衝撃を受けた少年たちが、日本中に数多くいたということであろうと思われる。そうではなかったら、日本のトップメーカーが何社も利害関係をいとわず参画して、1/1スケールガンダムを作って動かそうというマジメな遊びを進められる訳がないのである。

HOW TO BUILD GUNDAMの作品群を自分の手元に置いてみたい。そんな夢を持ち続けているアラフィフ世代は少なくないはずだと。そんな世代に向けて何か共感を覚えてもらえるようなコンテンツが出来上がればよいなと思いつつ、この「note」を始めてみることにした。

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