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僕らの町に今年は雪マーク。

今回は「雪が降る町」について。

言わずと知れたユニコーンの名曲。毎年この時期に必ず聞き、必ず歌っている。ここで言う、「この時期」というのは、毎年12月の、クリスマスが終わって年が明けるまでの、12/26~12/31までのこと。この歌は、「この6日間に歌う歌」として、僕の中に確固たる地位を築いて久しい。

僕の浅く狭い音楽歴については、これまでのブログで何度か触れてきたので割愛するとして、その狭かった世界がほんの少しだけ広がった、大学1年生の時にこの曲に出会った。大学入学と同時にギターを弾き始めた僕は、当時流行っていたし、僕自身もハマっていた、某ストリート系アコースティックデュオに夢中になっていた。そして、今考えればちょっと背筋が寒くなるくらいの演奏技術や歌唱力のままで、その年の夏には、山形駅周辺の地下道に繰り出し、夜な夜な友人たちや通りがかりの山形市民の皆さんと覚えたてのギターをかき鳴らし大騒ぎをしていた。若気の至りと反省する部分も多々あるけど、思い出せばやはり楽しかった記憶があるし、あの頃があったからこそ今があるとも正直に思う。


弾き語りサークルに入ったり、路上ライブを定期的にやるようになると、その界隈での友人たちから、今まで聞いたことのなかったアーティストを紹介されたり、自分で調べたりして、いろんな曲を次第に聞くようになっていった。「ユニコーン」はそうやって知っていったバンドのひとつだった。当時、すでに民生さんはソロアーティストとして活躍していて、恥ずかしながら「奥田民生ってバンドやってたんだ!」というレベルの認識だった僕に、先輩や友人たちはいろんな曲を教えてくれた。そういうパターンで、聞き始めたアーティストがたくさんいる。和義さんやスガシカオさん、くるり、サニーデイ・サービスもそこに含まれる。思い起こせば、あの頃に出会えてよかったと感じている音楽ばかり。教えてくれた皆さん、本当にありがとうございました。

そうして出会ったたくさんの名曲たちの中からいくつかを自分のレパートリーとして、当時「ライフワーク」と化していた路上ライブにて歌っていた。「ゆず」の全曲コピーするんだ!くらいの勢いで、そこだけにまっしぐらになって路上ライブに熱を上げていた大学生の赤間青年にとっては、次の一歩を大きく踏み出した感があった。その場合、「自分が弾きながら歌うことができる」という前提条件がまずもってあったわけだけど、「斉藤和義/空に星が綺麗」や「スガシカオ/Happy Birthday」はこの頃から歌っていたし、「くるり/東京」、「サニーデイ・サービス/月光荘」もそうだ。そこに「ユニコーン」(民生さんソロも含めて)も織り込んで、「すばらしい日々」や「自転車泥棒」なんかもよく歌っていた(名曲は数えきれないほどあるけども、さすがに「大迷惑」とかを路上で弾き語りする技術も度胸も持ち合わせていなかった)。その中で、とりわけ印象深い曲だったのが、「雪が降る町」だった。

路上ライブをしていると、お客さんからのリクエストや自分なりの演出で、季節に合わせた歌を歌うことがよくあった。春なら春の歌、夏なら夏の歌、みたいな。冬も冬の歌を歌うことも多く、クリスマスソングなんかももちろんそうだ。ただ、クリスマスソングはクリスマスが終わってしまうと、一気に「季節はずれ」感が出てくる。そういう、クリスマスとお正月の間のタイミングでは、路上で誰かが「雪が降る町」を歌っているのをよく聞いたし、自分も歌っていた。何と言っても年末に歌うのに歌詞がぴったり。「あと何日かで今年も終わるから」。これに尽きる。クリスマスが終わったら本当にその通りで、それ以上でも以下でもない。山形はやっぱり雪が降っていたし、人も車も少なくなってるし、田舎というか実家にも帰るし。田舎に彼女はいなかったから、彼女のためにお土産を買うということは悲しいかな、一度もなかったけども…それ以外の条件が何もかもしっくりきたのがこの曲だった。年が明けたら明けたで、さすがにもう違ってくるし。だからやはり年末限定。最近は路上ライブをすることもなくなったけど、年末の空気を感じると、今でもこの歌が頭をよぎり、自宅の奥まったMy練習部屋(という名の物置)に籠り、この曲をひっそりと歌う。これが僕の、僕による、僕のための、そして僕だけの年末恒例行事になっていた。

今年もクリスマスが終わり、いよいよ「あと何日かで今年も終わる」。そして、この恒例行事はまだ開催していない。何かと忙しい、というよりは、このブログを書くまですっかり忘れていたから。何か書こうかと思って、そのきっかけでふとこのことを思い出した。人から見たらどうでもいいような行事であることは間違いないが、いつも通りに執り行って、いろいろあったこの2019年を締めくくろうと思う。そう思って振り返ってみたら、ちょうど一年前に、やはりこの歌を歌っていた僕がいて驚いてしまった。やはり外せないイベントのようで、もはや“儀式”に近いのかもしれない…。

ただ、地元に戻って、名実ともに「僕らの町」となった、生まれ、そして現住でもある僕の地元の町は、東北であるにもかかわらず、実はなかなか年末に雪は降らない。11月12月に降ることがないわけでもないが、2月3月になってようやくまともに降り始めるような気候に、最近はすっかりなってしまっている。だから雪が降るイメージは、やはりあの頃見ていた景色が今も色濃く思い浮かぶ。空を白く覆いつくすように落ちてくる山形の真夜中の雪。ちなみに、ここで言う「山形」は「山形市」で、学生時代の後半を過ごした「鶴岡市」ではない。あっちは、雪は降らない。降るけど降らない。庄内地方の雪は、「降る」のではなく「吹く」だった。日本海からの冷たい風に乗って突き刺すようにぶち当たってくる雪。あの町で暮らしていた頃の僕には、ゆったり降る雪を眺めていた記憶は皆無。だから僕にとっての「雪が降る町」は、今も変わらず「真冬の真夜中の駅前の地下道の階段を上ったところから見た山形市」だ。今年もあの景色を思い浮かべるだろうけど、こう書いてる途中に見た天気予報では、僕らの町にも「雪マーク」があった。それならいっそ、歌詞通りに雪が降って、正真正銘の「僕らの町」を「雪が降る町」にしてしまってほしいような気もするが、いやでもやはり、降らないで思い出をこのままにしておいてほしいような気もする、複雑な感覚。そうは言っても、どっちにしろ2019年も終わる。やることやって、すっきり年を越えたいと思う。まずはと原曲を聞き直すと、ほらもう、とたんに懐かしい。楽譜を引っ張り出そうと思う。

とりあえず今回はこの辺で。今年中にもう1回くらい書きたいところだけど、どうかな。世の中は色々あるからねー。みなさん、どうか元気で。お気をつけて。またそのうちに。

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