【レポート】LGBTが経済的に困ったら〜LGBTも生活保護って受けられる?〜

2021年3月7日、ZOOMによるオンラインにてイベントを開催いたしました!

LGBTが経済的に困ったら~LGBTも生活保護って受けられる?~

登壇者に行政で生活保護の担当をしているケースワーカーの悠佳さんと、トランスジェンダーの精神保健福祉士である摩巳さんにお話いただきました。

石倉プロフィール

講演の前半は、生活保護制度とはどのような制度なのか、生活保護費はどのように決められているのかなど、制度自体について説明していただきました。

生活保護とは・・・
憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念に基づき最低限度の生活を保障する制度であり、生活保護を受けることは国民の権利です。働き手の病気や怪我、そのほかさまざまな事情で暮らしに困っている方に、国が定める最低限度の生活を保障するとともに、自分の力で生活できるように援助することを目的としています。(東京都福祉保健局より)

保護が受けられる人受けられない人

国が定める基準(最低生活費)と世帯全員の方の収入を比較して、収入の少ない場合に、不足している部分が生活保護費として支給されます。
収入の方が最低生活費よりも多い場合は、生活保護を受け取ることができません。
この収入とは、働いて得た収入、年金、手当、仕送りなど、世帯の方が受け取る全ての収入をいいます。

後半からは、LGBT当事者が生活保護を利用する際、懸念されるだろう質問についてお答えいただきました。

Q.同性パートナーと同一世帯として生活保護を受給できる?

世帯の認定2

生活保護の受給は、世帯単位で認定します。
つまり、その住居に何歳の方が何人で生活しているかが重要となります。
その為、個人のセクシュアリティや関係性は、受給要件に記載されていません。


Q.同性パートナーとは伝えず、同居人と伝えても問題ない?

聞き取り2

生活保護を受給すると、担当のケースワーカーが決まります。
担当ケースワーカーは、受給された方の自宅を訪問し、生活の様子などを聞き取りし、状況に応じて就労支援も行います。生活保護の開始当初は、これまでの生活歴や生い立ち、今後どのように生活していきたいのか、など詳しい情報を聞き取ることで、受給された方の支援方針を考えます。
その際、ケースワーカーの認識がパートナーではなく同居人となっている場合、認識のズレによる意見の相違や誤解が生じる可能性があるかも知れません。

Q.生活保護を受けながら性別移行はできますか?性別移行にかかる医療費は生活保護費から支給されますか?

保護費支給2

生活保護法に性別移行をしてはならないという記載はありません。
性別移行について生活保護法では特に触れられていません。
ただし、性別移行に伴う医療費等については支給できるものとできないものがあります。
生活保護を受給された方は医療費の全額を公費で負担されます。そのことを医療扶助といいます。
この医療扶助の対象は、生活保護法の中で保険適用範囲のみとの原則が定められています。
医療扶助とは・・・生活保護法第15条
医療費の全額を公費で負担します。
ただし、他の法令等による給付がある場合にはその給付を優先します。
なお、保険外併用療養費に係るものは原則として適用されません。


Q.SRS(性別適合手術)などのために貯金をしてもいいの?

最低生活費2

生活保護受給中でも貯金をすることは問題ありません。
ただし、最低生活費の6ヶ月分までの金額が限度とされています。
SRSは高額であるため、この金額では足りない場合もあるかと思います。
貯金が上限を超えるとどのような対応が行われるのでしょうか。
まず、担当ケースワーカーが確認するのは”どうして預貯金が発生しているのか?”です。
最低限の生活を送るための費用しか出ていないにも関わらず預貯金が高額になっているということは、申告をしていない収入があるのではないか?食費を削っており健康を損なう生活を送っているのではないか?等聞き取りが行われます。
貯金をする目的がある場合は、限度額を超える貯金でも保有を容認してもらえることがあります。
そのため、事前に担当ケースワーカーに貯金の目的などを相談し、相互理解を得てからの方が心理的不安は少ないと考えられます。

Q.セクシュアリティのことなど勝手に言いふらされたりしない?

守秘義務情報共有2

公務員には公務員法の中で守秘義務が課されています。セクシュアリティ等問わず全ての情報の取り扱いは、慎重かつ厳重に管理し、共有する際には本人の同意を得た上で共有しています。
精神保健福祉士などの福祉専門職の責務には人権の尊重、権利の擁護が課されています。
福祉業界の中では、情報共有が当たり前化していると思います。本人の支援を考える際、組織内や外部機関との情報共有は重要となりますが、そのとき、この情報は本人の許可を得ているのかを慎重に判断しなくてはいけません。福祉職が本人のために良かれと思った行動が、実は本人にとって不利益となってしまう可能性を考える必要もあると思います。
LGBT当事者が自身のセクシュアリティについて語ることは、容易なことではありません。福祉職の方は簡単なこと、気軽に話せることと捉えるのではなく、語ってくれた想いを受け止めることが求められると思います。

今回ReBitでは初のオンラインイベントにて、LGBT×福祉をテーマに開催いたしました。
50名を超える申し込みをいただき、多くの方が関心を寄せるテーマなのだと、改めて実感しております。
今後もReBitでは、 LGBT×福祉をテーマにさまざまなイベントを企画してまいります。
今回のイベント開催にあたり、参加者の皆様を始め、登壇者の摩巳さん・悠佳さん、手話通訳者、要約筆記者、皆様に支えていただき開催をすることができました。
この場を借りてお礼申し上げます。


またReBitでは、2021年7月に就労移行支援事業所を立ち上げます。

就労移行支援事業所

LGBTを含めた複合的マイノリティの方が利用できるダイバーシティフレンドリーな事業所です。事業所についての情報は、団体HPやTwitterなどでお知らせしていきます。

利用を検討されたい方、詳細を知りたい方は dcs★rebitlgbt.org(「★」を「@」に変更してください)までご連絡ください。

皆様にお伝えできる日を楽しみにしております。

今後ともReBitをどうぞよろしくお願いいたします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?