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【SSW10:WORKS】フォークを軸に、泥臭い、人間味のある歌を歌っていく

関東を中心に活動しているギター弾き語りシンガーソングライター、nari(ナリ)。フォークというジャンルへのこだわりと楽曲作りへの思いとは。

フォークへのこだわりと、幅を広げるための努力

学生時代からのあだ名を、そのままアーティスト名として使っているnari。音楽を深く知るきっかけになったのは、ゆずとの出逢いだ。

「ゆずの『フォークデュオ』って肩書を見て、『フォークって何だろう?』と疑問に思ったんです。掘り下げていった結果、ゆずだけでなく、中島みゆきさんやさだまさしさんも好きになりました。他にも長渕剛さん、尾崎豊さんなど、人間臭い歌を歌っているアーティストをリスペクトしています」。

SNSでの『フォーク系シンガーソングライター』という自己紹介からも、フォークというジャンルへのこだわりがうかがえる。

しかし最近は、他のジャンルの楽曲のカバーにも取り組んでいる。オリジナル曲の作り方に行き詰ってしまったのが理由だ。

「似たような曲ばかり作っている気がしちゃって。打開するために、ラテンのリズムを取り入れたり、『いつもの』枠を外そうと頑張っています。他にも、自分の声のイメージと、オリジナル曲の歌詞がマッチしていないと感じることもあって。ちょっと浮いた状態になっている曲もあるので、どのように折り合いをつけていくか、課題は多いです」。

さいたま市南浦和のライブカフェ・宮内家での毎月恒例のライブでは、必ず、カバー曲を披露することにしている。

「『次のライブで歌うぞ!』と決めて、自分にプレッシャーをかけています」。これまでに一青窈の『ハナミズキ』、小野香代子の『さよならの言葉』、ビリー・ジョエルの『Honesty』、中島みゆきの『時代』などに挑戦してきた。

「今後の自分の楽曲に生かせそうなコード進行や、リズムや、歌い方が入っている曲をチョイスしています。幅を広げていきたいです」。

いつか、オリジナル曲の数とバリエーションを増やした暁には、ワンマンライブをやりたいと語る。「一時間半くらいのライブで、5部構成にして、それぞれに色をつけたいです。一本の映画を見ているような感覚になれるライブがしてみたいですね」。

まだまだ進化するnariの行く末に期待したい。

代表曲『横浜』と、ミュージックビデオ制作について

nariの曲作りは、歌詞を書くことから始まる。「鼻歌でメロディをつけて、スマートフォンのアプリやギターを使いながら編曲しています」。

これまでに作ってきた楽曲は20曲前後。代表作は『横浜』だ。

「横浜は、母と父が若いころに住んでいた街なんです。私は物心つく前に引っ越しましたが、中学生くらいまで、しばしば足を運んでいました。ずっと眺めてきた横浜の街並みは、心の原風景になっています」と、愛着を語る。

「母親と仲が悪くなって、『出ていけ』と言われてしまったときも、一人暮らしをする場所として選んだのは横浜でした」。

実際に一人暮らしを始めてみると、親のありがたみに気づいたと言う。

「『きっと母親もこうやって生きてきたんだな』と感じたりしたことを歌にしました。『きれいな歌詞だね』と感想をもらうことが多いんですが、実際は、かなりドロドロした感情をぶつけた曲です」。

2019年に1st CDを制作し、20年にはスキルマーケット・ココナラを通じてイラストレーターを探し、ミュージックビデオをも制作した。

「はるうららさんという、ほんわかした絵を描いてくださる人に依頼しました。たくさんのご縁のおかげで、2年越しに夢をかなえることができてよかったです」。ミュージックビデオをきっかけに、ライブへ来てくれるようになったファンもいるという。

次回作の予定はないのだろうか?

「実は、祖父に『横浜』のMVを見せたら、すごく感動してくれて、『ぜひおばあちゃんの曲もやってくれ』と言ってくれたんです。『新月の夜に』という曲なんですが、もしかしたら、次はそのミュージックビデオを作るかもしれません」という答えが返ってきた。

「祖母は、私がいよいよ音楽活動を本格化させようとしていたころに、突然の事故で亡くなりました。自分が音楽を始めたことすら伝えていなかったので、残念で…。そういう思いを込めて作った曲です」。

nariは、祖母との思い出を懐かしみながら語ってくれた。

「祖母は福岡に住んでいました。生前は認知症で苦しんでいて、私のことが分からなくなっていました。会いに行ったら、別人と勘違いされて『悪魔がやってきた』と罵られたこともあります。私も辛くなって、だんだんと遠ざけるようになっていましたが、亡くなったと聞いた時は、後悔しました」。

その思いは、楽曲の構成に反映されている。

「歌詞をよく聞いていただくと、一番は『ごめんね』ばかり、二番は『ありがとう』ばかり歌っているのが分かると思います。『訃報をきいたときは申し訳なさでいっぱいだったけれど、よく考えてみれば、感謝の言葉を送るべきだと気づいた』という曲です」。

様々なことを経験してきた彼女の人生から紡がれる楽曲群には、唯一無二の個性と深みがある。次はどんな作品を届けてくれるのか、楽しみだ。

text:momiji

INFORMATION

代表曲『横浜』をはじめとしたオリジナル曲を収録。音楽活動を本格化させていくにあたって制作した1st mini mini Album。2019年7月12日リリース。全3曲、¥500 (税込)。
2021年春、2ndCD発売決定! 乞うご期待!!

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