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池田智子 再始動インタビュー 「燃え尽きた」日々を経て辿り着いた「tiny_mou」と「walkin'」を語る

Shiggy Jr.の解散ライブから1年経って、ボーカルを務めていた池田智子が自身のレーベル「tiny_mou」の設立、そして新曲「walkin'」の発表という形で動き出しました。


本日はその池田さんの始動一発目の本格的なインタビューをお届けします。

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バンド解散から今に至るまでの心境の変化、そして新曲やこの先の活動についていろいろお話を伺ってきました。

ちなみに池田さんにはShiggy Jr.のインディー時代、世に出始めたタイミングから何度かインタビューをさせていただいてきました。

メジャーデビューの時のインタビューとか懐かしいですね。


あれから時間も経ち、活動形態も変わって、ここからどういう音楽を紡いでいくのか、というところで、非常に前向きな話をしていただきました。それではどうぞ。


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今のところはとても楽しくやっています

--池田さんにインタビューさせていただくのは『ALL ABOUT POP』(Shiggy Jr.のメジャー1stアルバム。2016年10月リリース)以来なんですよね。


「そんなに前になるんですね!そうかあ…」

--最後のライブの時にはご挨拶させていただきましたけど。

「あれも1年前か。時間が経つのは早いですね」


--ほんとですね。で、まずはその1年間についてお話をお聞きできればと。先日公開になったSENSAでのインタビューには「音楽以外のことをしていく選択肢もあった」というコメントもありましたが、バンド解散後はもう音楽をやらないかもしれないという状況にまでなっていたんですね。


「…あの直後はほんとに燃え尽きちゃっていて。音楽も聴けないし、ライブも行けない、そもそも何かをやりたいっていう気持ちがない、みたいな状況がしばらく続きました。せっかく時間ができたんだし旅行にでも行ってくれば?とかって言ってくれる人もいたんですけど、そういう意思とか欲求そのものが全くわいてこなくて」

--文字通り燃え尽きていたと。

「バンドを7年くらいやって、その間本当にバンドのことしか考えなかったし、「バンドのボーカル」としてしかいろいろな選択をしてこなかったから、それがなくなったときにほんとに空っぽになっちゃったんですよね。もし本気でやってなかったら「私はまだ本気出してない」とか言えたんですけど(笑)、間違いなくずっと全力でやってきたから…ここから先何ができるんだろう、っていうのが全然わからなくなってしまって。SNSもしばらく更新しなかったんですけど、それは「歌っていない自分」が何を発信すればいいのかわからなかったってもあるし、あとは「自分は純粋に何かがしたいのか、それとも誰かに温かい言葉をかけてもらってちやほやされたいだけなのか」みたいなことすら見えなくなっちゃったんですよね。そういう「そもそも」の話と向き合っている時間が長かったかな。最後のライブからしばらくはそんな状態でした」

--そこまで内省的なモードになったところから、改めて音楽活動を行うに至ったきっかけみたいなものはあるんでしょうか。

「明確にこれ!ってきっかけがあるわけじゃないんですけど…徐々に音楽も聴けるようになって、他のアーティストさんの曲を家で歌ってみて「やっぱり歌うの楽しいな」って思ったりしているうちに、他人の音楽活動に対してちょっと羨ましいみたいに感じる気持ちが出てきて。「まだそんなことを思うんだな」って自分で自分を観察したりしてたんですけど、じゃあそこから「また音楽やろう!」という感じにはすぐにはなれなかったんですよね。年齢のことをあまり言いたくはないんですけど、バンドを始めたころに比べるとやっぱりフットワークの軽さみたいなものが失われてるところもあって。ちょうどそのくらいからユキさん(mona records時代にShiggy Jr.を見出したユキタツヤ)とは「一人でやらないの?やるなら手伝うよ」「ありがとうございます、やってみたいかもしれないです」とかって話をしたりはしてたんですが、いざ一人になると「ほんとにできるのか?」みたいに思考が元に戻っちゃったり…」

--音楽に対する気持ちが復活してきた、じゃあまたやろう!みたいにスムーズには進まなかったですね。

「そうですね。そんな状況に自分がいる中で、社会はどんどんコロナ一色になっていって、SNSとかもどんどん緊迫した雰囲気になっていったじゃないですか。いろんなところでいろんな考え方がぶつかり合ってて…あの感じに触れたときに、「こういう世の中に対して自分は何ができるんだろう」って思ったんですよ。今、人に対して自分が何かあげられるものはあるんだろうか、って」

--それが音楽だったと。

「はい。だから「また音楽を始めたきっかけ」ということで強いて言うと、まず自分の中のぼんやりした気持ちをユキさんがフラットなスタンスで気長に受け止めてくれていたっていうのが大きくて、そのうえでコロナによる世の中の変化が最後の一押しになった、という感じです。昔だったら「今からやって何年やれるかな」とか「みんなの期待に応えられるかな」とかいろいろ考えたと思うんですけど、「この先世の中どうなるかわからないし、今やりたいんだから、一作だけで終わったとしてもいいからやってみよう」ってスイッチが入りました。緊急事態宣言が出るちょっと前くらいに%Cさんから今回の曲のデモをもらって、歌詞を初めて自分で書いて、曲が完成したのが6月あたまです。そこからは一気に加速したというか、こんなにいいものができたんだから絶対に納得できる形で出したい!って火がつきました。やりたいことがどんどん自分の中から出てくる感じはほんとに久しぶりで…バンドが終わってしばらくは、自分がただの「食べて寝るだけの物体」みたいになっちゃっていたから、自分の中にこういう気持ちが戻ってきたのはすごくうれしかったし、とにかく充実していました」

--ちなみに「tiny_mou」という自主レーベルで活動する、というのはどのタイミングから考えていたんですか?

「曲を作っているときから自分のレーベルでやってみたいっていうのはなんとなく思っていたんですけど、ある時「tiny_mou」って名前がポンと思い浮かんで。音もかわいいし意味もいいなって思って、そこから楽曲制作と並行してどういう形で活動していこうかっていうのを具体化していきました。さっき名前を挙げたユキさんには必要に応じて間に入ってもらったり人を紹介してもらったりという形でサポートいただいているんですけど、金銭的な支援を受けているわけでもないですし、収支の管理含めて基本的には何から何まで一人でやってます。たぶん、皆さんが思っている以上に「一人」です(笑)。その分いろんなことが自由にできますし、今のところはとても楽しくやっています」


このまま突き進んだら、自分の人生がつじつまの合わないものになっちゃう

--さっきお話しいただいた通り池田さんがShiggy Jr.というバンドに本気だったというのは、あのバンドが世の中に出ていくタイミングでいろいろご一緒させていただけたので自分なりにはよく理解できているつもりです。解散に関しては、男性メンバーからもお話を聞いて…あ、諸石さんは寝飛ばしていらっしゃらなかったですけど。

「(笑)」


--というのはさておき(笑)、それぞれの見え方があると思うのであくまでも「池田さんの視点で」という質問なんですが、あの解散について今振り返ってみてどういったことを感じますか。

「うーん…私は、やれることは本当に全部やったと思っていて。今振り返って未熟だったなと思うこととか、ここが足りなかったって反省することとかももちろんあるんですけど、常にその時のベストは尽くしていたと思うんです。きっとほかのメンバーもそうだったはずだし、その結果としての解散だったから、ある意味では必然というか…いや、その言い方もちょっと違いますね。後悔は全くないんですけど…なんだろうな、まだ言葉にするのが難しいです」

--改めて解散発表の時のステートメントを見たんですけど、あそこで語られていた「これまでの7年間、毎日の出来事についていくのに必死で置いてきぼりにしてきた気持ちが沢山あったことに気が付きました」っていうのは今回リリースされた「walkin’」の歌詞の内容ともリンクする部分があるなと思ったんですけど…


「そうですね」

---Shiggy Jr.というバンドが世の中的に注目されていく中で、「やりたいこと」と「役割としてやらないといけないこと」の折り合いをつけることが求められていたと思うんですけど、あのコメントにあったように「実はちょっと置いてきてしまったものがあったんじゃないか」ということを考えるようになったのはどういうところからなんでしょうか。

「うーんと…今思うと、この1年間っていうのは、時間の流れと気持ちの歩調を合わせるための期間だったんだなと思っていて。バンドに関わる人が増えていく中で、自分の意思がすべて通るわけじゃない、だけどメンバーの期待にもスタッフの期待にもファンの皆さんの期待にも応えたい、そのためにはどうすればいいんだろう?ってことばかりを考えているうちに、いつの間にか自分の気持ちっていうものがどこかにいっちゃってたんですよね。Shiggy Jr.としての時間が進んでいく中で、自分がどう思うか、どうしたいか、みたいなものが何年か前にポンって落としたままになってるなって気がついて。このまま突き進んだら、自分の人生がつじつまの合わないものになっちゃうから、今まで進めていたものをストップして、止まっていた方を前に動かそうと心に決めたんですけど」

--なるほど。

「自分がどうしたいかよりも、みんなを幸せにするにはどうしたらいいかを大事にする時間がすごく長かったなって。特に私たちは幸いにもいろんな方に期待していただきながらデビューしたので、その分「理想の状態」に追いつかなきゃ!っていう気持ちも強かったから…そういう中で、感情の前借りじゃないですけど、「ここで頑張ったらいつか報われる」って気持ちでやっているうちに、「もう持ってくる感情が足りないです、エネルギーないです」って枯渇する瞬間があって、そんな状態でステージに立つのは表現ということに対して不誠実だなって」

--難しいですね。バンドとして巻き込む人が増えていく、プロジェクトが大きくなるっていうのは傍から見ていると順風満帆なようにも思えますが…

「…いや、本来は良いことだと思うんです。それでうまくいっている方々だってたくさんいるわけだし。「マスに届ける」っていうのはそういうことも含めての実力なんだと思うし、その点でも私はすごく足りなかった、一生懸命やってたけどやっぱり未熟だったなって思います」

--これは個人的な感想なんですけど、池田さんも男子3人も、結果的に完全にインディペンデントな活動スタイルに落ち着いたじゃないですか。もともと明確なメジャー志向を持って世に打って出た皆さんが、今のような形に着地したことについては何というか、上手く言い表せない気持ちもあって。

「それはマイナスな印象を受けるってことですか?」

--いや、単にそう言い切れる話ではなくて…両面あるんですよね。それぞれが現時点でしっくりくるフォーマットを見つけられて良かったなっというのと、ここに至るまでにメジャーで活動する葛藤みたいなものがやっぱりあったのかなあって考えてしまう気持ちが混ざりあっている感じです。

「なるほど…それに関して明確に一つあるのは、「メジャーに行ったことが解散のきっかけになった」とかそういう話じゃないってことかな。…やっぱり、最終的には自分の人間力が足りなかったというのに尽きると思います。Shiggy Jr.での活動は夢のような経験をたくさんできたのと同時に、いろいろなことを学んだ時間でもありました」


「思ったことを思ったまま外に出す」ことを大事にしました

--ここからは今回の楽曲の話と未来の話をしたいんですけど、ソロ一発目の「walkin’」がこういう方向性になったのは正直ちょっと予想外でした。

「そうですよね…!」


--いわゆるオルタナティブR&Bとか、ちょっと浮遊感のあるヒップホップテイストの音だったり、あとはラップ調のフロウだったり、ああいう引き出しはもともと池田さんの中にあったものですか?

「徐々に音楽を聴けるようになっていったときに以前はそもそもああいうテイストの曲が好きだったのを思い出して、こういう曲を自分も制作出来たら素敵だなとなんて思いつつも「いや、自分の声や雰囲気には合わない…」って距離をとっていたんですけど、ここでもユキさんに「やりたいならやってみたらいいんじゃない?」って背中を押してもらって。それで%Cさんに今回の曲のデモを作ってもらったら、それがめちゃくちゃかっこよくて、これに歌をつけたい!って気持ちが一気に固まりました。あとは昔からフィッシュマンズとかが好きで、ああいうアッパーではないけれど気持ちが良くて身体に残る曲に自分がアプローチするならどうやるんだろう?って考えた結果としての今回の曲、って側面もあります」

--そういえば以前のインタビューで「フィッシュマンズやゆらゆら帝国が好きだったけど、自分の声ではどうしても歌えなくて…」みたいな話をされてましたよね。再度そこに向き合ったというか。

「そうですね、そんな感じです」

--SENSAのインタビューではルーツとしてフィッシュマンズと宇多田ヒカルの名前を出されていましたが、MVのティザーでも「Automatic」オマージュの動きがありましたね。

「そうなんです(笑)。画角的にこの動きかな?とかってやってみたら監督がそのまま使ってくれてました(笑)」

--ああいうフロウはShiggy Jr.時代のボーカルとはだいぶ違いますが、いざやってみていかがでしたか。

「自分ではすごく気に入ってます。私の声であの曲を歌いこなすにはどうしたらいいんだろうって考えて、単に歌うだけじゃなくてウィスパーっぽい表現を入れたり、声を重ねて録音したり、いろいろ工夫をしながら方向性を固めました」

--何かしら参考にしたアーティストや作品とかってありますか?

「どうだろうな…「今回のために」ってわけじゃないんですけど、前からラナ・デル・レイがすごく好きで。ああいう声色の変化とかはどこかで使ってみたいなって思ってたんですけど、そういうのがほんのり生きているような気がします。あと日本語ラップについては少し勉強しました。今日はラップについて学ぼう、みたいな日を設けて、「この曲は韻を踏んでないけどかっこいい」「この曲はラップだけど歌メロっぽい」とか分析して、改めて自分の曲に向き合ったり」

--いいですね、アプローチが池田さんっぽい。変わってなくて安心しました(笑)。

「一度理詰めで考えちゃうんですよね(笑)」

--バンドの時は原田さんの歌詞をご自身で解釈して歌っていたわけですが、今回の曲では作詞も池田さんが手がけていますね。

「はい。今までは「歌詞書ける人ってすごいな」くらいにしか思ってなかったんですけど、いざやってみると「だからみんな歌詞を書くんだ!」って実感としてわかった部分が大きくて。日記やSNSに書くでもない、友達にLINEするでもない、でも自分のなかだけに留めておくのも違う、そういう感情みたいなものを歌詞として言葉にして作品に昇華することで、美しいものが生まれたり誰かが自分のものだと思ってくれたりする、そういう体験をできたのは自分にとって貴重でした」

--歌詞の書き方って、自分の気持ちを表現するものもあれば、ストーリーを作る場合もあるし、西野カナが言うようにアンケートを起点にすることもできますよね。そういう中で、まさにこの1年間をダイジェストするような、自分自身の心情を歌にしようと思った理由って何かありますか?

「そうですね…さっき話したような経緯で今の活動を始めたので、まずは自分のことを正直に書いておきたいって気持ちがありました。あとは、バンドの時は「明るく元気なバンドのボーカルの子」っていうのがあったし、そこであえて苦しい部分とか悲しい部分とかを見せる必要はないと思ってたんですけど、せっかく自分一人でやるわけだから「普段の自分に近いもの」を外に出したいって気持ちが強くて。それを通じて「誰かに感動してもらいたい」とかっていうよりは、セラピーというか…自分の気持ちを言葉でなぞってあげることで、自分を癒すみたいな意識がありました。だから、人にうけるうけないってよりは自分のための作詞っていう側面が大きかったですね」

--思っていることを一旦形にして外に出すことで、ご自身が浄化されていくというか。

「まずはその状態から音楽をまた始めたいなと思いました」

--歌詞の前半は先ほどお話しいただいたバンド時代のことを思わせるような言葉が並んでいて、後半はコロナ以降の世の中の景色が描かれています。それぞれのフレーズに実感がこもっていますね。

「そう言っていただけるとうれしいです。細かく見ていったら、この1年のことを鮮明に思い出せますね」

--そうやって歌詞を通じて自分をさらけ出すことの怖さみたいなものを感じたりはしませんでしたか?たとえば<それなりに見せるふり上手くなって そつなくこなすほど薄くなって>あたりは今日していただいたお話ともつながりますが、バンド時代のことを知っている人が見るとちょっとドキッとするような内容にもなっていると思うんですけど。

「そういうことを思う人がいるだろうなっていうのはもちろん考えました。考えましたけど…「こう思われそうだからやめよう」ってしてしまったら、前とまったく変わらないので。純粋な気持ちをストレートに表現すれば伝わる人には伝わると思ったし、今回は「思ったことを思ったまま外に出す」ことを大事にしました」

--今まではとにかく聴いてくれる人含めて周りにとってそれがいいことなのかを大事にしていたのが、今回の活動では聴いてくれる人を大事にするのは前提としたうえで「より一番自分の状態に近いものは何か」がジャッジにおける重要な基準になっていると。

「まさにそうですね。自分の場合、好きなアーティストや身近にいる大切な人に望むことって、「その人がその人として生きてくれていること」なんです。その生き方が今の自分と合わないなって思ったら自然と距離が離れてしまうかもしれないけれど、それは悲しいことではないし、やっぱりまずはその人がその人として生きることを全うしてるってことが大切だと思うんです。私を応援してくださっている方のすべての人がそういう考え方ではないとは思うんですけど、私としては「まずは自分自身が誠実な表現を重ねていく」ことを見ていただきたいと考えています」



誠実に表現をしていけばきっと共鳴してくれる人がいるんじゃないか

--ご自身が誠実に表現するということで言うと、今回はミックスに関わられてたり、ディティールまで含めて自分で責任を持とうという意識が見えますね。

「はい。ミックスもエンジニアさんのお家で一緒にやらせてもらって、あとは映像を作るときには最初の打ち合わせから参考になる資料をいっぱい持っていきました。ロケハンにもついていきましたね。来なくて大丈夫ですよって言われたんですけど(笑)。ブックレットの紙質を決めるのも、写真を一枚一枚セレクトするのも、自分でやりました。インディの時に『LISTEN TO THE MUSIC』のジャケットを江口(寿史)先生にお願いしようって思って直接連絡をとったりしてましたけど、その時の感覚が久しぶりに自分に戻ってきたなあと感じてます。今回はそれに加えて音楽自体も自分でゼロから作るのにかかわっているから、出来上がってくるものが最初から最後まで完璧につながるんですよね。ものづくりってすごいことなんだな、と改めて感じてます」

--お話を聞いていると、池田さんが音楽活動をライフワークとして取り戻している感じが凄くします。

「本当にそうですね」

--希望にあふれていますね。

「(笑)。現実的には、今回のリリースに関する一連の活動で収支がどうなるか、マーチャンダイジングやファンクラブをどうやって回していくか、いろいろ考えないといけないことがあるので明るいことばかり言っているわけにもいかないんですけど…でも、さっきも言いましたけど毎日とても楽しいです」

--tiny_mouについて公式サイトには「とにかく大きく広く、そんな風にむやみな拡大を目指すのではなくて、気持ちと出来事の歩調を合わせながら歩んでいくこと。小さくて愛のこもったお店を、信頼できる仲間たちと一緒に育てていくようなイメージです。」とありましたが、こういった考え方で進めていくには、まずは負荷が増えても1人で活動を立ち上げる必要があったんだと思います。一方で、今日お聞きしたかったのは、以前バンドでは「グラミー賞を目指す」といったお話をされていたじゃないですか。


「そうですね、はい」

--当時のShiggy Jr.はまさに拡大基調に乗っていこうとしていたと思うんですけど、それと今回の活動の方向性を並べた際、池田さんの中で何らか意識の変化はあったんですか?それとも言葉遣いが変わっただけで、根本は同じということなのか。

「当時と今で世の中が変わっているというのもありますけど、やっぱり自分の気持ちが変化しているんじゃないかと思います。もちろんこれから作る自分の音楽がマスに響いたら凄いなとは思うんですけど、今はたとえば「全国大会優勝」って目標を掲げてそこに向かって必死にトレーニングする、みたいなことをやろうとはしていないんですよね。作品を作ること自体の喜びをかみしめて、そうやって誠実に表現をしていけばきっと共鳴してくれる人がいるんじゃないか、そんなことを考えています」

--わかりました。この先の活動についてもお聞きしたいのですが、いくつかゲスト的に参加している作品もあるんですよね。

「はい。もうレコーディングが終わっているものもあれば、これからのものもあります」

--ソロでは「walkin’」とはまた違ったテイストの楽曲も作られる感じでしょうか。

「今回みたいなものももうちょっとやってみたいし、しっかり歌メロのあるものをソロでやってみたらどうなるんだろうっていう関心もあるのでそっちにもチャレンジしたいと思っています。来年のどこかでEPを出したいと思っていて、それに向けて6曲か7曲くらいは作りたいですね。「walkin’」で%Cさんと一緒にやったみたいに、今まで自分が聴いてた音楽を作ってる方に曲作りをお願いしたいなーという妄想をまさにしているところなので、少しずつ具現化できるといいなと思っています」

--ありがとうございます。ぼちぼちエンディングに入っていきたいんですけど、久々にまとまった形のアウトプットを出したということで、「あ、池田さんまた活動するんだな」という目線で見てくれている以前からのファンの方に何かあれば。

「いろいろ思っていることはあるんですけど、そう言われると難しいですね。えーと…今回のリリースに関しては、「思っていたのと違う」「よくわからない方向に行ってしまった」って言われるのを覚悟しながらではあったんですけど、意外と好意的に受け止めてくれた方が多かったなと思っていて。歌詞についても「素のともちゃんを知ることができてうれしかった」みたいな感想もあったりして、皆さんがいろんな側面から自分のことを見てくれているのがわかってすごく励みになりました。まずはそれについてお礼を言いたいです。この先も自分に正直に音楽を作っていくつもりなので、もし私の気持ちと皆さんの気持ちがうまくマッチしたら、これからも音楽を通じて一緒にいられればと思っています」

--では、「Spotifyのプレイリストで池田智子っていう人の歌を知って素敵だなと思った」みたいな方に対してはどうですか?

「いるといいな、そういう方(笑)。「walkin’」には今の自分のすべてが入っているので、予備知識なしで自分のコアな部分に触れていただいて、それを気に入っていただけたのだとしたらすごくうれしいです。この先も、自由な形で楽しんでもらいたいですね」

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ちなみに、週明け10/12まで活動一発目のグッズに関する受注受付が行われています。ブックレットではここでお話しいただいたような内容がまた少し違った切り口から池田さんご自身の言葉で語られているので、ご興味ある方はそちらもどうぞ。



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