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【前編】デザインを信じる企業におけるデザイナーの役割とは?〜ReDesigner Meetup 2020〜

近年、デザイナーを目指す学生が増え、最近では様々な企業のデザイン戦略がメディアで言及されることも増えてきました。デザイナー志望の学生は増えてきている反面、企業で活躍するデザイナーの話を聞ける機会が少ないなどの課題があります。 そこで、新卒でデザイナーを志す学生のキャリア支援プラットフォーム「ReDesigner for Student」は、企業のデザイナーの話を直接聞くことができる機会として、学生クリエイターを対象としたReDesigner Meetupを2018年より東京、福岡、京都などで開催しています。

デザインの力を信じる6社が思う「デザイナー」に大切なこと。ReDesigner Meetup #1【前編】
「デザインが好きですか?」 ~ReDesigner Meetup 2019 レポート~

2月1日に開催された「ReDesigner Meetup 2020」には100名近いデザイナー志望の学生さんにお集まりいただきました。本記事では、デザインの力を信じる7社のデザイナーや執行役員が語った、デザイナーに求めることや働き方についてレポート形式でお届けします!

LINE|ニーズを見つけ体験をつくるUIデザイナー

LINE株式会社でクリエイティブエバンジェリストを務める小林謙太郎さん。LINEのクリエイティブセンターの役割や担当範囲、そしてUIデザイナーとして大切にしている考え方についてお話しいただきました。

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LINEのあらゆる制作物に一貫して携わるデザイン組織

小林さん:LINEクリエイティブセンターには100名強の多種多様なクリエイターが在籍しています。アプリだけでなくWeb広告やCM動画、Tシャツなどのグッズ、そして本日の会場となっているこのカフェやオフィスの設計などなど、LINEに関わるほぼ全ての制作物に社内のクリエイターが携わっています。

参考記事:はじめまして、LINE クリエイティブセンターです
LINEクリエイティブセンターの各セクションが持つ役割を紹介しているnote

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ここまで徹底してインハウス でブランドマネジメントしている会社もあまりないのではないかと思いますが、今回はこの中から、UIデザイナーについてご紹介します。

必要な時に必要なことを提供する

LINEのUIデザイナーが何を考えて何を大事にしているのか。全ての原点はユーザーニーズにあります。ユーザーをよく観察して、必要なものを必要な時に提供することで、みなさんがより快適に楽しくそして安心して暮らせるサービスづくりを心がけています。

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LINEはみなさんが一番よく使われるコミュニケーションアプリ以外にも、様々な分野で多くのサービスをリリースしています。なかでも今特に注力しているのが、Offline、Fintech、AIの3つの領域です。

LINE×オフライン体験のサービス

1.LINEポケオ
現在地に応じて近くのテイクアウト可能なお店を検索し、注文から事前決済までをLINEアプリ上で完結できることを目指したテイクアウトサービス

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2.LINEチラシ
LINEコミュニケーションアプリを活用した、スマートフォンに最適化したデジタルチラシサービス

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この2つはどちらも実店舗送客を目的としているため「マップ機能」を備えていますが、コンテンツによって機能のプライオリティを変えています。具体的には、LINEチラシでは自宅近所にある店舗が利用対象になるため、そもそもユーザーはマップ機能を使いません。このように、UIデザインを決める上で、ユーザー体験が重要な役割を果たすように意識しています

LINE×Fintechサービス

LINE Pay、LINE証券、LINEスコアなどFintechサービスも提供しています。こうした金融系のサービス自体は昔からあるものですが、仕組みが複雑で、利用するハードルが高いという課題がありました。この課題を残した状態でサービスをモバイル化しても、良いUXは生まれません。

そんな時はLINEのブランドアイデンティティにこだわって、LINEという誰もが使えるコミュニケーションサービスの延長線上にあるものと感じてもらえるようなデザインを心がけています。

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(LINEのブランドアイデンティティ)

LINE×AIサービス

LINEではすでに多くのサービスでAI技術を使用していますが、昨年には他社がLINEのAI技術を活用できるサービス「LINE BRAIN」の提供が始まるなど、AIテックカンパニーとしての存在感が増しているのを感じます。

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UIに目を向けると、LINE NEWSのようにあえてAIを意識させずに利便性を向上させる場合もあれば、LINE家計簿のようにトーク入力やレシート撮影など、AIの導入によって利便性や体験が向上し、UIデザインが大きく変わるというケースもありました。

技術とデバイスの進化、デザインのトレンドによって、新しいインターフェースがどんどん生まれてくる時代です。LINEはその中で失敗も重ねながらチャレンジを続け、業界、世界を引っ張っていく存在になるという志を持って日々ものづくりに励んでいます。
(本記事で紹介している数値や画像はすべて発表時点のものです)

LINE株式会社 新卒採用サイト
https://linecorp.com/ja/career/newgrads/design/

クックパッド|「作って壊す」デザイナーの仕事

クックパッド株式会社 デザイン戦略部長の倉光美和さんからは、クックパッドのデザイナーの特徴、ミッションについてご紹介いただきました。

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世界中で展開するサービスを支える、デザイナーの特徴

倉光さん:
クックパッドは「毎日の料理を楽しみにする」ことをミッションに、つくり手を増やす・つなげることに注力したサービスを作っています。主なサービスに、レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」、生産者と消費者をつなぐ生鮮食品ECプラットフォーム「クックパッドマート」、毎月1冊オリジナル食育絵本が届く「おりょうりえほん」などがあります。サービス展開国・地域は74か国地域に広がり、現在は32言語に対応しています。

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社内には現在約25名のデザイナーがいますが、UXデザインのみを専門で行う部署や職業の人はいないのが特徴です。なぜならば、UXデザインはすべての開発者にとって必要な視点だと考えているからです。
現場のデザイナーのエピソードは、Cookpad Design Magazineにてお届けしているのでぜひご覧ください!

作って壊すデザイナーの日常と醍醐味

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ここからはデザイナー 佐野大河さんにバトンタッチ。新卒入社してからの3年の経験談と共に、クックパッドのデザイナーの特徴についてお話しいただきました。

佐野さん:
僕は、ユーザーに使い続けてもらうためのサービス開発を学ぶためにクックパッドに新卒で入社しました。僕が入社から3年間で担当してきたのはこんなことです。

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人によっては、「これだけ?」と思われるかもしれません。でも、実際に僕がこれらのデザインを作っていた時間は全体の0.2%だけで、残り99.8%の時間は、ざっくりいうと「作って壊す」プロセスを繰り返していました。
少し丁寧にいうと、仮説を立てる>仮説を元にデザインを作る>検証して学びを得る>壊す、というプロセスを繰り返していました。

クックパッドのデザインプロセスには、2つの特徴があります。

1.「作って壊す」を早く回す
カタチにしてみないとわからない、早く失敗して早く学びたいという理由から「作って壊す」をとにかく早くやっていました。やり方は色々ありますが、「作って壊す」をとにかく早く回す環境にいたことで、構想をカタチにする力が身につき、カタチにしたものがユーザーに届くか確かめる力が身に付きます。

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クックパッドは、「今よりももっと良いデザインがあるはず!」をとことん追求できる環境です。具体的なスキルとして何を身に付けたいかは自分次第、積極的に手を挙げればどんなことにもチャレンジできます。

2.全員で考える
クックパッドのサービス開発の現場では、どうしたらサービスがもっと良くなるか、職種関係なくチームメンバー全員が考えています。新卒でも上流の工程から関わるのは当たり前で、どういう体験を作るか、どういうデザインが良いか全員が向き合っています。

とはいえ、最終的にユーザーにサービスを届けるUIを作るのはデザイナーの役割なので、全員の考えをただ取り入れるのではありません。ユーザーに何をどう感じてもらいたいか、そのためにどういうデザインがベストなのかを考え抜き、「何を選ぶか・諦めるか」判断することも大切にしています。芯を持ったデザインを作る力が求められ、身につく環境です。少しでもいいなと思った方は、ぜひCookpad Design Magazineをチェックしてみてください!ありがとうございました。

DMM|40以上の事業をまたぐデザイナーの仕事

DMMでデザイナーを務める丸山祐里恵さんからは、コーポレートメッセージとDMM.ESSENCEについてのご紹介、それを踏まえてデザイナーが大切にしていること、関わる事業範囲についてお話しいただきました。

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丸山さん:
DMMはたくさん事業を行なっているため、「器のような会社」と定義をします。40以上の様々な事業がありますが、全体のビジョンミッションはなく括らない、そこに良さがあります。

DMMでは、全体としての「器のアイデンティティ」を示すメッセージとして、ビジョンでも、ミッションでもない、コーポレートメッセージとして「誰もが見たくなる未来」をベースに、指針となるDMM.ESSENCEというものがあります。

1.本気の失敗を肯定する。
2.テクノロジーとともに。
3.誠実であれ。
4.ちゃんと稼ぐこと。
5.好奇心を忘れない。

これに共感・体現できる方と「誰もが見たくなる未来」を作りたいと思っています。
領域問わず展開してきた40以上の事業のジャンルは幅広く、金融・人材育成・ゲーム・エンタメコンテンツ・動画配信など様々な事業・活動に取り組んでいます。

事業目標を背負うデザイナーの仕事

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DMMにある40以上のサービス。デザイナーは、この各事業の中に配属され、事業部の一員として事業目標を達成するため様々な職種のメンバーと連携しています。
事業によってデザイナーが関わる領域は様々ですが、主に担当する事業の課題のヒアリングと分析、市場調査やIA、UI/UXデザイン、コーディングなどを行います。デザイナー同士で情報共有したり、時には事業部全体を巻き込みながら、事業の改善とスケールアップのために働いています。

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もちろん、デザイナーは、要望を聞いて見た目だけを整える仕事ではありません。
ユーザーと事業部の橋渡し役となり、双方の悩みや課題を解決する仕事だと私は考えています。それぞれの悩みに対してバランスをとって落とし所を見つけ、実行までやっていく、それがDMMで求められるデザイナーの仕事です。

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金沢に拠点を置くことで見えてくる、課題とアイデア

今回、デザイナーを募集している部門はEC&デジタルコンテンツ本部です。EC&デジタルコンテンツ本部では動画サービス、電子書籍、通販などの新規開発からグロースまでを行い、数あるDMMのサービスの中でも売上の主軸を担っています。

EC&デジタルコンテンツ本部は東京と金沢に拠点があり、今回は金沢での募集となります。
DMMでは誰でも新規事業のアイデアを提案することができるため、地域ならではの課題など、東京とはまた違った視点でのアイデアや取り組みができるはずです。
また東京と金沢をつないで定期的な勉強会も行なっているため、拠点を問わずいろんな最新情報にアンテナを張ることも可能です。

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さらに地域のクリエイターやデベロッパーを巻き込んだミートアップも開催しており、金沢オフィスは今後地域そのものを盛り上げていく拠点にしていければと思っています。

詳しくはDMM insideで確認してみてください!

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今回は「Redesigner Meetup 2020」イベントレポート前編として、当日前半の様子をレポートでお届けしました!ご登壇いただいた企業様からは各社が思うデザイナーやデザイン組織についてお話いただきました。同じデザイナーでも企業によって働き方、組織としての体制も様々であることを感じていただけましたでしょうか?

イベントレポート後編では、日鉄ソリューションズさん、レバレジーズさん、フェンリルさん、Goodpatchの講演内容をお届けします。お楽しみに!
ReDesinger for Studentでは、今後もデザインの力を信じる企業とデザイナー志望の学生が繋がる機会をつくっていきます。公式Twitterでは新着記事やTipsをお届けしているので、ぜひチェックしてみてください!