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ビジネスカンパニーのカスタマーサクセス対談<前編>〜横断プロジェクトに関わった2人に聞いてきた〜

(本記事は、2022年12月にインタビューした内容をもとに編集しています。)

こんにちは!マネーフォワード ビジネスカンパニー(MFBC)の塩原です。

「教えて!マネーフォワードで働くリアル」シリーズでは、MFBCで働く人たちが、実際にどんな思いで仕事をしているのかを、インタビューから探っていきます。

今回は、MFBCにおける「カスタマーサクセス」を徹底解剖。部門横断でのカスタマーサクセスに関わった2名にインタビューしました。


これまでのキャリアと現在の仕事内容

ー入社までのキャリア、入社経緯、いまの役割について教えてください。

:前職は大手企業向けソフトウェアハウスで働いていました。マネフォを知ったキッカケは、新入社員時代の同期がマネフォで働いていたからです。私が産休・育休を取っていたときに「経費のサービスが好きだったよね?だったら話を聞いた方がいいよ」と急に連絡がきたんです。

当時転職する気はなかったのですが、娘を預けたら時間もつくれたので、話を聞くことにしました。その話がとても面白かったんですよね。

特に印象的だったのは、カルチャーの話です。特に、マネフォのVALUEの一つに掲げられている「User Focus」やCULTUREの一つである「Pride」は、自分自身が仕事をする上で大切にしていることでもあったので、とても共感しました。また、子育て中の社員が多いことも印象的でした。ただ、そのときには転職には至らず、育休から前職に復帰したんです。

ところが戻ってみると、仕事と育児との両立が思っていた以上に大変で。そんなとき、再度同期から連絡をもらったことをキッカケに選考に進んで、マネフォに入社しました。

現在は「クラウド経費本部」で副本部長を務めていますが、少し前まではプロダクト企画部の部長とカスタマーサクセス部の部長を兼務していました。
プロダクト企画部では、「マネーフォワード クラウド経費」のPdM(プロダクトマネージャー)としてプロダクトの方向性や戦略を考えたり、営業のサポート、開発プロジェクト側に携わったりすることもあります。

カスタマーサクセス部では4人のメンバーと共に、既存のお客さまにプロダクトを使い続けていただいたり、他の「マネーフォワード クラウド」のプロダクトを使っていただいたり、アップグレードしていただくための施策を日々試行錯誤しながら進めていました。

山口:前職は給与計算や勤怠の代行事業に携わっていて、大手の飲食業や流通業などがクライアントでした。

前職で幅広いお客様を担当する中で課題だと感じていたのは、日本の給与計算や勤怠の仕組みが会社によって様々であることです。それを標準化できるような仕事がしたいと思うようになりました。

転職活動を始めてさまざまな企業情報を見ていたときに、マネフォに出会いました。「バックオフィスから経営を強くする」という考えや、多くのプロダクトがあるけれども、シンプルに必要な機能だけ足していくことができるという考え方に共感しました。

また、性別や年齢に関係なく、仕事に貪欲でレベルの高い方が集まって刺激し合いながら働ける環境であることを面接やSNSで感じたことも入社の動機になりました。

実は、入社前から辻さんのSNSを見ていたんです。私自身、PdMとカスタマーサクセスに興味をもっていたので、「両方できる会社があるんだ!」と感動したことで、マネフォへの志望度が上がりました。

現在は、HRソリューション本部 カスタマーサクセス部の部長をしています。21年12月に着任したときは、メンバーが6名でしたが22年11月現在は約20名のチームとなりました。

対応しているのは、「マネーフォワード クラウド給与」「マネーフォワードクラウド勤怠」などをはじめとした、「マネーフォワード HRソリューション」と呼ぶHR領域の6プロダクトです。

MFBCのカスタマーサクセスの体制・ミッション

―MFBCのカスタマーサクセスの体制について教えてください。

山口:MFBCのカスタマーサクセス部隊は、「SMB向け」と「中堅企業以上向け」で役割やミッションにいくつかの違いがあります。

私たちが担当する「中堅企業以上向け」のカスタマーサクセスは、各領域ごとに構成された各本部の中にそれぞれチームが存在していて、辻さんがクラウド経費本部、私がHRソリューション本部に所属している形です。そして、各本部のカスタマーサクセスとして動く一方で、中堅企業以上向け本部を横断したカスタマーサクセスの取り組みを推進しています。

最近の主な横断取り組み事例①「クラウドスタディ」

―最近の横断での取り組みとして、お客様がプロダクトについて学べるeラーニング「クラウドスタディ」がありますよね。「クラウドスタディ」を開始した経緯を教えてください。

:当初は横断ではなく、クラウド経費本部内でのカスタマーサクセスの業務を効率化できないかと検討を始めました。

当時のカスタマーサクセスの業務の大半は、導入いただいたタイミングでお客様向けに操作方法や設定手順の説明をしており、1人あたり20〜30社の導入支援を担当しているような状況でした。

そこでまず取り掛かったのが、資料の標準化です。当時はそれぞれが資料を作成していたのですが、同じ資料をみんなで共有できたらサービス向上にもなると考えました。

ただ、資料の標準化はできたものの、お客様に伝えるというプロセスは変わらず、20社のお客様に同じことを伝え続けていて、毎日デジャブを感じていました(笑)

そこで思いついたのが、設定などの説明はすべて動画にすることでした。これが、クラウドスタディ開発のはじまりです。

―クラウドスタディの根底には、「すべてのユーザーさんにテックタッチを活用した上で、ユーザーに合わせてロータッチやハイタッチで対応する」という考えがあると聞きました。その考えにはどう至ったんですか?

:カスタマーサクセスの仕事をするようになってから、「カスタマーサクセスの役割」について、さまざまな本やウェビナーなどで学びました。よくあるのは、カスタマーサクセスは三角形で表現されていて、顧客価値に応じて、テックタッチ、ロータッチ、ハイタッチのゾーンがあるという解説だったんです。

ただ、私には若干の違和感がありました。そんなときに出合ったのが、Ciscoの小泉雅人さんの言葉です。

「テックタッチは全員がアクセスできる土台になるもの。そこからこぼれたものや必要に応じて、カスタマーサクセスがハンズオンで対応する」

これを聞いて、顧客価値の軸ではなく「必要とするお客さまに、必要なサービスを届けるべきなんだ」と感銘を受けました。

この考えなら、カスタマーサクセスの工数も効率化され、必要に応じてしっかりとお客さまと向き合えます。具体的には、以下の図の斜線部分を、テックタッチで対応すべきと考えました。

各社個別の課題はテックだけで解決できないので、ハンズオンの対応が必要です。逆に、一般的な設定方法の説明にかける時間は、テックタッチを活用することで効率化できると思ったんです。

―クラウドスタディの実現までには、どんな過程がありましたか?

:まずは動画をつくったものの、お客様との動画の受け渡しはスムーズにいきませんでした。そこで、動画や資料を見るステップをわかりやすく載せる、eラーニングの形をとることにしたんです。

プラットフォーム選定などの期間はありましたが、おおよそ3ヶ月程度の準備作業で、「クラウドスタディ」を提供開始することができました。

―検討から開始まで、スピードが早かったんですね。クラウド経費本部で進めた取り組みは、ほかの事業部にどう展開していったのでしょうか?

:「マネーフォワード クラウド経費」を含め、他のマネフォのプロダクトも複数利用しているお客様から「経費以外のプロダクトの、操作説明や設定手順の解説動画はないんですか?」と聞かれる件数が増えたことが始まりでした。

お客様にとっては、利用しているプロダクトすべてが対応していないと違和感がありますよね。そこで、他本部にも相談にいくことにしました。

―他本部を巻き込むのはスムーズでしたか?苦労したことがあれば教えてください。

:大変な場面もありました。というのも、それぞれの本部が扱うプロダクトの成熟度がバラバラなので、カスタマーサクセスが置かれている環境が違ったからです。

例えば、「マネーフォワード クラウド経費」はプロダクトリリースからある程度時間が経っていましたが、「マネーフォワード クラウド会計Plus」はまだリリースしたばかりのプロダクトで、まずはPMFを目指していくのが優先。導入の標準化をするようなフェーズではなかったんです。

複数プロダクトをご利用いただいているお客様の視点だと、すべてのプロダクトを同じく「クラウドスタディ」に載せていくべきことは、他の本部のみなさんも分かっていたはずです。それでも、プロダクトの成熟度を考えると、当時は同じ温度感で向き合うことは難しかったのが正直なところです。

―最終的に「やろう」となるまで、説得を続けたんですか?

:そうですね、まずは本部間で置かれている状況の相互理解に努めました。その上で、「今の状態はいったん置いておいて、将来的にはどうなりたいか?」をお互いに理解・共有し、一緒にやっていきたい未来像を描きながら進めていきました。

・「××本部は後から対応するように、ロードマップを引いていきましょう」
・「××本部は、先に進めておいたほうがいいですね」

といった感じです。

あとは、「マネーフォワード クラウド経費」で先行して「クラウドスタディ」を運用したことによるメリットを、ほかの本部にも伝える努力をしました。

メリットは2つの側面で感じていて、まずは私たち提供側の業務効率化が実現できたこと、もう一つが、お客様にとって選択肢が増えたことです。

というのも「クラウドスタディ」をスタートしたことで、導入支援プランを2種類つくれたんです。ハンズオンで導入の伴走を行う「サクセスプラン」と、ウェビナーでのキックオフや問合せ窓口を活用しながら基本的にはセルフで導入を進めていく「セルフプラン」の2種類です。

その変化を他の本部にも共有しながら横断での取り組みを進めていきました。今では、11プロダクトのコンテンツが載るeラーニングになりました。

最近の主な横断取り組み事例②「ヘルススコア」

―横断で「ヘルススコア」の取り組みもされていますよね。まずはヘルススコアの定義を教えていただけますか?

山口:ヘルススコアは、「お客さまの利用状況や、どんなアクションをしているか、何につまずいているかを可視化」したものです。

それまでHRソリューション本部のカスタマーサクセスでは、お客様の状況を把握するために、担当しているお客さま1社1社の管理画面を毎朝開き、進捗状況やログインの状況をチェックしていました。

毎日の確認作業は工数がかかりますし、チェックする人によって観点が違うのでバラつきがある。この課題解決のため、お客様の状態をどう可視化するかを考えていきました。

―ヘルススコアの算出の仕組みづくりは、どう進めていったんですか?

山口:ヘルススコアを出せる製品は世の中にたくさんあり、ツールを導入することも検討しました。さまざまな会社から見積もりを取りましたが、高額なツールも多く、どれほどの費用対効果が見込めるかわからないという状況でした。

そこで、一旦新しいツールは導入せずに、GoogleのBigQueryやスプレッドシートを駆使して、やってみることになりました。

元々SQLが書けるわけではなかったのですが、辻さんと一緒に、ネット情報を確認したり勉強したりしながら、2人でオフィスの一室にこもってSQLを書いていきました。スプレッドシード上の縦軸に「企業名」を並べ、横軸にはBigQuery経由で取得した「プロダクトの利用開始までに必要な20〜30の設定の進捗状況」を表示していきました。

ただ、スプレッドシード上に可視化するだけでは、毎朝担当者がそれをチェックする必要があります。そこで、タスク管理ツールの「Asana」とスプレッドシード上のヘルススコアを連携させ、「A社は、本日までに完了予定の設定が完了していません」と連絡が飛ぶようにしたんです。

自分のお客さんの状況が一目でわかり、取るべきアクションもリアルタイムに通知される状態を理想として進め、2ヶ月くらいで完成しました。特に、1人あたりの担当者数が多いチームのメンバーからは「すごく助かった」と言われましたね。

―現在のヘルススコアはオンボーディングに特化しているんですよね。今後は稼働後のヘルススコアも可視化していく予定ですか?

山口:実は当初、オンボーディング(導入時)と稼働後をごっちゃにしていたんです。オンボーディングに熱心な人は、導入の設定状況が見たいし、稼働後の運用に興味がある人は、使いこなせているかどうかをより見たいという違った要望がありました。

それをごちゃ混ぜにしたままスコアを出そうとすると、カオスな状態でして(笑)。そこで辻さんがひらめいて、「オンボーディングと稼働後はわけよう」と定義したことで、話がすごく早く進みました。

また、バックオフィスSaaSは比較的チャーンレート(解約率)が低い特徴があるので、稼働後よりも導入支援のオンボーディングの部分の優先度が高くなります。ですので、まずはオンボーディングにフォーカスしてヘルススコアを算出してきました。

結果、現在のHRソリューション本部では、非常に高い割合のお客さまが予定どおりに稼働している状況になりました。

―導入してすぐのお客さまと、1年以上利用しているお客さまとでは、ご支援内容にもかなり違いがありそうですね。

山口:導入のタイミングでは、設定がどこまで終わっているか、現時点で何人が登録されているかなど「今の状況」がすごく大事なんですよね。

一方、継続のお客様の場合は「推移」が大切になってきます。例えば、前月に比べて使用しているユーザーが減っていたら、契約をやめようとしているシグナルと考えることができます。

他にも、前月よりエラーがすごく増えた、急に担当者が増えた、などの変化にも着目する必要があります。導入時は点で見て、稼働後は面で見るという違いがあることを感じています。

横断プロジェクトで動いたことによる変化

―横断プロジェクトで動いたことによる変化はありましたか?

山口:大きく2つの変化を感じています。1つは、事業部を超えた情報交換が活発になり、気軽に話せる関係性ができたことです。

マネフォの場合は各本部の独立性が高く、それぞれのポリシーで爆速で進んできました。ただ、お客さまからみると、本部が違っていても1つの会社です。

マネフォのプロダクトを複数利用しているお客様から見たときに、例えばAプロダクトは導入の動画があるのにBにはない、Aは人によるサポートが手厚いのにBはテックのみのご支援となってしまうと、いびつな感じですよね。

横断プロジェクトを進める中で、顧客視点を意識して対応を揃えよう、もしくは揃えなくてもお互いを理解した上でいいところを吸収していこうという意識が高まりました。

特に2つめの変化が大きく、今までバラバラで進んでいた各部のカスタマーサクセスが、同じ方向を向いて進めるようになりました。以前は、人によって方向性が違っていたんです。例えば、新規顧客を大事にしたい人がいる一方で、既存顧客に比重を置きたい人もいる。また、ヘルススコアを考えていく上でも、個々人が大事にしたいと思っていることが全然違いました。

そこで、これまでに何度も熱い情熱をぶつけ合って話し合いを進めてきました。コミュニケーションを重ねたことによって相互理解ができて、カスタマーサクセスとして大事にすること、目指す方向性が徐々にひとつになっていく感覚がありました。

カスタマーサクセスとして、これからやりたいこと

―お二人がカスタマーサクセスとしてこれからやっていきたいことを教えてください。

:クラウド経費本部では、オンボーディングを行うチームを部に昇格させ、部署名を「カスタマーサクセス」ではなく「ソリューションコンサルティング」と変えました。これはお客様が抱えられている課題を解決するコンサルタントとしてお客様と向き合うことの宣言でもあると思っています。

今後は、既存のお客様に対する取り組みもどんどん進めていきたいですね。

―山口さんは、カスタマーサクセスとしてどんな姿を目指していきたいですか?

山口:HRソリューション本部のお客様である人事労務担当の方々が、本来やりたい業務に集中できる環境づくりのお手伝いを引き続きしていきたいです。

例えば給与計算の業務だったら、その業務に関わる手間の部分をいかに少なくできるかが私たちのプロダクトを入れていただく成果なので、人事労務担当の方たちの専門性をより活かせる業務時間を創出させていただけたら嬉しいです。

カスタマーサクセスのいいところは、お客さまと開発チームの架け橋になれるポジションであること。カスタマーサクセスはお客さまに対してだけでなく、会社全体にも貢献できる存在になれたらいいなと思っています。

(後編は、近日公開予定です)


–編集後記

インタビュー中、ずっと笑顔で楽しそうにお話しする様子がとても印象的で、心の底からサクセスのお仕事が大好きなことが伝わってきました。

現在のMFBCには20以上のプロダクトがあり、プロダクトの成熟度もバラバラという環境です。そして、組織としての各本部の独立性も高く、それぞれのポリシーで爆速で進んできたという経緯もあります。

ただ「マネーフォワード クラウド」の複数プロダクトを併用いただくお客さまが増えてきたいま、横断での取り組みはカスタマーサクセスでも必須。そんな横断プロジェクトを先頭に立って引っ張っているお二人からは、覚悟にも似たお客さまに対する熱い思いを感じました。

MFBCのカスタマーサクセスにご興味を持った方がいらっしゃれば、ぜひお問い合わせください!