見出し画像

r-906さんの魅力について語る

こんにちは。佐々木といいます。今回は先進的なキラーチューンを生み出し続けるボカロP、r-906さんの魅力を曲の紹介を通して語っていこうと思います。



1.r-906ってどんなボカロP?

2018年の初投稿曲、『夢遊病ダンサー』を始めとしてドラムンベースをメインとした楽曲を制作。
代表作は『パノプティコン』『三日月ステップ』『まにまに』など。

ボカロとの出会いは中学時代、カラオケで同級生がボカロを歌っていた時と、高校時代、『人生リセットボタン』を聴いた時の2回。

当時一番好きだったボカロPは日向電工。

好きなバンドはサカナクションでr-906さんのクラブミュージック的要素の源流はサカナクションか
来ている。

初投稿曲『夢遊病ダンサー』から9作目の「夜が引いていく」までiPhoneとGarageBandと Mobile VOCALOID Editorだけで作っており、代表曲パノプティコンも例外では無い。

続いてr-906さんの楽曲紹介を通しながら魅力について語っていこうと思います。

1.パノプティコン


パノプティコンはr-906さんを語る上で欠かせません。当時のr-906さんは再生数に伸び悩んでおり、
次作で振るわなかったらもうやめちゃおうという思いで「パノプティコン」を投稿。
パノプティコンが注目を浴びた要因について次のように語っています。

もう最後だし、好き勝手やってやろうとタガが外れたといいますか…自分が一番かっこいいと思うもの、自分が一番びっくりするものを作ってやろうと。とにかく自由に好きなことをやった曲ではあります。もしかしたらそういう想いがリスナーに届いてたのかもしれませんね。吹っ切れて思いの丈を叫んだ方が、熱意は伝わるんだな、という経験になりました。

ボカロPとVOCALOID r-906さん編 ~VOCALOID に近づきたくてスマホだけでボカロPに~

この曲の魅力はなんと言っても曲の長さに対する歌詞の少なさでしょう。このボカロ通念を覆すような曲の構成は視聴者を驚かせました。洗練された少ない一音一音が美しさ際立たせています。r-906さんのコメントからわかる通り、自身の思う美学を貫いた一曲となっていますね。

パノプティコンはベンサムによって唱えられた集中型の監獄(刑務所)の形式を表す語のことです。
パノプティコンという言葉についてr-906さんは

ある日耳にしたパノプティコンという言葉を調べて「ピッタリやんけ!」となったのでそのまま曲名にしました。調べるまではお菓子の名前かと思っていました。プティングの亜種的な。

初音ミクwikiより引用   、本来の引用元は不明

と冗談めかしたコメントを残しています。
私の当初のr-906さんに対するイメージは曲調的にミステリアスなボカロPというイメージを描いていましたが、今では人間味があってユーモアのあるという印象ですね。
この曲を嚆矢としてr-906さんの快進撃は始まっていきます。

2.モノクロセンス&モノクロセンス2021


パノプティコンというターニングポイントの後の曲について語りたいのは山々ですがこの曲だけは紹介させて欲しいです。
モノクロセンスはメカクシニアンと同時に投稿されたものであり、MVに出てくる女の子は姉妹にあたります。
そしてこの曲、ベースがカッコよすぎる。
r-906さんの楽曲の楽曲ほとんどで言えることだがベースがカッコよすぎる。というのが私の感想です。
このモノクロセンスという曲のベースにおいては電子音っぽさがあり、それがクセになる。
後半の転調も盛り上がり曲は緞帳を降ろす。
個人的に『断ち切れぬ連鎖 振り切れぬ怨嗟』という歌詞が好きです。
そしてモノクロセンス、メカクシニアンともに2021年バージョンが投稿されています。
オリジナルと比べて曲の臨場感が増したように感じます。特にモノクロセンスにおいては重低音が尚良くなったかなという感じがしますね。
そしてMVで目を隠していた2人が目を晒しています。かわいらしいキャラクターデザインです。さすがr-906さん。
個人的にモノクロセンスの方が好きということで紹介しましたがメカクシニアンも良い曲なので是非聴いていただきたいです。

3.三日月ステップ&三日月ステップ2023



続いては代表曲の2つ目、三日月ステップです。
三日月ステップは私が今まで聴いてきたボカロの中で一番静か且つボルテージが上がる曲だと思います。この曲には切ない歌詞、静かな音楽とグルーヴ感のあるダンスミュージックの二面性を秘めているように感じます。
私も夜道、一人で聴いているとつい踊り出したくなってしまいます(笑)
2023年にはアルバム『Lunar Calendar』収録に伴い、三日月ステップ2023が投稿されました。
今までオリジナルの三日月ステップを聴いていた人からすればかなり衝撃的なMVだったでしょう。
二人の少女が描かれた幻想的なMVでしたね。
このMVで曲に対する解釈の幅が広がったと思います。
少女同士の顔が接近するシーンではニコニコにて
r^〜906と言われていて笑ってしまいました。

コメント付きの三日月ステップ2023

ニコニコが8月5日に再開するみたいなのでまた此処で聴きたいですね。


4.ノウナイディスコ

続いてはノウナイディスコです。
はい。もうr-906ワールド全開ですよ。
何だこのイントロは。デモソングの域を超えている。1度聴いたら忘れられないです。イントロのこのフレーズはサビでも終始流れ続けていて鬼リピしていた私は何も流れていなくても時々聴こえてきます。
https://twitter.com/arukuremu/status/1491335753821224962?s=46&t=-B5A4kpobF-jL9uWFpk8Ig

さらに衝撃的だったのはこのイントロがほとんどGarageBandで作られていたこと。圧巻です。
そしてこのMVですね。
MVに対する感想を的確に表現している方がYouTubeのコメント欄にいらっしゃいましたので引用させていただきます。


ありもしない「こどものころ、おでこに冷えピタはってダウンしながら午前9時ごろ教育テレビから軽めのサイケデリックぼんやり流れてきて不安だけど心地好くなってる」ノスタルジー感じるの凄すぎるんだよな

YouTubeコメント欄より引用

マジでこれに限ります。私がモヤモヤして言語化出来なかった全てを表現しきっていると思いますね。
セピアっぽいフィルターが昔見ていたあの番組っぽさを表現しているのも凄いと思いますね。そして何となく不安感を煽られるイントロとMV。
この曲はr-906さんの曲の中でも一二を争うレベルで好きですね。


5.まにまに

5曲目はまにまにです。
とにかく聴いて欲しい一曲。
2分近い間奏という現代の短い傾向にあるボカロ曲とは真反対を行くこの一曲でボカコレ2022春一位を獲得しました。
しかしこの間奏が良い、鼓膜に響き渡るベースのスラップ。二分間聴いていても飽きることはありません。初音ミクの高音に文学的な歌詞、全てが完成し尽くされています。
この曲の歌詞には百人一首の句が引用されています。個人的に『幾夜寝覚めぬ論理症 神のまにまに』という歌詞は相当印象に残っていますね。
さすがボカコレ一位楽曲と言ったところです。
素晴らしいです。


6.Hello World!

6曲目はHello World!ですね。
ボーカルは狐子でかっこよさを前面に押し出した曲というイメージがあります。
歌詞は少なく『今此処で』というフレーズを反復していますね。恐らくボーカルの狐子と此処を掛けています。
この曲の魅力はなんといっても鼓膜に響き渡るドラムンベース。一定間隔に鳴るドラムがテンションをぶち上げてきます。
DJで流したらマジで盛り上がりそうですね。
始めは静かで段々盛り上がっていく曲なので盛り上がりの部分がさらに強調されています。
サムネイルの狐子のイラストも好きです。
近未来感がありますよね。元々狐子のデザインもメカメカしさがあるので背景と合っています。
当の私も家に誰も居ない時はスピーカーで流して一人盛り上がっています(笑)
テンション上げたい時に是非聴いて欲しい一曲です。

7.Catchy!?


7曲目はCatchy!?ですね。ボーカルはCi Flowerです。この曲の魅力といわれて真っ先に思いつくのが終始鳴り止まぬスラップベースですね。
脳漿炸裂ガール以来の衝撃でした。
r-906さんのカッコイイスラップベースはまにまに、怪電話など他にも例はありますがCatchy!?はハイテンポ且つ徹頭徹尾までベースの音が鳴り響いています。マジでカッコイイです(この辺りで語彙が無くなってきてます。)
この曲、4月に投稿された『あなたしか見えないの』と繋がっており、駅のホームが舞台になっています。
ニコニコ超会議2024では小説として販売されました。私も現地まで赴き購入してサインまで頂きました。
小説もしっかりと最後まで読みましたが青春SFっぽい内容で本当に面白かったです。小説を読んでから曲を改めて聴くと「ここってこういう意味だったのか」と新しい発見が出来て面白いです。
r-906さんのBOOTHから購入も出来ます。

正直、先入観関係なしに私の読んだ小説の中で1番面白かったです。r-906ファンには是非読んで欲しい一作です。


8.怪電話

8曲目は怪電話です。
ただただ夢ノ結唱ROSEの声に圧倒されましたね。
力強い歌声が似合う音声合成としてゲキヤクのイメージがありましたがこれも良い。
切ない歌詞にROSEのボーカルが刺さりますね。
『さあ針を飲め』の高音ボーカルに惚れ惚れとしてしまいます。
『三ト二ト百五十一』を掛け合わせると906になる言葉遊びも面白い。
構成はまにまにと似ていてベースがメインでサビでボーカルが爆発するといった感じですね。
MVもオシャレ。安定のr-906節です。
これをはじめとして夢ノ結唱楽曲が増えて欲しいです。

9.ボイドロイド


9曲目はボイドロイドです。
この曲は同じ羽累ボーカル曲、Parasiteと同時に投稿されました。r-906楽曲史上初のアニメーションMVですね。かなりインパクトのあるMVで恐らくr-906さん本人のトレースで作られたMVだと思うのですがノリノリで踊っていますね。
イントロから素晴らしい。
早口のラップ調で流れる音楽は音楽的同位体羽累を際立たせています。歌声はさながら中の人の春猿火本人のようでした。
特に『詞が無かったら届かない 詞があっても届かない』という歌詞が好きで歌い方も好きですね。
この曲については歌詞がかなり面白かったので少しだけ考察してみようと思います。

僕が歌ったのは赤い孔雀
彼が思ったのは青い鴉
羽ばたく鳥は電話線へ
霞むimage
君には詞がreal

これはクオリアの私秘性と言語の不自由性を歌ったものでは無いでしょうか。私たちは今、見て感じているものが他人にはどう映ってどう感じているのか理解することは出来ない。私たちの目の前のものは全てが同じように写っているとは限らない。
例えばリンゴを想像してみてほしい。リンゴは赤くて丸いものだというのが一般通念である。
しかし他人にはリンゴがどう見えているかは私には分からない。私における赤が他人における青なのかもしれない。私における丸が他人における四角なのかもしれない。それがクオリアであり、それは他者から観測できない個人的なものであるというのが私秘性である。
『私が歌ったのは赤い孔雀だったのに彼が思ったのは青い鴉』というのはそういうことだろう。
私たちは直接意識(クオリア)は共有出来ず、見たもの、感じたものを伝える手段は言語に限られている。その言語の不透明さを『電話線』として暗喩していると考えられる。
そして相手に届く頃にはimageは霞み、詞だけが君にとってのrealとなるのである。

振り解けない
義務と化した自由

というところで義務と化した自由というのは言語そのものなのではないか、というのが私の考えである。自由として与えられた言語そのものは思考を縛り付け、浮かんだ感情に当てはまる言語がなければそれはそもそも存在しなかったものと同義である。
しかし言語を捨てることは出来ない。振り解くことが出来ない。

詞が無かったら届かない
詞があっても届かない

というのはそのままの意味だろう。言葉がなければ伝達手段は存在せず伝えることは出来ない。
言葉があっても私の発した言葉と彼が受け取るまでの間に様々な推測が捩じ込まれている。それは既に私が歌った詞ではなくなっているのかもしれない。

ということで少しだけ歌詞を考察してみました。
まだまだ謎が残るばかりの歌詞で『彼』が結局誰なのか分からなかったり、『僕が歌ったのは曇硝子 彼が思ったのは今朝のblack 飛び立つ鳥と伝播せぬX』という歌詞もイマイチ理解できなかったですね。
まだまだ考察しがいのありそうな曲でした。

という訳でr-906さんの魅力を語らせて頂きました。
r-906さんは真似しようとしても絶対にできない唯一無二のボカロPだと思います。
映画の楽曲に携わったり、ニコニコ超会議イベントの超音楽祭、超ボカニコでDJをやったり、進出が止まりませんね。
8月24日にはNIGHT HIKEという有名ボカロPの集まるDJイベントの参加を控えていますので興味を持った方は是非参加してみてくださいね。
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?