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子育てマイルール|子どもから″泣く″ことを奪わない

もうすぐ3歳になる息子の話。

昨日、保育園に息子を迎えに行くと、珍しく先生に呼び止められた。

先生は息子に聞こえないよう小声で

「運動会の練習がプレッシャーになってるかもしれない。勝ち負けを理解して、緊張するようになってるし。」

と教えてくれた。
かけっこを嫌がったり、大好きなダンスも人前では踊らなくなってしまったのだと言う。


言われてみれば、私が日常の中で″競争″を取り入れてしまっていた。

どっちが早く片付けられるかな?
どっちが早くお風呂場までいけるかな?
どっちが大きな声で先生に挨拶できるかな?

どれも、私が負けることを前提とした遊びだった。

私の手によって、彼は知らず知らずのうちに、勝つ喜びだけを積み重ねていってしまったのかもしれない。

そして、保育園で初めて″負け″を経験したのだろう。


そんな息子は昨晩、保育園から帰ってくるや否や あれも嫌、これも嫌とずっと泣き叫んでいた。

大好きなプリンもアンパンマンも、今日ばかりは何の役にも立ってくれない。
いつも聞き分けが良く、切り替えの早い息子にとって、本当に珍しいことだった。


私はすぐに家族みんな(二世帯のため夫と、じじばば)に、保育園の先生からの話と、次のことを伝えた。

この子はこの子なりに、外の世界でうんと頑張って、初めての感情と葛藤しながら、1日をやり遂げた。
きっとたくさん我慢してきたから、家では思う存分泣かせてあげよう。

これを聞き、家族みんなが彼の涙を受け止める体勢に入った。
息子が私をひとりじめできるよう、一歳の娘は他の家族があやす。
正直泣き声は耳につくが、誰も彼を泣き止ませようとはせず、「大変だったね」「いろいろあるよね」「嫌だよね」と、ひたすら気持ちの代弁を試みた。

みんなわかってるよ、あなたの味方だよ、大丈夫だよ。
言葉での理解が難しくても、このやわらかな空気だけは伝わると信じて。

しばらくして、嫌だスイッチが入らないか注意しつつ、恐る恐る

「今日は満月だよ。お外におつきさま見に行ってみる?」

と聞いてみた。

やっと、嫌と言わなかった。


外の空気を吸うと気持ちが落ち着くのは子どもも同じなのか、涼しくなってきた夜のお散歩で、気持ちが和らいだようだ。


それからはもう、泣くことはなかった。


勝ちたかった
悔しかった
悲しかった
恥ずかしかった
もっと上手にできた
うまくできないかも
褒めてもらえなかったらどうしよう


息子の中に湧き上がるいろんな気持ちを、息子自身はまだ理解できないし、もちろん言語化も難しい。
明るくない感情に加えて、その感情が一体どういうものかわからないストレスまであるのだからダブルパンチだ。


私なら誰かに話を聞いてもらうことができるし、ちょっと良いスイーツを食べて気分転換したりもできる。
つまり、こういった気持ちに対する対処法を知っている。

でも、息子はまだ、ほとんど何も知らない。

そんな息子にとって、″泣く″ことは唯一の感情を発散する手段なのである。


だから私は、それを奪うことだけはしないと決めている。
もちろん、思わず「泣くな!」と言いたくなることもあるけれど、それすら奪われたら、彼はもう、どうすることもできないから。



子どもは小さな世界の中で、その小さな体と心で、いっぱい頑張って我慢しているんだもの。
疲れたり、ぐちゃぐちゃな感情を発散したくなる時もあるよね。



我が家という居場所が、それを安心して発散できる場であり続けたい。
そう思った夜だった。

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