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07.若いうちに高い買物した方がいい理由

 僕が、この人素敵だなあ、かっこいいなあ、って思う人に共通しているのはただ一つで、それはファッションでも容姿でもなければ、話し方や性格でもない。それはズバリ【美意識】の有無

 これは、世間で一流と言われる人すべてが持ちあわせているものでもなくて、意外にも旅の途中にふと出会ったおじさんが急に小脇に【美意識】携えてたりするから、出会い頭に卒倒しそうになったりもする。まあ、それこそが旅の醍醐味なんだけど。

 数年前、富山県のとあるお寿司屋さんに入ったとき、あまりに美味しいお寿司を前に、店主と話がはずみ、興味のままにお名前を伺ってみたら、男性なのに名前が泉美(いずみ)さんで驚いたことがある。珍しいお名前ですねと言うと、本名は泉だけれど、理(ことわり)を料(はか)る芸人として自分の美学を提供したいから【美】をつけた、と言われた。

 物を買ってもらうためにはその物の背景にある物語を伝えることがとても大切、なんてことをよく聞くけれど、そこに少し違和感を感じていた僕は、泉美さんの一言で、その違和感がなんなのかがわかった気がした。

 そうだ。僕はその物の背景にある物語に感動して物を買ってるわけじゃない。それを作る人の美意識にお金を払っているんだと。

 民藝運動にも深く関わった陶芸家の河井寛次郎の詩集「いのちの窓」(東方出版)に、僕がとても大好きな一編がある。

 物買つて來る 自分買つて來る

 この詩について河井寛次郎は自らこう解説している。
「若しか自分以外のものを買つて來た人があつたなら、自分は其の人を見たい。人はいふであらう。嫌だつたけれど仕方がなかつたから買つたのだ。こんなものは自分のものでも何でもないのだと。然し其の人は仕方がないといふ自分以外の何を買つて來たのであらう。」

 何を買うか、そこにその人の美意識があらわれる。だからこそ若い人も、少しくらい高かろうと良いものにお金を使えばいいと思う。よい買物は自分自身の美意識を作る早道

 そもそも高いけれども買いたいものに出会うこと自体、幸福なこと。そこに君が美意識を感じるのなら、ちょっと背伸びしてでも買うといい。


 

まずはこれ買うといいよ →「魔法をかける編集」


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