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メトロノームのような僕ら。

――同じ台に乗せられたメトロノームのように、はじめはどれだけかみ合わない関係でも、時間をかければ似た者同士になっていくんですよね。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「時間と空間を共有する意義」というテーマで話していこうと思います。


📚メトロノームの共振


メトロノームが起こす「共振」という現象があります。

同じ台に乗せられたリズムの刻み方が違うメトロノーム2つ。台を揺らし続けると、いつの間にか針の動きがシンクロしていって、同じリズムを刻んでいる現象のことです。

これ僕めっちゃ好きなんです。この現象がそのまま人間関係においてもいえることだなあと思うからです。

同じ場所で同じ時間を過ごした者たちは、はじめどれだけそりがあわなくても共鳴し合える。互いに響き合い、認め合う仲になれるのです。


「呉越同舟」という言葉がありますね。呉の国の人と越の国の人が同じ船に乗り、たとえば嵐に見舞われたとき、領国は仲が悪いけれど船が沈まないように協力し合うはずだよねという意味。『孫子』の第十一遍「九地」に由来する言葉です。

現代では、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせることをも指すそうですが、時間と空間を共有したら打ち解け合えることは珍しくないですよね。というか、あらゆる関係が、時間と空間を共有するところから始まるじゃないですか。普遍的な原理だと思うのです。

同じ台に乗せられたメトロノームのように、はじめはどれだけかみ合わない関係でも、時間をかければ似た者同士になっていくんですよね。


📚第三者はとやかく言うな!


この前、吉本ばななさんの『キッチン』を読んだんですが、これがまあ面白いんだ。僕好みの作品。「名前のない関係」や「共同体とは何か」がテーマになっているんです。

『キッチン』には、名前のない関係の男女ふたりが登場します。みかげと雄一。とあるきっかけからみかげは雄一の家に住むことになるんですね。いわゆる居候というやつ。

これだけ聞いたら、やっぱり男女の関係を疑ってしまうわけですが、彼らは別にそういう関係ではありません。どちらかといえば、「家族」という関係に近い。でも、家族ともちょっと違う。そう、だから、名前のない関係なんです。

彼ら自身も、その名前も、距離感もちゃんとわかっていないくらいなんですが、確かなことはお互いがお互いを特別視していて、大切に思っているということです。

ただ、傍からみれば男女の関係のように見えるから、時に第三者との不和が生じてしまうわけです。周りの人から「おまえら、付き合ってるんじゃないの?」的な言葉をもらったりするわけです。


僕が第三者のみなさんに言いたいのは「君たちはみかげや雄一のことをちゃんと理解していないでしょ? 分かったような口をきかないの」ってこと。

みかげや雄一はひとつ屋根の下で一緒に過ごしてきた時間があるわけで、だからこそ築かれた関係があるわけです。友達でも恋人でも家族でもない、特別な関係が。それを、場外からとやかく詮索するのは危険で、自分の想像以上に相手を傷つけてしまうおそれがあると考えます。

さっきのメトロノームの話に戻ると、みかげと雄一のメトロノームは同じ台に乗っているわけです。だからこそ、波長が合うわけで、特別な関係を築くことができました。第三者のみなさんは同じ台に乗っていないんだから、自分が彼らを理解するには不十分な情報しか持ち合わせていないのです。


📚時間と空間を共有する意義


現実の世界でも同じような出来事は毎日のように起こっていて、正直仕方ないことではあるんだけれども、それでも僕は僕の周りで起こっているすれ違いの数は減らしたいと思っていて、気になった人と呑みにいっていろんな話を語り合う姿勢を持ち続けているんです。

もちろん僕はそれをやるべきだと思っていますが、というよりも人の話を聴くのが好きだからやっています。結局、どんなフィクションよりも人生の方が素晴らしい物語なんだから、人の話を聴くのはひとつの読書体験なのです。「なにその人生⁉」と思ったら、もう相手のことは好きになっちゃう。これからも頑張って!と思ってしまうし、また呑んで話を聴かせて!と思ってしまう。


話がそれましたが、飲みにいくでもいいし、どこかへ遊びに出かけるでもいいから、とにかく時間と空間を共有することが関係づくりのはじめの一歩です。

今やオンラインも選択肢のひとつとして確立しましたが、それでもやっぱり対面がいい。オンラインだと時間は共有できるけど、空間は共有できません。画面越しって、やっぱり距離を感じてしまう。やっぱりオフラインしか勝たんのです!

これからも時間と空間を共有することから逃げないで、オフラインを追求する意義を深めていきます。


書いていて思い出したんですが、一年以上前に書いた記事で、ビール会社のハイネケンのCMが面白いという話をしました。今回の内容はこの話にも通じるものがあるので、是非、覗いてみてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20230124 横山黎


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