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水が生まれるところを見た。     内藤礼「母型」豊島美術館

水が生まれるところを見た。
水が生まれ、湧き出て泉になり、また消えてゆく。
私は地べたに顔をつけ、それをずっと眺めていた。

生まれては消え、また生まれる。
風が吹いて、虫の声が聞こえる。木々も揺れているようだ。

外を感じながら、中にいる。
なんだか母の胎内にいるような、大きなものに守られているような安心感。
床がひんやりと心地よい。

ふと顔を上げると、同じように床に寝ころび眺める外国の家族連れと目が合い、笑顔を交わす。
今、皆で母型を味わっている。

初めて訪れたのに、ずっと前から知っていたような懐かしい感覚。
私はきっとまた、ここに来るだろう、そんな気がして、
母型でやわらかくなった心で、ふわふわとのんびり島を味わった。

草木が芽吹くとき、桜の季節、新緑の頃、秋の紅葉、雪の降る日、
季節を変えて、また訪れよう。そう思った。

内藤礼 「母型」
豊島美術館 朝の特別鑑賞プログラム
西沢立衛