You Are My Great Dad 【ショートストーリー】
機内食がやってくると、父は緊張した表情で周囲を伺いはじめた。青い目のCAに「オニク、サカナ?」と日本語で聞かれ、答える父も「サカナ、サカナ!」と片言になっている。
フライトは12時間。
「着くの昼だから、寝てなよ」そう伝えても、『これ1冊で話せる英語!』と書かれた本を父は閉じない。
入国審査に並ぶ頃には、父の本は折目だらけになっていた。ガラスの向こうに座る初老の男性が、手招きする。
「さいとしぃんぐ」父が固い笑顔でパスポートを渡す。審査官は厳しい表情で私達をじっと見てか