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【終わりは始まり】邪淫の蛇 夢幻快楽編~エピローグ~

 これまで出版してきた小説のラストシーンを紹介するコーナーです。


 第五回目は、匠芸社・シトラス文庫より発売された『邪淫の蛇 夢幻快楽編』(2023年12月22日発売)です。

作品紹介

 今宵もまた〝魔の夜〟が始まろうとしていた。
 品行方正をモットーに生きてきた高校の女教師・白木麗奈と、優等生で神秘的な美しさを持つ女学生・天沢瑠璃。
 二人のヒロインは夜な夜な教室に突如現れる、男性教師や男子学生たちの性の生贄となり、おぞましくも淫らなSEX拷問を受けていた。
 目隠し輪姦、馬跳び浣腸、一升瓶に詰められた浮浪者の腐敗ザーメンを子宮に流し込まれるなど、前編をはるかに上回る過激な調教の数々。
 そして、心とは裏腹にむごいことをされるほど感じてしまう、呪われた邪淫の血。
 鬼畜紳士&ドM淑女のみ必読! 
 郷愁の官能作家 柚木怜が描くエロティック・バイオレンス奇譚。


「陽子さん、ほんまは、分かっていたんでしょ?」
 必要最低限のことしか話さない尾崎紗香とは思えない質問をしてきた。
「……なにが?」
 とぼけてみた。
「麗奈さんは天沢瑠璃を殺すことなど出来ないって。だから、教えたんでしょ。あそこから抜け出す方法」
「……どうやろうな。まあ、うちがフラれたのは確かやな。紗香がこうやって、ちゃんといまも生きているんやから」
 ふふ、と笑い声がした。
「珍しい。紗香でも笑うときがあるんや」
「はい……こんな、いやらしい体に生まれて。あの降霊術のとき、これでやっと終わりにできると思ったのに。麗奈さんが天沢瑠璃を殺してくれへんから。私もなかなか勝手に死ねないじゃないですか。まあ、いつか麗奈さんが天沢瑠璃を殺してくれると信じて、その日がくるまでは生きていようかな、と思っているだけです」
 尾崎紗香は必要最低限の話はもう終わりとばかりに、「車に戻っています」と呟いた。あの頃の白木麗奈と同じ年になったいまの恋人の後ろ姿をちらりと見てから、関陽子はもう一度、黒緑の森に向き直った。
 麗奈、元気でな……。
 いまもあの森の中で若い女教師とひとりの女子生徒が二人だけで授業をしている楽しそうな光景を想像した。
 車に戻り、運転席に座ってシートベルトをした。エンジンをかけてギアを入れる。尾崎紗香がなぜか自分の手元をまじまじと見ていた。
「どうした?」
「いや、陽子さん、ずっとマニュアル車やけど……オートマチックにしないのかなぁ、と思って」
 必要最低限なことしか言わない尾崎紗香が不思議そうに聞いてきた。
 一瞬であったが助手席にいるのが白木麗奈に見えた。
 そうやった……そんなこともあったな。

 陽子先生は、オートマチックにしないんですか?

「あ、あほか……」
 こみあげる涙を堪えながら関陽子は笑った。
「え?」
 驚いた顔で見つめてきた尾崎紗香に向かって、関陽子は自分らしく男勝りに答えた。
「あんなもんはオモチャやで!」

『邪淫の蛇―白木麗奈の失踪事件』   完




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プロモーションビデオはこちらから。YouTubeチャンネル「ちづ姉さんのアトリエ」より

生朗読もあります。


著者プロフィール

柚木怜(ゆずき・れい)

京都出身、東京在住。1976年生まれ。
23歳の頃よりフリーライターとして、週刊誌を中心に記事を執筆。30歳の時、週刊大衆にて、初の官能小説『白衣の濡れ天使』を連載開始(のちに文庫化されて『惑わせ天使』と改題)。
おもに、昭和末期を舞台にしたノスタルジックで、年上女性の母性溢れる官能小説を手がける。
また、YouTubeチャンネル「ちづ姉さんのアトリエ」にて、作品を朗読配信中。

著書

『惑わせ天使』(双葉社)
『おまつり』(一篇「恋人つなぎ」 双葉社)
『ぬくもり』(一篇「リフレイン」 双葉社)
『初体験』(一篇「制服のシンデレラ」葉山れい名義 双葉社)
『明君のお母さんと僕』(匠芸社 電子書籍)
『お向かいさんは僕の先生』(匠芸社 電子書籍)
『キウイ基地ーポルノ女優と過ごした夏』(匠芸社 電子書籍)
『邪淫の蛇 女教師・白木麗奈の失踪事件 堕天調教編』(匠芸社 電子書籍)
『邪淫の蛇 夢幻快楽編』(匠芸社 電子書籍)
『姉枕』(匠芸社 電子書籍)
『郷愁ポルノ 僕らの五号機』(匠芸社 電子書籍)


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