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忘れられない鉄道の本/渡辺雅史

【渡辺雅史 プロフィール】
ライター、放送作家、節約旅行ライター。
ライターとして集英社「週刊プレイボーイ」小学館「DIME」などに執筆。 
放送作家としてTBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」に参加。
節約旅行ライターとしてMONDO TV「鉄道ひとり旅 女子鉄編」旅チャンネル「離島酒場」などの旅番組で交通費節約のアドバイスに関わる。
鉄道旅行が趣味で、国内の路線全線に乗車。所有する時刻表は500冊以上。
著書として『銀座線の90年』(河出書房新社)『最後の国鉄直流特急型電車』(JTBパブリッシング)など。

  大学時代にJRすべての路線に乗車。30歳頃、私鉄すべての路線に乗車。国内すべての鉄道路線に乗車した。そんなこともあり、雑誌の鉄道特集のお仕事をちょくちょくいただいている。

 すごくありがたいお話で、こちらも期待に添えるよう、アイデア出しや取材、原稿執筆を全力で取り組むのだが、その際、編集の方に聞かれる質問でいつも困るのがこんな質問だ。

「おすすめの鉄道路線は?」

 全線に乗った人なら、景色がいい路線、乗って楽しい列車ぐらいサッと挙げられるだろう。という思いで、話のとっかかりぐらいの気持ちで聞いてくるこの質問。だが、工業地帯を貫く路線にも、渓谷に沿って走る路線にも、都心を走る地下鉄にも魅力がある。しかも同じ路線でも乗車する季節や時間帯、特急に乗るか普通列車に乗るかなどで印象がまったく異なる。

 なので、そんな質問があるとこのように答えてしまい、場の空気が微妙な感じになってしまう。

「すみません。決めきれなくて」

 同様に聞かれて困る質問がある。『なぜ鉄道が好きになったのか?』だ。

 世の中にはさまざまな「好き」がある。

 アイドルが好きな人には、きっかけとなったアイドルがいて、出会ったときの思い出をハッキリと覚えているだろう。
 野球が好きな人は、プロ野球の試合を見に行った思い出や、バッティングセンターでバットにボールが当たった思い出があるだろう。
 釣りが好きな人も、競馬が好きな人にも、読書が好きな人にも、それぞれ出会いがあるだろう。

 だから質問する側は、話のとっかかりとしてこんなことを聞くのだろう。「なんで鉄道が好きになったの?」と。 

 列車に乗っていると、駅のホームや線路脇で親に抱きかかえられた子どもが一生懸命電車を眺めている姿を見かけることがある。言葉もまだハッキリと話すことができない男の子が「もう帰ろうか」という親の言葉を無視して次にやってくる電車を待つという姿を見たことがある人も多いだろう。

 私を含む鉄道が好きの多くが、そんな一生懸命電車を眺めていた子どもなのだ。他の子たちが、新たな趣味に目覚めて鉄道から離れていく中、ずーっと鉄道が好きで居続けた人たちなのだ。

 言葉もハッキリと話すことができない頃から好きだったものを「いつ、どんなキッカケで好きになったのか?」と聞かれても答えようがない。「1歳の誕生日の思い出を教えて」と質問されるようなものだ。

 正直、答えようもないし、このような理由を述べても変な感じになってしまうので、誰かに質問されたときは「気づいたら好きになっていたんですよ」とか「家の近くに線路があったからですね」とお茶を濁している。
 だから案外、質問に対する率直な答えは単純かもしれない。

「わからないんです」

 そんな気がついたら鉄道好きになっていた私を始め、私と同じように物心ついた頃にはすでに鉄道が好きになっていた人たちがコラムを寄せた新書『忘れられない鉄道の本』が交通新聞社新書より発売中です。

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