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土は素材か生き物か。(6)肥料、土壌生物、微生物。ポジションを知れば見えてくる。

ポジションってなにさ。

「土は素材か生き物か。」シリーズ。
最終話は”ポジション”という観点からお話ししたいと思います。

きっかけは、職場の方に多肉植物の苗をもらっていただいた時に、
土の管理方法について聞かれたことにあります。

もらっていただいた多肉は今年の1月に株分けした七宝樹で、
リフォレストした土に挿しておいたら、
当初5本程度だったものが大小含めて
倍に一気に繁殖してしまったもので、
土の中にはカルスの微生物がまだまだ残っているため、
カルスのエサやりのために、
土に足して良いものは何か説明した際に説明しながら
気づいたんですね。

その時、カルスを含む微生物をどう説明したかというと、
”液肥や肥料は、植物にとってはエサと同じで、
 微生物はエサじゃなくて、土の環境を良い状態で保つための
 プレーヤーだから、時々、プレーヤのためだけのエサやりをする
 必要がある。”

小さな鉢であれば、月に1回、お米の研ぎ汁をおちょこ1杯と、
もし、どうしても動物性のものを入れたいのなら、
アーモンドフィッシュを食べ終わったとに残る小魚のかけらを
土に埋める形で入れる程度で大丈夫。
と、説明したんですね。

我ながら、聞かれるまで気づかなかったんですが、
鶏糞ペレットは一般的に肥料扱いで、
カルスも土壌改良剤という肥料っぽいものという認識の人が
多いんじゃないかということに、この時初めて気がついたんです。

そう言えば、他のところで人に説明する際にも、
毎回カルスの説明をするのにどう説明すればいいか、
いつも困っていたのよね。

いつも思うけど、大切なことは人から気付かされることが、
本当におおいと実感します。
もし、七宝樹をもらってくれたあなたが
この記事を読んでくれることがあったら、
あなたのおかげで、この記事を書けました。
七宝樹を引き取ってくれたありがとう。

ポジショニングを理解すれば、使い方が見えてくる。

小麦農耕型農法で、土を消毒などリセットして
適切な化成肥料を入れる土を素材とした捉えた農法と、

多少土壌の消毒はするものの、
腐葉土や、天然肥料をふんだんに使う有機農法と、
いわゆる天然系農法。
この大きく分けて3つの農法のどれであっても、
共通して言えることは、
化成肥料、肥料、土壌生物、微生物。
それぞれが畑というフィールドの中で、どんな役割をするのか
それを踏まえておかないと、思うような結果は得られないのだと思います。

先に書いた七宝樹のメンテナンスでも説明した通り、
・化成肥料:植物の食料
・微生物:プレーヤー
という認識がまず、大切です。

植物の食料、あえて食料と書きますが、
化成肥料の中には、食料としての肥料や、
病害虫に対応する薬的な肥料が含まれますが、基本的には、
植物が自身の中に取り込んで自身を成長させるものです。

したがって、土自体の質を上げているわけではないんですね。

それに対して、微生物資材は植物の食料ではないので
植物に吸収されてどうこうなるものではなくて、
あくまで、根の周りや土の環境を整える効果を持つ
めっちゃ細かなインフラ整備士みたいなものなんです。

労働している以上、微生物はお腹を減らします。
なので、微生物には微生物用の食料が必要になるわけです。

そう考えると
有機肥料は、その中に植物のための食料と、
インフラ整備士の微生物と、微生物の食料の全てが揃った、
カテゴリ的には”肥料”だと言えます。

化成肥料と有機肥料については、
時間軸で考えた時に大きな違いが出てきます。

時間のスパンの違い

化成肥料とは、
いわば、ファストフードや、栄養補助剤、液体の栄養剤のようなもので、
植物に作用するまでのスパンが極端に短いのが特徴です。
このスパンの短さを逆手にとって、
植物の根本から離したところに撒くことで、
作用する時間を微妙に伸ばすことができます。

対して有機肥料は、
”完熟”のものであっても微生物と、微生物の食糧は残っています。
最初に土壌動物などによって分解され、
そのふんが肥料となった状態のものは、
肥料分として植物の食べ物となりますが、
食べ物としてはしっかり噛んで食べる日常食のように、
摂取に時間がかかるものの、緩やかに丈夫な体を作ることができます。
さらに、土壌動物が分解しきらない植物片などが残ることで、
微生物にとっては、インフラを整えるための活力となる
エサが十分あるので、
化成肥料に比べもう少し長いスパンで野菜の食料と、
快適な土の環境を継続できる利点があります。

土壌動物と微生物同じプレーヤーでもポジションは違う。

もう一つ、微細だけど、目視できる土壌生物や昆虫、ミミズなどと
微生物資材の微生物、有機肥料に含まれる微生物は、
同じインフラ整備士というプレーヤーではあるものの、
ポジションは全く異なります。

昆虫、ミミズはマッチョ系で、コンクリートを砕いたり、
大胆な力のいる作業を得意とする作業員。

微生物は細かな作業を得意とするあらゆる分野の職人的作業員
という感じです。

人が常に気にかけたり目視できないというだけで、
それぞれがそれぞれの生活を送るだけで、
総じて土の環境を整えている。
これぞ、自然の妙ってやつですか。

まとめ

”土は素材か生き物か”
その問いの答えは、それぞれの見方や捉え方で答えは変わる。
というのが私の認識です。

小麦農耕型農法の紐づく現代農業のように、
土を素材として捉える考えでは、やり方がデジタル的で
自然と逆行しているようにも思えますが、
”農業”という営みから考えれば、
自然農法だけではカバーできない部分も多分にあります。

行き過ぎはよくないとは思いますが、
世界の土がどれも同じ1種類の土でない以上、
良いものは取り入れ、できれば土地に無理なく作物が育てられるのが
一番好ましいと、私は思うのです。



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