44歳、初めての転職 ~前編~

「なんで転職したんですか?」とよく聞かれる。まあ、20年も同じ会社に勤めていたのだから、疑問があるのは当然か。

転職いたる動機はひとそれぞれだ。給料を上げたいとか、仕事内容が不満だとか、人間関係が嫌だとか。よくある理由以外にもパーソナルな事情がある人もいる。結局大きい決断をするわけで、原因が一つというわけでもない。

なので、転職の理由を問われると返答に困る部分も多少あるのだが、僕の場合は、こう答えることにしている。

「スーパーマンになりたかったからです。」

そういう考え方が、自分としても腹落ちするのだ。

40歳になったら、俺、なにやってるんだろう?

セガに入ってしばらくして思ったことがこれである。1999年にセガに入社したわけだが、そのころ、40歳の開発者はほぼいなかった。なんでかな、と思ったのだが、今思うと業界がまだ壮年期だったから、というのがまだ大きな理由だったのだろう。なにしろ、ファミコンがこの世に出てからまだ15年程度しかたっていなかったのだから、現場に年寄りがいる方がまれであろう。

ただ、当時の僕は「40歳になったら引退しているのかな」と思っていた。当時はまだ「ゲームは若者がするもの」というイメージが強かった。若い人向けに作らなくてはならない以上、40歳ぐらいになると、そういう感覚も衰えていて、現場を離れるものなのだろうか、と漫然と考えていたのである。

結果、40歳になった時に何をしているかというと、やっぱりゲームを作っていた。結構シンプルな話で、ユーザーのほうが40歳になってもゲームをやっている時代になったのだ。なので、自分の感覚をまだ信じてもまだ仕事はできる。20代の開発者にはD2は作れないだろう。

ここまで来たら、ずっとゲームを作っていたいと思っているのだが、若い人との感覚のズレというのはこれからもどんどん出てくる。アイドルには興味はないし、FPSもバトロワ系も正直苦手だ。

なので、自分をアップデートし続けないと現役ではいられない。感覚面では若い人にはかなわないだろうが、それでも引き出しを増やすことで、彼らが持っていない武器を持つことができるだろう。

こう強く思うようになったのは、間違いなくスマホゲームを作るようになったからだ。移り変わりが早く、ターゲットユーザーが幅広かったモバイルゲームの市場の戦いはなかなか壮絶だった。そこで感じたことは「変わる時代に合わせて成長し続けないと、取り残されてしまう」ということだ。

つまり、自分は成長したいのだ。現場に立ち続けるためには、もっと成長しないといけない。転職を決める前から、自分の中ではそういう気持ちが非常に高まっていた。

ゲームプランナーはスーパーマンじゃなきゃダメなんだよ。

これは、入社したころ、先輩のプログラマに言われた言葉だ。なかなか尖った先輩だったので若手に圧力をかけるためにそういったのだと思われるが、なかなかどうして真理を突いている。セガにおいてのゲームプランナー(※この呼称ははっきりいて排除すべきだと思っているのだが、通りがいいのでそのまま使う)は将来的にゼネラリストである必要があるからだ。

自分のセガでの略歴は、ざっと以下のような感じである。

「10年ほど、ゲーム開発の現場でプランナーの仕事をしながら『サカつく6』で初プロデューサーを務める。その後Free to Playのタイトルを8本担当し、同時にゲームプランナーの組織を編成し、新卒採用まで担当」

こんな感じであろうか。主要の担当タイトルを並べてみる。

ハンドレッドソード (リアルタイムストラテジー)
パンツァードラグーンオルタ (3Dシューティング)
サカつく3 (シミュレーション)
World Football Climax (アクション)
サカつくEuro (シミュレーション)
※サカつく6 (シミュレーション)
龍が如くOF THE END (アクションアドベンチャー)
※サカつく7 (シミュレーション)
※サムライ&ドラゴンズ (MMOストラテジー)
デーモントライヴ (MOBA)
※チェンクロV (ディフェンス系)
※スパロボX-Ω (ディフェンス系)
※D×2メガテン (RPG)
※サカつくRTW (シミュレーション)
※龍が如くオンライン (GvGカードバトル)

(※はプロデューサー。)

お手伝い程度のやつは除いていてこれだ。はっきり言って、こんなにたくさんやってる奴は滅多にいない。特に続編が少なく、多種多様なジャンルを経験しており、1から作るというタイトルが多いことについては、僕より経験値が多い人間を探す方が難しいだろう。

また、プロデューサーとしては、「失敗がない」ことがあげられる。当てに言った企画が多いせいもあるが、立ち上げタイトルで赤字タイトルがないというのは、まずまず自慢していいポイントかもしれない。

言い換えると、自分の現在のスペックはこうである。

「上流から下流まで開発経験があり、スマホゲーム運営の経験が豊富で、複数の成功を収めており、自ら企画立案することが出来、50人以上の部署をマネージメントした経験があるゲームプロデューサー/ゲームデザイナー。」

ゼネラリストとしては中々だ。一つのジャンルならば自分よりすごい人はいくらでもいるだろうが、トータル的に見て「何でもできます」という点では早々同じ人材はいないのではなかろうか。そういう自負はある。

先輩、僕もスーパーマンに近づきました!と胸を張ってもいいぐらいにはなったのと思うのだが、満足してはそこで成長が止まってしまう。

では、さらに自分を磨くために必要なことは何だろうか。

「インターナショナルなゲームを作る」
「ホームランを打つ」

自分としては、この二つの経験を自分の経歴に加えたい。D×2とサカつくRTWをこの世の中に出した後は、そう考えるようになったのだ。

長くなってきたので後編へつづく!

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