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わからないものをわからないままに。

毎年欠かすことのなかった元旦の初詣。今年は人混みを避けようと、まだ行っていない。それにいつもなら今頃は実家でのんびりテレビでもみている時間だけれど、今年は「集まるのやめておこう」と親父の方から連絡がきて、代わりにzoomを繋いだ。

これらすべてが、いまはイレギュラーな気がするけれど、きっとこれはあたらしいスタンダードのはじまりだ。

僕たちの生活様式を一変させたのは、示唆に富む一冊の書籍でもなければ、大きく心揺り動かす一本の映画でも、画期的な商品でもなかった。人間以外のよくわからないものがみるみるうちに暮らしを変化させるさまに、僕は畏れとともに、ある種の清々しさをも感じている。

この、よくわからないものとの共生はもちろん今年も続くだろう。だからいまとても大切なことは「わからない」ものを「わからない」ままに受け入れることだ。人間のチカラを過信して答えを急がず、ウイルスに人類が勝ったとか負けたとか、そんな不毛な議論を尻目に、一つ一つ自分たちの暮らしをチェンジして対応していくこと。そういった変化への前向さこそが、心休まる生活の第一歩だと思う。

僕が日々勤しんでいる「編集」という仕事も、常に「わからなさ」を内包している。編集の良しあしは「取材」と「ディレクション」で決まるけれど、この二つの間にあるとても大事な感情が「わからない」だ。そもそも「わからない」から取材をする。しかし取材したからと言って「わかる」わけではない。ある一つの側面を見たり、視野を広げたりすることで、自らの考えを整理することはできても、何かの「正解」を得ることはない。だから編集者はいつも「わからない」を抱えた状態のまま、「えいや!」とディレクションする。

それは「わからない」をそのまま受け入れるということ。手前でわかった気にならず、「わからない」ながらも進んでいくこと。「わからない」ものは、いつか「わかる」までずっと「わからない」まま生きていけばいいのだ。

今年、僕は47歳になるけれど、人生で始めてスケボーをはじめてみた。

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わからないものをわからないままに。

藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』リトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『アルバムのチカラ』(共著:浅田政志)赤々舎。その他、『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など、手掛けた書籍多数。

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