2025年改正【遺族厚生年金】解説&世帯構成別受給パターン例

2025年より遺族厚生年金の改正が予定されています。
そのポイントについての解説、世帯構成別の具体例も載せています。


改正1.給付期間の変更

妻が遺族厚生年金を受給する場合

夫が死亡し、妻が遺族厚生年金を受け取る場合は以下の通り。

【現行】
30歳未満:5年間の有期給付
30歳以上:終身給付

【改正後】
60歳未満:5年間の有期給付(※段階的に年齢は引き上げられる予定)
60歳以上:終身給付

現行では妻が30歳以上で、会社員の夫が死亡した場合、妻は遺族厚生年金を一生涯受給できていましたが、改正後は夫死亡後5年間だけ遺族厚生年金を受給した後は、自分で生活を再建させなくてはいけなくなります。

夫が遺族厚生年金を受給する場合

妻が死亡し、夫が遺族厚生年金を受け取る場合は以下の通り。

【現行】
55歳未満:受給権なし
55歳以上:終身給付の受給権発生、ただし受給は60歳以降

【改正後】
60歳未満:5年間の有期給付
60歳以上:終身給付

現行では夫が55歳未満で、会社員の妻が死亡した場合、妻の方が収入が多かったとしても夫は遺族厚生年金を受給することができませんでした。
改正後は男女差がなくなる形で、60歳未満は有期給付ではありますが、夫は5年間遺族厚生年金を受給ながら妻死亡後の生活を安定させるよう努めていくようになります。

改正2.一定の遺族への遺族厚生年金上乗せの廃止

妻が遺族厚生年金を受給する場合

夫が死亡し、妻が遺族厚生年金を受け取る場合は以下の通り。

【現行】
40歳未満:上乗せなし
40歳以上65歳未満(子なし):65歳まで上乗せあり(中高齢寡婦加算)
40歳以上65歳未満(子あり):65歳まで上乗せあり(子が18歳到達年度末までは遺族基礎年金、それ以降は中高齢寡婦加算)

【改正後】
段階的に廃止

以前は40歳以降では女性の就労が難しいとされていたため、遺族厚生年金に上乗せ(中高齢寡婦加算)があったが、女性の就労促進や男女差解消に向けて、段階的に廃止されるようになります。


夫が遺族厚生年金を受給する場合

妻が死亡し、夫が遺族厚生年金を受け取る場合は以下の通り。

【現行】
子なし:年齢によらず上乗せなし
(子あり:子が18歳到達年度末までは遺族基礎年金あり)

【改正後】
変更なし

妻が死亡して夫が受け取る場合、遺族厚生年金からの上乗せ給付はもともと制度がないため、変更ありません。


そもそも遺族年金とは

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類が存在します。
遺族基礎年金とは、子や子のある遺族への遺族年金です。
遺族厚生年金とは、厚生年金加入中や、老後にもらう老齢厚生年金をもらわず亡くなった場合の一定の遺族への遺族年金です。

もとは受験対策でしたが、要件をまとめたページはこちら↓


世帯構成別:改正後受給パターン

パターン① 子なしDINKS(夫婦とも会社員)

夫、妻いずれの死亡においても遺族厚生年金を受給できるが、死亡時点での遺族(妻or夫)の年齢により受給期間が異なる。
60歳未満:5年間の有期給付
60歳以上:終身給付

パターン② 子ありDINKS(夫婦とも会社員)

子が18歳に到達する年度末までは、遺族厚生年金を受給することができる。
 例)子が0歳で夫or妻死亡:死亡後~子18歳まで受給

パターン③ 子なし専業主婦or主夫(または厚生年金未加入パート)

パターン①子なしDINKSと同じ扱いになります。

パターン④子あり専業主婦or主夫(または厚生年金未加入パート)

パターン②子ありDINKSと同じ扱いになります。


遺族厚生年金制度改正を受けてやるべきこと

夫、妻いずれも現役世代(60歳未満)は遺族厚生年金は5年の有期給付となります。
夫が会社員の場合、万が一の時の生命保険を、以前までは終身の遺族厚生年金を前提に契約していたでしょうから、見直しが必要となる可能性が出てきます。
特に子がない40歳以降の妻にとっては、終身年金+上乗せ(中高齢寡婦加算)がもらえた制度から、5年の有期年金のみへと変更となるため、自身で生計を立てていけるようにしていかなくてはなりません。

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